問題講評【国語】
1.総評
- 【2018年度センター試験の特徴】
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評論で図に関する対話の問い、古漢で対話形式の問題文が出題。難易は昨年並
問題文の分量は全体として昨年と同程度。昨年同様、文章全体の展開や主題を把握する力が求められた。評論で図に関する対話形式での設問が、古文・漢文で問答・対話形式の文章が出題され、全体に「言語活動の充実」を意識した出題であった。難易は昨年並。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数4、解答数36個は、昨年から変更なし。 |
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【出題形式】 | 評論では、問3で問題文を読んだ四人の生徒による対話が示され、対話文中の空欄にあてはまる選択肢を解答する設問が出題された。小説は、昨年同様原典の一節からの出題であった。古文では歌論が出題され、問5・問6では傍線部の指定がなかった。漢文は、ほぼ例年通りの出題形式。 |
【出題分野】 | 例年通り近代以降の文章2題(評論・小説)、古文1題、漢文1題という構成であった。 |
【問題量】 | 評論・小説・古文・漢文ともに昨年並。 |
【難易】 | 昨年並。 |
3.大問構成
第1問 | |||
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出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
「現代文・評論」 | 50点 | 標準 | 有元典文・岡部大介『デザインド・リアリティ――集合的達成の心理学』による |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
「現代文・小説」 | 50点 | 標準 | 井上荒野「キュウリいろいろ」 |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
「古文」 | 50点 | やや難 | 『石上私淑言』 |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
「漢文」 | 50点 | やや難 | 李■(とう)『続資治通鑑長編』による (■は壽に「れっか」) |
4.大問別分析
第1問「現代文・評論」(約4600字)
- ●問題文は、有元典文・岡部大介『デザインド・リアリティ――集合的達成の心理学』からの出題。問題文の分量は昨年からやや増加した(4200字→4600字)が、文体は昨年より平易で取りくみやすい文章。とはいえ、生活環境における「デザイン」の用語法や「環境´(かんきょうダッシュ)」等の造語、「アフォーダンス」の概念等、受験生にとって見慣れない表現や概念の意味内容を、本文の叙述に即して的確に読みとる力が求められる文章であった。昨年に引き続き、通念を超えた論旨や表現に対する柔軟な読解力を求める出題だと言える。
- ●設問構成は、問1で漢字を、問2〜問5で傍線を通して各部分の趣旨を、問6で表現や構成を問う設問の流れは例年通りだが、問3で文中の図に関して対話形式で問う設問が出題されたのが目を引く。対話形式の設問自体は2016年度本試験および2017年度追試験で出題されているが、本文に図が含まれ、また、その図に関する設問が設定されたのは新しい。これは、学習指導要領の「言語活動の充実」や、2021年度入試からセンター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト」を意識したものだと考えられ、来年度以降も今回のように、これまでになかった形式で出題される可能性が考えられるだろう。一方、昨年と比べると、本文は読みとりやすく、3行選択肢は2問に減少し、各設問の選択肢も比較的誤りが明確なものが多かったため、正答率が3割台の設問が2問あった昨年よりは易しくなり、センター試験の第1問としては標準的な難易であったと言える。とはいえ、正確な読解力の有無が問われる文章・設問であったので、学力によって得点差がついただろう。
