問題講評 旧日本史B
「中世の石材利用」など多彩な素材から問いの展開。読解力重視は変わらず難易はやや易
大問数、解答数に変更はなかった。博物館の展示解説、田中正造の天皇直訴状、飢饉とその対応策など、授業で取り上げられそうなテーマからの出題や素材が散見。文章資料に加え、絵画資料、統計データなど多彩な資料から引き続き読解力が求められた。受験生が苦手な、時期を判断させる出題が一定量みられたものの、踏み込んだ知識は求められず、問題難易は昨年よりやや易。
1.全体概況
大問数・解答数 | 大問数6、解答数32個は昨年から変更なし。 |
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出題形式 | 組合せ形式が中心の出題構成に大きな変化はなく、出題形式もバランスのとれた構成であった。『石山寺縁起絵巻』といった受験生になじみ深いものから中世の「石臼の構造と機能」など初見の資料にいたるまで多彩な史資料が扱われた。いずれも読解や分析を要する使われ方である点も特徴であった。 |
出題分野 | 社会経済分野からの出題がやや増加。政治史を中心に、分野融合的な問いも含めて各分野から幅広く出題された。 |
問題量 | 昨年並。 |
難易 | 問題難易は昨年よりやや易。 |
2.大問別分析
第1問「馬の歴史」 (18点・標準)
馬をテーマに3人の高校生がグループ発表に向け調べた内容を題材に、政治、社会、外交からおもに出題された。問2では生徒が作成したまとめの表の根拠となる史料を判断するもので、「牧」についての正確な読解力が求められた。
第2問「古代の東アジア外交」 (16点・やや易)
おもに新羅との関係を中心に古代日本の東アジア外交についての出題であった。問4では史料を正確に読み取るとともに、外交の窓口となっていた官司(大宰府)や唐の滅亡時期に関する知識が問われた。
第3問「中世の石材利用と宗教」 (16点・標準)
博物館の展示解説パネルを題材に、鎌倉・室町時代の文化を中心に出題された。問3は、正長の土一揆にまつわる基本史料中の用語について、的確に理解していることが要求された。
第4問「江戸時代の人命をめぐる政治」 (16点・標準)
江戸時代における飢饉や災害とそれらへの対応を述べた文章をもとに展開され、政治史を中心に文化史も出題された。問5では、横井小楠が幕末に記した著作が引用された。史料の読解は注釈を手がかりに対応できるが、正誤判断には通商条約の調印が無勅許で行われたことの理解が必要とされた。
第5問「高輪築堤と日本の近代化」 (12点・標準)
東京都港区の鉄道遺跡をもとに展開する会話に関して、社会経済分野を中心に出題された。問4は高輪築堤建設に関するメモと職務別お雇い外国人の推移を資料から読みとる力が必要とされた。
第6問「近現代の産業発展と環境問題」 (22点・標準)
高校生が調査して作成したプリントを題材に、史料やグラフを読解する問題が出題された。問4では鋼材の生産量と輸出入量のグラフを題材に、その変化の背景が問われた。大戦景気、金解禁、日中戦争の時期判断がポイント。
3.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 |
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平均点 | 56.27 | 59.75 | 52.81 | 64.26 | 65.45 |
データネット実行委員会 駿台予備学校/ベネッセコーポレーション