データネット2024 2024年度 大学入学共通テスト 自己採点集計

問題講評【化学】

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― 図やグラフを利用した問題が多く、質量分析法を扱った問題が目新しい。昨年より易化 ―

文章を読み解く問題、図やグラフを読み取る問題が数多く出題され、読解力と思考力を要した。教科書では扱わないアスタチンの性質、ニッケルの製錬法に関する問題が出題された。また、医薬品に関わる内容を題材にした問題が数多く出題された。質量分析法によるデータの読み取りを題材にした問題が目新しい。昨年より易化。

1.全体概況

【大問数・解答数】 大問数5は、昨年から変更なし。昨年32個であった解答数は31個に減少した。
【出題形式】 語句選択問題、文章選択問題を中心に出題された。
【出題分野】 昨年と同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
【問題量】 昨年と比べて増加。昨年26ページであったページ数は33ページになった。
【難易】 昨年より易化。(昨年は得点調整が行われたため、問題自体の難易を比較)

2.大問別分析

第1問「物質の状態と平衡」 (20点・標準) 

化学結合、気体、コロイド、水の状態図と状態変化、反応熱に関する問題が出題された。問2は、気体の体積を求める計算問題であり液体との体積比が問われた。問3では、コロイド粒子がろ紙やセロハンの膜を通過できるかが問われた。問4aは、状態図に関する誤文選択問題で、正しく状態図を読み取る必要があった。問4bは、氷と水の密度の変化を表した図から文章の正誤を判別する点が目新しい。問4cは、熱量に関する計算問題で、演習の経験により差がつくであろう。

第2問「物質の変化と平衡」 (20点・標準) 

熱化学、化学平衡、電池、電離平衡について出題された。問1は、水への溶解熱を示すエネルギー図の問題であった。問3は、さまざまな電池の化学反応式を示し、反応物の質量から電気量の大小を選択する問題であった。反応物の質量と移動する電子の物質量の関係を考えることができたかがポイントであった。問4bは、弱酸に水酸化ナトリウムを滴下したときの水溶液中における、それぞれのイオンのモル濃度のグラフを読み取り、滴下量に対するイオンの濃度比から電離定数を求められるかがポイントであった。

第3問「無機物質」 (20点・標準) 

化学物質の取扱い、17族元素、合金とメッキ、ニッケルの製錬に関する問題が出題された。問2では、教科書では扱われていないアスタチンの性質が問われたが、ハロゲンの性質を理解していれば解答できた。問3は、ステンレス鋼の成分とトタンについて出題された。問4のニッケルの製錬も教科書では扱われていないが、与えられた反応式を用いることで解ける問題であった。問4aは酸化還元に関する問題、問4bは二つの反応式にまたがった量的関係の計算問題、問4cは電解精錬で発生する気体の体積から陰極に析出するNiの質量を文字式で表す問題であった。

第4問「有機化合物、高分子化合物」 (20点・標準) 

脂肪族化合物、高分子化合物の性質、トリペプチドの検出、医薬品に関する問題が出題された。問1はアセトアルデヒドの工業的製法に関する問題、問2は身近な高分子化合物に関する誤文選択問題、問3はトリペプチドの検出反応に関する問題で、いずれも基本的な知識が問われた。問4は、医薬品を題材にした問題であり、問4bではペニシリンの部分構造を合成できる化合物を考える点が目新しい。問4cでは反応条件から、生じる物質の構造について判断する思考力が問われた。

第5問「質量分析法に関する総合問題」 (20点・やや難) 

物質の機器分析に用いられる質量分析法を題材に、溶液中に含まれる物質の質量、物質量、イオンなどの存在比が幅広く問われた。問1はドーピングをテーマに、尿中のホルモンの質量をグラフから求める問題、問2は試料中に含まれるAgの質量を、同位体の物質量の割合から求める問題であった。問3は、分子にエネルギーを加えることで断片化して生じるイオンの相対質量から、そのイオンの存在を類推する問題であった。見慣れないテーマを、簡潔に理解して解く必要があった。

3.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度 2023 2022 2021 2020 2019
平均点 54.01 47.63 57.59 54.79 54.67

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