- ●問1は、漢字設問。例年通り5題の出題で、一昨年と同様に訓読みの漢字が2問出題された。(ア)は「意匠」という漢字を思い浮かべることが、(ウ)は「乾いた」と「乾電池」を結びつけることがそれぞれやや難しかったかもしれないが、全体としては頻出の漢字が多く標準的な難易度であった。
- ●問2は、傍線部の理由説明の設問。第1〜4段落の論の流れを踏まえ、傍線部前後の趣旨を的確に読みとることができれば比較的容易に正答が選べる。特に着目すべき箇所は、第4段落冒頭の「冒頭の授業者の宣言は……多義性をしぼり込む」であり、元来傍線部Aであった「講義」が「授業者の宣言」によって変化する様を示しており、このことに気づけたかどうかがポイントであった。
- ●問3は、本文中の図(写真)に関する生徒の対話中の空欄を補う設問。先述の通り、新しい出題形式の設問である。しかし、図が話題になっているとはいえ、第10〜13段落の「可能性」「可搬性」という表現から「アフォーダンス」という概念の意味内容を正確に読みとれたかを問うている点では、通常の読解問題と変わらない。過去の対話形式の設問と異なる点は、空欄に至る生徒たちの会話が、本文の論旨に関する議論を経て正しい理解に達する流れになっていることを踏まえて解答する点にある。これは〈言語活動の充実〉や、いわゆる〈アクティブ・ラーニング〉への志向を示すものであり、2017年度に公表された「大学入学共通テスト」マーク式のモデル問題にも通じるものだと考えられる。今後もこのように新しい形式で出題される可能性はあると思われるが、これまでと同様、まずは本文の論旨を的確に押さえることが重要である。
- ●問4は、傍線部の理由説明の設問。正答選択肢3自体は傍線部Cと同じ第15段落内の記述を言い換え、再構成したものだが、最終段落まで視野に入れて考えればより自信をもって解答することができる設問であった。その意味で、近年のセンター試験の特徴である〈広い範囲の読みとりを求める設問〉と言える。
- ●問5は、傍線部の趣旨説明の設問。第16段落に始まる「´(ダッシュ)」を付す用語法の意味するところを的確にとらえたうえで、筆者の提唱する「心理´学」と「(従来の)心理学」との対比を押さえられたかどうかが問われている。選択肢4で迷った受験生もいただろうが、ここでは「多様に変化する環境およびそれに即した行為について考える心理学」が必要であると述べなければならない。「デフォルトの環境デザイン」は第17段落にあるように「原行為」についての筆者のとらえ方を述べたものであり、選択肢4にある通り「環境をデザインし続ける特質を有する人間の心性」を「デフォルトの環境デザイン」のみで説明することはできない。
- ●問6は、表現と構成に関する設問。4肢の枝問2問である点は2017年・2016年度本試験と同様の形式であるが、ともに「適当でないもの」を答えさせる形であった過去2年と異なり、(ii)は「適当なもの」を答えさせる設問となった。(i)の選択肢4は「私たちはこうした〜考える。」の方の「私たち」は〈筆者たち〉であって「筆者と読者とを一体化して扱」うものではないので、「両方とも〜」とするのは「適当でない」。そして、(i)と比べて(ii)はやや答えづらい設問となっている。過去2年の〈部分の構成〉を問う形と異なり、2013年度本試験・追試験で出題された、本文全体の構成の特徴を総括的に述べた選択肢を選ばせる設問と近い形となったため、戸惑った受験生も多かっただろう。センター試験の第1問問6では、本文の骨組みを抽象化してとらえる力を求められる設問の出題が多いので、各段落の論旨を押さえるだけではなく、それぞれの段落のつながりや問題文全体の位置づけを把握しながら読み進めることを意識したい。
第2問「現代文・小説」(約4700字)
- ●問題文は、井上荒野「キュウリいろいろ」の一節。35年前に息子を亡くした女性が夫の新盆を迎えた時の出来事と、それにまつわる思いが描かれている。問題文の分量は実字数で4700字程度と、ほぼ昨年並み。登場人物の心情の設問を中心に、語句の意味の設問や表現に関する設問、3行選択肢の設問など、全体としてほぼ例年通りの設問構成であった。近年多かった近代作家ではなく現代作家からの出題であったので、本文そのものは読みやすかったが、本文に直接記載がない心情について推測する設問では、解答に迷った受験生も少なくなかっただろう。本文の叙述を正確にたどるとともに、問題文全体の展開や構成を踏まえて読みとることが求められた。
