問題講評【生物基礎】

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1.総評

【2015年度センター試験の特徴】 

基本的な知識を中心に、生物基礎の範囲全体から幅広く出題された。難易はやや難しい

3大問構成。実験・観察に関する設問がなく、知識・理解を問う問題が大半を占めた。組合せ問題や「過不足なく含むもの」を選ぶ問題など、出題内容に対する正確な理解と選択肢の丁寧な読み取りが要求される出題形式がみられた。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は3。全問必答。解答数は16個。
【出題形式】 文章選択問題・組合せ問題を中心に出題された。
組合せ問題で「過不足なく含むもの」を選ぶ問題が2設問出題された。
【出題分野】 特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
【問題量】 12ページ。
【難易】 やや難しい。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
生物と遺伝子 20点 やや難 A 生物の特徴
B 遺伝子とそのはたらき
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
生物の体内環境の維持 15点 標準 A 肝臓のはたらき
B 免疫
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
生物の多様性と生態系 15点 標準 A バイオーム
B 生態系とその保全

4.大問別分析

第1問「生物と遺伝子」

●第1問では、「生物と遺伝子」の分野から、ゲノムに関する計算など、幅広い内容が出題された。
●Aは、多様な生物の共通性に関する基本的な知識を問う問題であった。真核生物の種類や細胞小器官といった細胞の構造、はたらきに関する知識が問われた。
●問3では、植物および動物の代謝に関して基本的な理解を問う、9択の問題が出題された。「動物は異化だけ」と誤って理解している受験生は、植物の代謝のみの選択肢で迷ったかもしれない。
●Bは、ゲノムと遺伝情報に関して正確な知識と理解を問う内容であった。
●問5では、ゲノムに関して遺伝子の存在と発現の関係の理解が問われた。「分裂期の前期に2倍になる」や「ゲノムの全遺伝子を活発に転写して膨らみ」といった各選択肢の表現に対して細かい理解と正確な判断を必要とし、選択肢を丁寧に読まないと正答を導き出すことができない。
●問6では、ヒトのゲノムの遺伝子数(約2万)の知識を用いる計算問題が出題された。計算問題に加えて前提となる知識も要するため、差がつくと思われる。

第2問「生物の体内環境の維持」

●第2問では、「生物の体内環境の維持」の分野に関して、複数の正確な理解を要求する問題が出題された。
●Aは、肝臓に関して、基本的なはたらきや構造について細かい知識・理解を問う問題であった。生物Iではあまり扱われなかった肝臓が取り上げられたことが目新しい。
●問1では、肝臓のはたらきに関する基本的な知識が問われた。選択肢の吟味では、出題された用語に対する正確な知識と理解を要する。
●問2では、肝臓に流れる血管に関する問題であった。他の器官と絡めて肝臓の血液の流れが理解できていれば、正答を選択できる。「脾臓からの血液」という記述に困惑した受験生がいたかもしれない。
●問3では、血糖濃度の調節に関する理解を問う、9択の問題が出題された。ホルモン、神経に関して幅広い知識を必要とし、「どこから」「何が」分泌され「どこに」「どのような効果を生む」のかを正確に読みとる必要がある。
●Bは、免疫に関して、体液性免疫と免疫疾患についての基本的な知識が問われた。問われた内容はどの教科書でも共通して扱われているものであった。
●問4では、ヒトの抗体産生にかかわる細胞についての理解が問われた。リード文および図から細胞x〜zを特定する必要があり、9個の選択肢から「過不足なく含むもの」を選ぶため、やや難しいと思われる。
●問5では、アレルギーやエイズを題材に、免疫細胞についての基本的な知識が問われた。

第3問「生物の多様性と生態系」

●第3問は、「生物の多様性と生態系」の分野から基本的な知識・理解を問う問題を中心に出題された。取り組みやすい内容であったが、解答には正確な知識が求められる。
●Aでは、バイオームの特徴についての知識が幅広く問われた。
●問1では、バイオームに関する知識が問われた。教科書の図がそのまま扱われており、難易としても易しい。
●問2では、日本のバイオームに関する知識・理解が問われた。「常緑樹」「落葉樹」といった、授業でも見落とされがちな細かい知識が要求される。
●問3では、硬葉樹林を題材として、世界のバイオームに関する細かい知識・理解が問われた。バイオームの読み取り、硬葉樹林に関する知識、選択肢の正確な読み取りと、さまざまな要素が含まれており、難しい。「硬葉樹林」から「葉が硬い」とある選択肢6を選択してしまった受験生が多かったのではないだろうか。
●Bは生態系と環境問題に関する問題であった。内容は基本的だが、正確な知識が必要とされた。
●問4では、エネルギーの流れに関する知識・理解が問われた。光エネルギー・化学エネルギー・熱エネルギーの相互関係を把握できていれば易しい。
●問5では、温室効果ガスに関する知識が問われた。地球温暖化については、一般常識として扱われている内容の問題。環境保全は新課程で重視されている内容である。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度20142013201220112010
平均点

6.センター試験攻略のポイント

●各分野の知識が幅広く問われており、2016年度もこの傾向が続くことが予想される。生物基礎の全範囲からまんべんなく出題されるため、対策としては教科書を中心とした正しい知識を細部までしっかりと身につけることが有効である。教科書の本文中にある用語だけでなく、図やグラフまで丁寧に理解しておきたい。
●2015年度は、選択肢の丁寧な読み取りを必要とする問題が多く出題された。今後も選択肢の丁寧な読み取りが求められることが予想される。教科書の知識を身につけた後は、模擬試験などの文章選択・用語選択問題を活用した練習が効果的である。
●今後は教科書で扱われている実験に関する理解が問われる可能性がある。教科書の理解に加えて、模擬試験や参考書を活用した実験・観察問題の練習をしておきたい。

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