問題講評【倫理、政治・経済】
― 正確な知識と資料読解を組み合わせて考察力を問う問題が増加。昨年より難化 ―
すべての設問が単独科目「倫理」および「政治・経済」と共通であった。倫理分野では、資料の読み取りと知識の組合せが問われ、政治・経済分野でも、文章資料や統計、模式図など多様な資料を読み取り、正確な知識を活用して考察する力が求められた。昨年より難化。
1.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数7で変更なし。解答数は32個で、「倫理」16個、「政治・経済」16個で変更なし。また、昨年同様、「倫理、政治・経済」の独自の設問はなかった。 |
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【出題形式】 | 昨年と比べ、問題ページ数が2ページ増加し、39ページになった。「倫理」及び「政治・経済」の両分野ともに、1行の文章選択問題の出題がみられず、3行以上の文章選択問題が4問増加し、6問出題された。政治・経済分野では7択以上の問題が2問増加し、6問出題された。 |
【出題分野】 | 「倫理」と「政治・経済」の各分野からバランスよく出題された。 |
【問題量】 | 「倫理」「政治・経済」ともに昨年並。 |
【難易】 | 昨年より難化。 |
2.大問別分析
第1問「正義と人間の本性」 (12点・標準)
「倫理」源流思想分野からの出題。基本的な内容が中心であった。問4は二つの原典資料とそれを読んだ生徒のメモを読み取る力が求められた。
第2問「『問い』を立てること」 (12点・標準)
「倫理」日本思想分野からの出題。問2の『古事記』のスサノヲの言行を知っていないと判断しにくいであろう。問3は伊藤仁斎の「仁」の主張の「人倫日用の道」を理解して日常生活にあてはめることが求められた。
第3問「自由とは何か」 (12点・標準)
「倫理」源流思想・西洋思想分野からの出題。問1は、源流思想で扱われるトマス=アクィナスが正答に含まれていた。問4は、レポートと会話文から規範と法について読解することが求められた。
第4問「格差を是正するのは個人か社会か」 (14点・標準)
「倫理」青年期・現代の諸課題からの出題。格差についてセンやロールズが問われた。問4は、4つの空欄補充の問題で、対話の流れの変化をリード文を含めて読み取る必要があった。
第5問「地域社会と経済の諸問題」 (19点・やや難)
「政治・経済」経済分野中心の出題。日本の経済的な諸問題が問われた。問5は新規国債の日銀引き受けの禁止や、金融緩和政策の買いオペによって日銀の国債保有高が増加していることをグラフから読み取ることが求められた。問6は、国内総生産の支出項目のなかでは民間消費支出が最大であることの知識とメモの二つの項目の増加額から増加率を推測する必要があった。
第6問「『戦争と平和』と『日本の議会制民主主義』」 (19点・標準)
「政治・経済」政治・国際政治分野からの出題。模擬授業の場面で、考察する力を問う問題が目立った。問4は委任と責任の連鎖の図を用いて責任の連鎖の図を具体例で考察することが求められた。問6は二つの最高裁判例の読解力が問われた。
第7問「SDGs(持続可能な開発目標)の意義と課題」 (12点・標準)
「政治・経済」国際政治分野・国際経済分野からの出題。SDGsを切り口に、探究活動の発表のための資料がリード文で用いられた。問1では、環境問題の会議3つにミレニアム開発目標を加えて年の古いものから並べることが問われた。問2は、京都議定書とパリ協定について詳細な知識が求められた。
3.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2022 | 2021 | 2020 | 2019 | 2018 |
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平均点 | 69.73 | 69.26 | 66.51 | 64.22 | 73.08 |
データネット実行委員会 ベネッセコーポレーション/駿台予備学校