- ●問1は、語句の意味に関する設問。(ア)「腹に据えかねた」、(イ)「戦きながら」、(ウ)「枷が外れる」のいずれも、辞書的な語義が問われた。けっして受験生にとってなじみのない表現ではなかったものと思われ、難易度は、やや易しめの出題。普段から言葉に対する関心を持ち、幅広い語彙力を身につけていたかどうかが問われた。
- ●問2は、主人公の心情の理由を把握する設問。傍線部の「苦笑したように見えた」だけにとらわれてしまうと、「今も皮肉交じりに笑っている」とある選択肢4を選んでしまったかもしれないが、本文8〜10行目のときと「同じように」とは言えないので、不適。傍線部を含む段落までの展開を踏まえて心情を読みとることが求められた。
- ●問3は、主人公の心情を把握する設問。「この出来事をきっかけにした郁子の心の動きはどのようなものか」という設問の要求に着目する。本文42〜47行目が主人公郁子の回想を描いた部分であることを押さえ、夫に対する郁子の思いの変化を描いた本文全体の展開の中で、47行目「……奥さんじゃなくてご主人の様子を見ていればわかります、と男性が笑ったのだった」にこの設問の焦点があることを読みとる。問題文の叙述を根拠にして心情を推測させる形式の出題は、センター試験では頻出である。
- ●問4は、主人公の心情を把握する設問。傍線部の前にある「それでもいつしか外に出て行くようになり、そうして笑うようにもなっていったのだ。」という気づきについて「何度でもたしかめた」(傍線部)という文脈になっていることをしっかりと押さえる必要があった。選択肢2と5が紛らわしく迷ったかもしれないが、選択肢2「思い知った」では「何度でもたしかめた」という気持ちに合わず、選択肢5「信じることができなかった」ではまったく信じていないことになるので、ともに不適。ここでも、本文の叙述を的確に読みとることが求められた。
- ●問5は、主人公の心情の理由を把握する設問。傍線部直後の「……もうそれを見つけたような感覚があった」に着目し、本文最後までの展開を視野に入れて考えていく。3行選択肢の設問だが、誤答が紛れのないものになっているので、それほど迷わなかっただろう。
- ●問6は、表現に関する説明の適否を判断する設問。「適当でないもの」を2つ選ぶことに注意。「適当でないもの」を選ばせる形式は、昨年・一昨年に引き続いての出題であった。選択肢3は、「他人に隠したい郁子の本音」が明らかな間違い。選択肢6の適否については迷ったかもしれないが、93行目「一度も来訪することはなかったのだった」を「悔やんでいる気持ち」とは解せないため、不適。表現上の単なるレトリックの理解だけではなく、文脈を踏まえ問題文の内容と連動させて読みとることが求められた。
第3問「古文」(約1300字)
- ●問題文は、江戸時代中期の歌論書『石上私淑言』からの出題。作者・本居宣長が35歳(宝暦13〈1763〉年)頃に記したものだとされている。問答形式で“歌とはいかなるものか”について「物のあはれ」を中心にして述べられている。使われている言葉一つ一つは難しくなかったが、歌論を読み慣れていない受験生は戸惑ったかもしれない。各設問では、本文中の「情」「欲」「物のあはれ」の関係を整理したうえで、それぞれの選択肢の違いを読みとる力が求められた。基本的な古文解釈の力だけでなく、現代文にも通じる論理的な読解力が必要とされた。
- ●問1は、例年通り古語の意味に関する設問。(ア)「あながちなり」「わりなし」、(イ)「いかにもあれ」、(ウ)「さらに……ず」「なつかし」など、いずれも基本単語・重要古語の確実な理解が求められた。また、(ア)は辞書的な意味を文脈に当てはめたうえで本文中における意味を考える必要があった。
- ●問2は、文法に関する設問。昨年の追試験と同じく、文法的な説明として「適当でないもの」を判断する形式であった。まず正確に品詞分解ができることが必要。そのうえで、選択肢の内容を一つ一つ丁寧に確認することが求められた。
