問題講評【地学基礎】

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1.総評

【2015年度センター試験の特徴】 

環境分野を含む全分野から出題され、読図・計算問題が多かった。難易はやや難しい

3大問構成で全分野から出題されたが、教科書の参考や発展からの出題はなかった。「地学基礎」で重視されている、観測結果をもとに計算・作図をする問題や、自然エネルギーについての問題もみられた。なお、資料として東北地方太平洋沖地震が扱われた。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は3。全問必答。解答数は15個。
【出題形式】 文章選択問題を中心に出題され、計算問題も4問出題された。
【出題分野】 特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。新課程になって扱いの大きくなった、環境分野からの出題もみられた。
【問題量】 14ページ。
【難易】 やや難しい。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
地球の活動と生物の進化 23点 やや難 A 惑星の水と地震・火山現象
B 生物の進化と地層
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
大気と海洋、日本の自然環境 16点 やや難 A 大気と海洋の構造、地球上の水や物質の循環
B 日本の自然環境がもたらす恵み
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
太陽の観察 11点 やや難

4.大問別分析

第1問「地球の活動と生物の進化」

●Aは、惑星における水、地球上の火山、地震と津波についての出題であった。火成岩についての出題はなかった。
●問1は、惑星の表面のようすについての知識問題であった。惑星についての問いではあるが、地球の歴史に関する知識のみでも正答を選ぶことができる。
●問2は、地球上の火山についての知識問題であった。ホットスポットの火山において、マグマがどこで発生するかについての判断は難しく、かなり細かい知識を問う問題であった。
●問3は、2011年東北地方太平洋沖地震を題材とした問題であった。図中に○印で示された震央分布から震源域の面積を大雑把に見積もることが、受験生にとっては難しかったと思われる。
●問4は、3地点の震源距離から、震央の位置を求める問題であり、センター試験として出題されるのは目新しい。与えられたデータから震源距離を求め、さらに作図しなくてはいけないという、2段階の思考を必要とする問題であり、類題の演習経験がない受験生にとっては難しかったと思われる。
●Bは、生物の進化と地層についての出題であった。
●問5は、バージェス動物群の化石の組合せ問題であった。かなり細かい知識が問われているようにみえるが、ビカリア、ヌンムリテス、デスモスチルスという、よく出題される化石が誤答選択肢に含まれているため、それに気づいた受験生は、消去法で簡単に正答にたどり着くことができたであろう。
●問6は、バージェス動物群化石の特徴とあるが、カンブリア爆発に関する問題であった。全球凍結がセンター試験で出題されるのは目新しい点である。
●問7は、示準化石の年代と地層の層序から、地質断面図を読み取る問題であった。地質時代のおおまかな年代を知っておく必要があった。

第2問「大気と海洋、日本の自然環境」

●Aは、大気と海洋の構造と水の循環に関する出題であり、基本的な知識のほか、環境変動に対する人間活動の影響についての理解を問う問題がみられた。
●問1は、水循環に関する考察問題であった。2011年度「地学I」の追試験では、同様の内容で図を用いた出題がみられたが、2015年度は文章の空欄補充形式の出題であった。
●問2は、大気と海洋の温度構造について、知識と考察力が問われた。解釈の難しい文が与えられており、判断に迷う受験生もいたと思われる。
●問3は、暖気が寒気よりも軽いことによって生じる大気現象についての知識が問われた。四つの文はいずれも正しいことを述べているが、題意にそった正答を選ぶことに注意が必要であった。
●問4は、四つの選択肢に示された現象のうち、人間活動の影響ではないものを選ぶ問題であった。「地学基礎」で扱いの大きくなった環境問題に関する問題であった。
●Bは、日本における自然環境と、それが自然エネルギーとしてどのように利用されているかについての知識を問う問題であった。人間生活や社会とのかかわりを重視した、新課程色の強い出題であった。

第3問「太陽の観察」

●太陽の観察に関する出題であった。問1、問2は、一見すると図の読み取りや計算が必要な問題にみえるが、知識を有している受験生であれば容易に正答を選択することができる。差がつきやすい問題であった。
●問1は、図から黒点の移動量を読み取り、太陽の見かけの自転周期を計算する問題であった。実習経験のある受験生にとっては取り組みやすい問題であったと思われる。
●問2は、黒点の大きさと地球の大きさを比較計算する問題であった。黒点と地球の直径についての知識があれば即答できたが、計算問題として取り組んだ受験生にとっては難しかったと思われる。
●問3は、太陽光のスペクトルに関しての問題であった。フラウンホーファー線に関連して、宇宙に存在する元素についての知識が問われた。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度20142013201220112010
平均点

6.センター試験攻略のポイント

●2015年度は、「地学基礎」の全分野から幅広い内容が出題され、細かな知識を問う出題もみられた。教科書に記載されている内容を単純に暗記するだけでなく、地学の本質をおさえながら学習をすすめる必要がある。
●2015年度は、図の読み取りや計算問題が多く出題された。類題の演習経験があれば解答しやすいので、早い時期からセンター試験対策用問題集などを用いた演習に取り組みたい。
●センター試験では、実験や探究活動についても出題される。教科書に掲載されている探究活動について、その意図や観察方法をしっかりと理解しておきたい。さらに、観測結果のデータから、作図や計算をするといった演習を行うことも重要である。
●新課程で扱いの大きくなった環境問題についての出題もみられた。地球環境問題や自然現象などと、学習した内容を結び付けて考える力が求められる。日ごろから気象や災害に関する報道などにも関心をもつようにしておきたい。

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