問題講評【倫理】
― 選択肢の数と文章量が増え、資料の内容や趣旨をとらえる力の問い方に工夫がみられた。難易は昨年並 ―
大問構成や出題分野は昨年同様であった。組合せ問題では8択が大幅に増加し、7択、9択も昨年同様出題された。知識や読解力、判断力などを組み合わせて問う多面的・多角的な出題が増加したため、受験生は解答に時間を要しただろう。難易は昨年並。
1.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数4、解答数33個は昨年から変更なし。すべての大問で「倫理、政治・経済」との共通の設問が出題された。 |
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【出題形式】 | 問題ページ数は、昨年と同様。文章選択問題が増加(13→18)し、組合せ問題が減少(20→15)した。組合せ問題では、8択が大幅に増加(3→7)し、7択も増加(1→2)したが、9択は昨年同様1問のみ出題された。昨年はみられなかった5択の問題が出題された。昨年同様、原典資料が多く用いられた。 |
【出題分野】 | 昨年同様、特定の分野に偏ることなく幅広く出題され、第1問で源流思想分野、第2問で日本思想分野、第3問で西洋思想分野、第4問で青年期分野と現代の諸課題分野が現代の思想と合わせて出題された。 |
【問題量】 | 昨年並。 |
【難易】 | 昨年並。 |
2.大問別分析
第1問「思想の継承と発展」 (24点・標準)
源流思想分野からの出題。問5は、イエスの言動について正確な理解が問われた。問7は、アリストテレスの原典資料とノートの内容を読解し、古代のギリシア思想の考え方の特色をつかむ力が求められた。問8は、原始仏教と大乗仏教の思想についての資料を読み取り、2つの思想の関連性を比較しながら深く考察できたかどうかがポイントであった。
第2問「日本人と平和」 (24点・標準)
日本思想分野から、各時代・分野にわたって幅広く問われた。問3は、無常観についての理解と、資料を読み取る力が求められ、2人の無常のとらえ方の違いに着目することがポイントであった。問7は、平和を説いた近現代の思想家についてのやや細かい知識が求められた。問8は、吉野源三郎という教科書ではほとんど扱われない人物を取り上げ、戦後の思想状況のなかで平和を実現するために、他者への信頼とはどうあるべきかを資料から判断する必要があった。
第3問「芸術に普遍性があるか」 (24点・やや難)
西洋思想分野から、正確な知識を求める設問を中心に出題された。問1は、昨年と同様ルネサンス期の芸術について出題され、芸術の背景にある思想内容の理解が問われた。問3は、カントの認識論を手がかりに、『判断力批判』の資料を提示しながら、美についてカントがどのように考えたかが問われた。問7は、J.S.ミルの思想内容についての正確な知識が求められ、選択肢の内容を丁寧に読み取る必要があった。
第4問「後悔について」 (28点・標準)
青年期分野と現代の諸課題分野から出題され、現代の思想と絡めて幅広く問われた。問1は、フランクルとヴァイツゼッカーについての考え方の理解が必要であった。問4は、意思決定への後悔の影響を考える実験の手順と結果の考察が問われており、実験の意図や内容を理解する力が求められる問題であった。問8は、会話文全体を踏まえて、登場人物の主張として妥当なものを論理的に導くことが求められた。
3.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 | 2019 |
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平均点 | 59.02 | 63.29 | 71.96 | 65.37 | 62.25 |
データネット実行委員会 ベネッセコーポレーション/駿台予備学校