- ●問3は、最初の問答(第1・2段落)の内容をまとめる設問。第2段落の前半では、『万葉集』が相聞を重視していることを述べ、後半では、その理由について“恋は人間の感情の中で最も深く心にしみて、やむにやまれぬほどの強い気持ちであるから”と述べている。本文の叙述と選択肢内の順序が逆になっているので戸惑ったかもしれないが、この内容に対応しているのは選択肢2である。
- ●問4は、第二の問答の答えの前半(第4段落)の内容をまとめる設問。まず「色」が「恋」であることに気づいたうえで、第4段落で述べられている「情」と「欲」と「恋」それぞれの関係を読みとり、再構成しなければならない。段落の前半では、全ての人の心は「情」であるが、その中でひたすら願い求める心が「欲」であることが語られている。後半では、「恋」はもとは「欲」から出ているが、特に「情」に深く関わっているということが述べられている。読みとる範囲も広く、作者の論理展開を把握してまとめる力が必要であった。正答は選択肢3であるが、それぞれの選択肢が長いこともあり、違いを識別して選ぶのに時間を要した受験生も多かっただろう。
- ●問5は、第二の問答の後半(第5・6段落)の内容をまとめる設問。傍線がない形式での出題は目新しい。第5段落では、〈「情」は心の弱さを恥じる後世の人の慣わしから包み隠されてきたので、「欲」よりも内容が浅いと思われるようになった。ただし和歌においてだけは、「情」を重視する上代のまま「物のあはれ」が詠まれ続けてきた〉といった内容が述べられている。続く第6段落では、大伴旅人の「酒を讃めたる歌」を例にとって、漢詩のように「欲」を詠むことを否定している。正答は選択肢4だが、誤答の中では選択肢2の〈「情」は時代が経つにつれて人々の心から消えていったが、今でも歌の中にだけは「情」が息づいている〉という流れが、一見すると紛らわしい。しかし選択肢2は「弱々しい感情なので」「消えていった」が不適。
- ●問6は、本文全体の内容をまとめる設問。「情」と「欲」と「物のあはれ」の関係を改めて整理することが求められている。第4段落の終わりに、「情」は生きているもの全てが持っているということ、歌は「物のあはれ」からできるものであるということが述べられており、また、第6段落では「欲」によって作られた和歌の否定が述べられているので、この内容を組み合わせた選択肢4が正答。誤答の中では選択肢2と5が紛らわしく迷ったかもしれない。選択肢2は「詩の影響を受けるあまり、『欲』を断ち切れずに歌を詠むこともあった」が、選択肢5は「詩では、〜感受できない」が、それぞれ本文に記載のない内容であるため不適。なお選択肢5については、「歌も詩も『物のあはれ』を知ることから詠まれる」ということが誤りだと判断できず、選んでしまう受験生もいただろう。ここでも、作者の論理展開を正しく把握してまとめる力が求められた。
第4問「漢文」(187字)
- ●問題文は、宋の李■(とう)(■は、壽に「れっか」)『続資治通鑑長編』からの出題。字数は187字と昨年と同程度。史伝からの出題は2011年度の追試験以来であり、本試験での出題は極めて珍しい。ただ、問答によって出処進退と君臣関係のあり方を述べた内容は、実質的には最近頻出の論説的な文章の傾向を引き継ぐものである。昨年の抽象度の高い内容に比べ、論説的な文章の特徴である対句や対比の表現を意識することで内容が把握しやすい設問構成になっていた。
- ●問1は、文字の意味に関する設問。傍線部の前後の文脈を踏まえて、意味を推測する。Y「沢」よりも比較的理解しやすいX「議」を考えてから、各選択肢を吟味すれば解答しやすかった。
- ●問2は、解釈の設問。どちらも「知」の意味の違いを問うており、波線部Iでは「知己」を、波線部IIでは「知事」という熟語を思い浮かべることができれば解答しやすかった。ただし波線部Iは、実際には選択肢の吟味の際に「之」の内容を本文から読みとることが必要だった。
- ●問3は、書き下しと解釈に関する設問。2013年度本試験以来の珍しい出題形式。重要表現「不若」「未」「為」の読みに着目し、書き下しとして適切なものを選ぶ。解釈については、嘉祐が〈「外人」皆が寇準は「入相」と考えている〉と述べたうえで、更に寇準から発言を促された嘉祐が自分の考えを述べる場面であることを踏まえる。傍線部で「為相」という表現が繰り返されているので、当然「宰相となる」の意であり、「相と為る」と訓読することがわかる。
