問題講評 旧現代社会
多彩な資料から基本知識や考察力まで幅広く問う「現代社会」らしい出題。難易はやや易化
昨年同様、全ての大問で生徒の活動場面が題材となり、学習した内容を具体的な事例に関連づけて考察することが求められた。文献や統計など様々な資料が使われ、多くの情報を効率よく読み解く必要があった。昨年増加した政治分野からの出題は減少して例年並となった。既卒生にとっては安心して取り組めただろう。問題難易はやや易化。
1.全体概況
大問数・解答数 | 大問数5は昨年から変更なし。解答数は1個増えて32となった。 |
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出題形式 | 昨年増加した組合せ問題が減少。文章選択問題のウェイトが組合せ問題よりも若干上回る構成となった。 |
出題分野 | 昨年大きなウェイトを占めた政治分野からの出題が減少し、経済分野からの出題が政治分野をやや上回った。「現代社会」の学習内容を身近なテーマに置き換えて考える問題や、抽象的な概念・理論と具体的な事例とを結びつけて考察させる問題は、今年も随所で継続的に出題された。 |
問題量 | 昨年並。 |
難易 | 問題難易はやや易化。 |
2.大問別分析
第1問「日本における働き方の現状と課題」 (21点・標準)
高校生の調査研究という設定から、統計やメモなどを題材として、経済分野を中心に出題された。基本的な知識や資料の読み取りで解答できる。問3は、変形労働時間制や労働組合法の正確な知識が求められており、やや判断に迷ったかもしれない。問5は、外部不経済の判断は迷うが、会話文を丁寧に読めば解答は導ける。問7は、正答の母子福祉法の名称変更はあまり馴染みがないため、消去法で解答できたかどうかがポイント。
第2問「地域の課題と選挙制度」 (21点・標準)
授業の課題に関する先生と生徒の会話文から、政治分野を中心に、経済分野からも出題された。問4は、労働市場を需給曲線に示し、最低賃金を引き上げた場合のメリット・デメリットを考察する問題。需給曲線の見方を押さえていたかどうかがポイント。問5は、問題に提示された選挙区数の配分方式に沿って一票の格差を計算し、比較する問題。アダムズ方式を理解していれば解きやすいが、知らなくても「新方式」を資料から落ち着いて読み取れば解答できる。
第3問「日本国憲法」 (21点・標準)
日本国憲法に関する高校生のメモをもとに、政治分野を中心に、思想についても出題された。問3は、裁判員裁判の評決について、判断のプロセスを具体例に沿って考察する問題。落ち着いて条件を読み取っていけば正答できる。問7は、ミルの功利主義の引用文をもとに、ベンサムの功利主義との比較を考察する問題。基本的な知識を整理できていれば正答できる。
第4問「国際社会における国連の活動」 (21点・標準)
先輩による講演とそれを聞いた大学生との会話文をもとに、国際政治を中心に、青年期や思想も出題された。基本的な知識や資料の単純な読み取りで解ける問題が多かった。問6は、示された「考え方」に基づいて具体例を判断する問題であるが、迷わずに解答できたであろう。
第5問「医療に関する地域課題」 (16点・易)
探究学習の場面から、資料から読み取れる情報をもとに、抽象的な概念に具体例を当てはめたり、事例を比較・分類したりする問題が4問出題された。問題の情報量は多いが、知識はあまり求められず、また複雑な考察を求められてはいないので、時間を確保できていれば対応できただろう。
3.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 |
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平均点 | 55.94 | 59.46 | 60.84 | 58.40 | 57.30 |
データネット実行委員会 駿台予備学校/ベネッセコーポレーション