問題講評 化学
読解力や計算力を要する問題が増加。バナジウムに関する設問が目新しい。昨年より難化
問題文が長く読解力を要し、与えられた条件から段階的に考える問題が増加した。グラフを利用した問題数は減少し、計算問題の数は増加した。今年は、計算結果の値を直接マークする問題が出題された。重油中のバナジウムを題材とし、有機反応や熱化学、成分量を問う問題が目新しい。昨年より難化。
1.全体概況
大問数・解答数 | 昨年5であった大問数は6に増加。第1問~第4問が必答で、第5問・第6問から1大問選択(第6問は旧課程生のみ選択可)。解答数は、選択する問題にかかわらず32個(昨年は31個)。 |
---|---|
出題形式 | 文章選択問題を中心に出題された。 |
出題分野 | 昨年と同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。 |
問題量 | 昨年並。 |
難易 | 昨年より難化。 |
2.大問別分析
第1問「物質の状態と平衡」 (20点・難) 必答
結晶、気体、気体の溶解度、コロイド、希薄溶液に関する問題が出題された。問2は、理想気体と実在気体に関する問題で、正誤の組合せを選択する問いであった。問3は、ヘンリーの法則を用いた気体の溶解度に関する計算で、溶解量による圧力差を求めるものであった。問5は、海水から淡水を得る方法に関する問題で、題意を読み取った上で蒸気圧を求める問題と、浸透圧に関する式を立てる問題があり、思考力が問われた。
第2問「物質の変化と平衡」 (20点・標準) 必答
化学発光、電池、電離平衡、化学平衡に関する問題が出題された。問1は、選択肢の中に『枕草子』から抜粋・改変されたものが見られた。問3は、弱酸を希釈するときの体積とpHの関係のグラフを選択させる問題であった。問4は、ハーバー・ボッシュ法を題材にした、化学平衡の問題であった。問4aは、圧平衡定数と濃度平衡定数の関係を問う問題で、演習の経験により差がつくであろう。問4cは、速度と平衡の移動に関するグラフを選択させる問題であった。
第3問「無機物質」 (20点・やや難) 必答
金属イオンの反応、ケイ素の化合物、気体の発生反応とその取扱い、ヨウ素の生成・製造に関する問題が出題された。問2は、ケイ素の化合物に関する正確な知識が問われた。問3は、反応物の組合せから発生する気体の推定と性質に関する知識が問われた。問4は、異なる反応を用いたヨウ素の単体の生成をテーマとして、酸化還元反応に関する考察力を問う問題であった。問4cは、計算結果の値を直接マークする問題であった。
第4問「有機化合物、高分子化合物」 (20点・標準) 必答
酸素を含む有機化合物の反応、アクリル酸メチルとアニリンの反応生成物、天然高分子、アセチレンとその利用に関して幅広く問われた。問2は、反応によって生じた生成物に関する条件の記述をもとに、当てはまる構造式を選択する問題であった。問4bは、ビニロンの合成について反応の名称と生成物が問われた。問4cは、ポリビニルアルコールのアセタール化に関する計算問題であった。基本的な事項をしっかりおさえておくことが求められた。
第5問「総合問題(新課程)」 (20点・標準) 選択
原油とそれに含まれるバナジウムを題材とした総合問題であった。問1は、原油の分留における留出物を選ぶ問題、問2は、ベンゼンからナイロン6を合成する過程を考える問題であった。問3bは、酸化バナジウム(Ⅴ)を用いたナフタレンの空気酸化に関する問題であった。問3cは、酸化バナジウム(Ⅴ)からバナジウムを生成する二つの経路について、新課程で扱われるようになった反応エンタルピーの大きさを問う問題であった。問3dは、オキシドバナジウムイオンとEDTAの反応から重油を燃焼させた燃焼灰中のバナジウムの質量を問う問題であった。目新しい題材であったが、教科書の知識で解答できる問題が多く出題された。
第6問「総合問題(旧課程)」 (20点・標準) 選択
旧教育課程履修者等に配慮した問題が出題された。問3cのみ、旧課程生向けの問題で、それ以外は第5問と共通問題であった。問3cは、酸化バナジウム(Ⅴ)からバナジウムを生成する二つの経路の反応熱の大きさを問う問題であった。
3.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 54.77 | 54.01 | 47.63 | 57.59 | 54.79 |
データネット実行委員会 駿台予備学校/ベネッセコーポレーション