- ●問4は、動作の主体を問う設問。傍線部Bに含まれる「言聴」「計従」の同形の繰り返しから、傍線部の前に対となる関係性が書かれていることがわかれば、正答を導くことができる。
- ●問5は、理由説明の設問。傍線部C直前までの嘉祐の発言の中で、「古」と「今」という対照的な言葉があることに着目。「今」を挟んで古の賢相と今の寇準とが対比されていることを読みとる。疑問を表す助字「乎」に気づくことができなくても、嘉祐の発言は「古の賢相は君主と水魚の交わりをなして功名を上げた。一方で寇準はそれができているのか」という問いかけなのだということを読みとれれば、正答が判断できた。
- ●問6は、本文全体の要旨を問う設問。嘉祐の発言を寇準が評価していることは明らかなので、これまでの設問をヒントに評価した内容を押さえていれば正答が選べた。問3では、嘉祐は寇準に対して宰相にはならない方がよいと述べており、また問5では、宰相にならない方がよい理由として君臣関係を挙げていた。よって「皇帝と宰相の政治的関係を深く理解し」とあり、「寇準の今後の進退について的確に進言」とある選択肢4が正答である。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 | 2013 |
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平均点 | 106.96 | 129.39 | 119.22 | 98.67 | 101.04 |
6.センター試験攻略のポイント
- ●今年のセンター試験では、評論で図に関する対話形式の設問が、古文・漢文で問答・対話形式の文章が出題されるなど、全体的に、学習指導要領でも重視されている「言語活動の充実」を意識した出題であった。なかでも評論の問3の、本文中の図に関する生徒の対話文の空欄を補う設問では、話し合いの流れを踏まえつつ、本文で読みとった内容を組み合わせて考える力が求められた。2021年度入試から実施予定の「大学入学共通テスト」で求められるであろう学力を意識したものとも考えられ、今後も同じような力を試す出題が続く可能性がある。従来にはない新しい形式の設問にも対応できるように準備をしておきたい。本文の構成を押さえたり、なじみのない表現を丁寧に読み解いたりする従来的な力も必要であるが、加えて、本文とその他設問などで与えられる文章を比較することでどのような情報が見えてくるか、それぞれの文章から必要な情報は何かを瞬時に判断する力を身につけておくことなどがポイントとなるだろう。
- ●問題文の分量は昨年と同程度。3行選択肢は全体で5問と、昨年より1問減ったものの、評論で対話文の設問が出題される等、全体として読む分量は決して少なくない。さらに今年は、古文で近年多く出題されている物語文ではなく論理性の高い歌論が出題され、戸惑った受験生も多かったであろう。普段読み慣れていない文章だと、読解に時間を要し、本来の力が発揮されにくいことがある。これまでのセンター試験の傾向を踏まえた対策は当然として、どのような文章でも対応できるように、現代文・古典ともに、幅広く、さまざまなジャンル・筆者の文章に触れておくことが望ましい。
- ●基礎事項は必ず頭に入れておきたい。評論の漢字の設問や、小説の語句の意味に関する設問などにおいて、日常生活ではあまり使用しない言葉が出題されることもある。たとえ普段の生活ではあまり使わない漢字・語句であっても、教科書や問題演習、模試などにおける文章で出会ったものについては、辞書などで意味を確認し、用法を含め頭に入れておきたい。古文は、古文単語、文法(敬語を含む)、和歌の修辞、古文常識や文学史などを、漢文は、重要語、再読文字や句法などを繰り返し復習することで、基礎事項を正確に覚えておきたい。
- ●今年のセンター試験で図や対話文を用いた新傾向の問題が出題された。今後も「思考力・判断力・表現力等の育成」がますます重視されることから、受験技術的な対策ではなく、基礎学力の確実な定着と、与えられた課題に即してそれを活用して読み解く力を身につけることが重要である。
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