問題講評【地学】

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1.総評

【2015年度センター試験の特徴】 

「火成活動と火成岩」と「地球の大気」が選択問題として出題。問題難易はやや難

大問数は7。第1問〜第5問が必答で、第6問・第7問から1問選択。地学の全範囲から幅広く出題された。第6問「火成活動と火成岩」では、火成岩やマグマについてのやや深い理解が、第7問「地球の大気」では、複数分野から幅広く基本的な知識が問われた。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は7。第1問〜第5問が必答で、第6問・第7問から1問選択。解答数は30個(選択問題をすべてあわせると33個)。
【出題形式】 文章選択問題を中心に出題された。
【出題分野】 特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
【問題量】 28〜29ページ(選択する問題によって異なる)。
【難易】 問題難易はやや難しい。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
地球の形とプレートテクトニクス 20点 やや難 A 地球の形と重力
B プレートテクトニクス
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
地球の内部構造 10点 標準
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
地質と地表の変化 20点 やや難 A 地質図
B 大陸移動
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
大気と海洋 20点 やや難 A 低緯度の大気
B 海洋表層の流れ
第5問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
宇宙 20点 やや難 A 恒星
B 銀河系
第6問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
火成活動と火成岩 10点 標準
第7問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
地球の大気 10点 標準

4.大問別分析

第1問「地球の形とプレートテクトニクス」

●Aは、地球の形と重力に関する出題であり、地球楕円体に関する基本的な知識と、重力についての知識・理解が必要であった。「旧地学I」と共通問題であった。
●問1は、地球楕円体の形状に関する基本的な問題であった。
●問2は、地球楕円体や重力に関する三つの文の正誤選択問題であった。三つの文のうち、二つが正解すれば部分点が与えられた。
●問3では、地球の自転周期が長くなった場合の、両極や赤道での重力変化が問われた。重力についての基本的な知識を身につけていれば正答に到達できたであろう。
●問4は、プレートの移動速度についての計算問題であり、図の読み取りに加えて、三角比や単位換算などの計算力が求められる。2地点間の距離を、地球の周囲の長さと緯度から計算させる点が目新しい。
●Bでは、プレート運動を題材として、重力異常や地震に関する知識が問われた。
●問5は、トランスフォーム断層周辺におけるP波初動の方向に関して考察する問題であった。トランスフォーム断層のずれの方向がイメージできれば易しい。
●問6では、プレート運動に関連する地磁気や重力、地震波速度についての知識が問われた。

第2問「地球の内部構造」

●地球内部を構成している物質の化学組成と地殻の構造、沈み込み帯の特徴などに関する出題であった。「旧地学I」と一部で共通問題がみられた。
●問1では、地殻、マントル、核それぞれの領域に一番多く含まれている元素が問われた。地殻、マントル、核のうち、二つの元素が正解すれば部分点が与えられた。
●問2は、地殻の構造に関する問題であった。大陸地殻と海洋地殻の構造について理解できていれば易しい。
●問3は、沈み込み帯の特徴に関する問題であった。正誤の判断に、沈み込み帯の特徴に関するやや深い理解を必要とする選択肢が多く、消去法で解答するには戸惑った受験生が多かったであろう。マントル内へ運び込まれる岩石について、岩石だけでなく、岩石を構成する鉱物に含まれる物質まで具体的に触れている点が目新しい。

第3問「地質と地表の変化」

●Aは、地質図を題材とした出題であり、走向・傾斜の読み取り、地史の解読、放射性炭素同位体を利用した堆積年代の計算など、幅広く問われた。「旧地学I」と共通問題であった。
●問1は、地質図から走向・傾斜を求める問題であった。図中に線を引くなどして、走向・傾斜を正しく読み取れるかがポイントである。
●問2は、地質図から地史を読み取る問題であった。地層の傾斜方向を求める力や、地層に関する基本的な知識が求められる。
●問3は、放射性同位体を利用した堆積年代の計算問題であった。半減期の意味と計算方法を知っていれば、計算自体は易しい。堆積年代の新旧が正解すれば部分点が与えられた。
●Bは、大陸移動に関する出題であり、大陸移動説の根拠から大陸プレートどうしの衝突による造山帯の形成まで、大陸移動についての総合的な理解が問われた。
●問4は、ヒマラヤ山脈の形成に関する分野融合問題であった。「海底」から三葉虫、「圧縮」から逆断層、「重なり合う」から60kmのように、問題文中の表現をヒントに考察できるかがポイントである。
●問5では、大陸プレートどうしの衝突によって形成された地形が問われた。
●問6では、大陸移動の根拠としてウェゲナーが示さなかったものが問われた。ウェゲナーの時代にはまだ判明していなかったものを選択できるかがポイントである。

第4問「大気と海洋」

●Aは、低緯度の大気に関する出題で、積乱雲の発達やハドレー循環について問われた。「旧地学I」と共通問題であった。
●問1は、対流圏における水蒸気圧と温度の緯度・高度分布を表す図から、相対湿度や大気の安定性などを考察する問題であった。
●問2は、積乱雲の仕組みに関する問題であった。
●問3では、フェーン現象や台風のエネルギーなど、水蒸気の凝結熱に関する知識が問われた。水蒸気の凝結熱が原因となる気象現象と、原因とならない気象現象を識別できるかがポイントである。「原因に関係していないことがら」を選択する形式は目新しい。
●問4は、ハドレー循環に伴う風系や潜熱輸送など、大気と海洋に関する総合的な理解を問う問題であった。
●Bは、環流に関する出題であり、その成因と西岸強化の仕組みが問われた。
●問5は、環流が形成される仕組みを、地表付近の風系と転向力の影響から説明する問題であった。「風下に向かって右方向」という表現が読み取りにくく、受験生はやや戸惑ったであろう。三つの空欄のうち、二つが正解すれば部分点が与えられた。
●問6は、西岸強化が生じる仕組みに関する典型的な問題であった。

第5問「宇宙」

●Aは、恒星の明るさやスペクトル、距離に関する出題であった。グラフと表の情報をもとに複合的な考察を行わなければならない点でやや難しい。「旧地学I」と共通問題であった。
●問1では、見かけの等級のHR図と年周視差の測定結果から読み取れることがらが問われた。見慣れない見かけの等級のHR図や、読み取り箇所が多いことに、多くの受験生が戸惑ったであろう。
●問2は、見かけの等級からHR図を導くという目新しいアプローチの問題であった。問題文の但し書きから、「見かけよりも絶対等級の方が大きな星が12個」であることに気づくかがポイントである。
●問3は、恒星の質量と進化に関する典型的な問題であった。終末段階の状態は質量によって大きく異なってくることをしっかりとおさえておきたい。
●Bは、銀河系に関する出題であった。
●問4は、銀河系の構造と質量を求める方法に関する問題であり、ダークマターの存在についても問われた。
●問5では、銀河系の星間物質の特徴について問われた。
●問6では、銀河回転曲線についての理解が問われた。教科書に掲載されている典型的な図ではあるが、直感と異なるため、戸惑った受験生もいたと思われる。

第6問「火成活動と火成岩」

●火成岩中の鉱物の特徴と、マグマの性質に関する出題であった。「旧地学I」と一部で共通問題がみられた。
●問1は、結晶分化作用で晶出する斜長石に関する知識、および偏光顕微鏡で観察したときの特徴を問う目新しい問題であった。偏光顕微鏡による岩石プレパラートの観察経験があれば有利であったと思われる。
●問2は、ケイ長質マグマと苦鉄質マグマの違いに関する問題であり、結晶分化作用やマグマと火山の形の関係が理解できていれば易しい。
●問3は、マグマからの結晶の晶出順を問う問題であり、スケッチから晶出順序を読み取る力が求められる。晶出の全過程の順序ではなく、3番目に起こった過程のみを解答する点が目新しい。

第7問「地球の大気」

●分野融合型の大問であり、ミランコビッチサイクルや二酸化炭素に関して、温室効果や化学的風化などが扱われた。
●問1は、季節変化を起こす要因や、ミランコビッチサイクルに関する知識、地球の自転速度と転向力の関係などを問う、分野融合型の問題であった。
●問2では、二酸化炭素に関して、温室効果、火山ガス、化学的風化作用など、さまざまな分野の知識が問われた。苦手分野をつくらず、まんべんなく学習しておくことが大切である。
●問3は、酸素とオゾンに関して幅広い知識を問う問題であった。酸素とオゾンそれぞれについての深い理解を要する。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度20142013201220112010
平均点

6.センター試験攻略のポイント

●基本的な知識から深い理解まで、幅広く正確な知識が求められた。まずは、教科書に記載されている基本的な内容を正しく理解しておくことが大切である。また、特定の分野に偏ることなく幅広く出題されたため、苦手分野をつくらない学習を心がけたい。
●「旧地学I」でもみられたように、図やグラフを用いて考えさせる問題が多く出題された。教科書などで扱われている図やグラフを正しく理解し、示された情報を正しく読み取れるように、演習を積んでおきたい。「旧地学I」の過去の問題や、センター試験対策用の問題集などを用いた演習が効果的である。
●分野をまたいだ選択肢など、複数の分野を融合した問題がみられた。学習する際には関連分野も振り返るなどし、分野間で関係性が深いものを関連付けて理解しておきたい。

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