問題講評【化学】
1.総評
- 【2015年度センター試験の特徴】
-
高分子化合物が選択問題。「化学基礎」の知識で解ける問題もあった。難易は標準
「合成高分子化合物」と「天然高分子化合物」が選択問題として出題された。原子の構造、酸化還元滴定などで、「化学基礎」の知識のみで解答できる問題がみられた。また、新課程の学習指導要領を意識した実験や探究活動に関する問題がみられた。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数は6。第1問〜第4問が必答で、第5問・第6問から1問選択。解答数は29個(選択問題をすべてあわせると32個)。 |
---|---|
【出題形式】 | 文章選択問題を中心に出題され、組合せ問題は6問であった。5〜6択の問題が中心に出題された。 |
【出題分野】 | 特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。「合成高分子化合物」と「天然高分子化合物」が選択問題として出題された。 |
【問題量】 | 25〜26ページ(選択する問題によって異なる)。 |
【難易】 | 標準。 |
3.大問構成
第1問 | |||
---|---|---|---|
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
物質の状態と平衡 | 23点 | 標準 | |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
物質の変化と平衡 | 23点 | 標準 | |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
無機物質 | 23点 | 標準 | |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
有機化合物 | 22点 | 標準 | |
第5問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
合成高分子化合物 | 9点 | 標準 | |
第6問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
天然高分子化合物 | 9点 | 標準 |
4.大問別分析
第1問「物質の状態と平衡」
●問1、2は「化学基礎」の知識のみで解答できる問題であり、問3〜5では新課程で出題範囲となった結晶の単位格子、コロイド溶液、気体の法則に関する問題が出題された。全体的に基礎力を問う素直な問題で解きやすい。
●問1は、原子の構造に関する基本的な問題であった。「旧化学I」第1問の問2と共通問題であった。
●問2は、質量パーセント濃度からモル濃度に換算する問題であった。問題文中にある体積V〔L〕を用いなくても解答できる点に注意が必要であった。「旧化学I」第1問の問4と共通問題であった。
●問3は、面心立方格子をとるアルミニウムの結晶構造を題材とし、単位格子に含まれるアルミニウム原子の数を問う非常に基本的な出題であった。
●問4は、コロイドに関する記述について、下線部の正誤を問う問題であった。基本的な用語を理解していれば容易に解くことができたと思われる。
●問5は、コックのついた二つの容器内の気体について、コックを開いて混合したときの混合気体の全圧を求める計算問題であり、ボイルの法則を正しく扱えたかがポイントであった。
●問6は、14族、16族、17族元素の水素化合物の沸点に関する記述について、下線部の正誤を問う問題であった。水素結合やファンデルワールス力、極性の有無などについて正しく理解できているかが問われた。
●問1は、原子の構造に関する基本的な問題であった。「旧化学I」第1問の問2と共通問題であった。
●問2は、質量パーセント濃度からモル濃度に換算する問題であった。問題文中にある体積V〔L〕を用いなくても解答できる点に注意が必要であった。「旧化学I」第1問の問4と共通問題であった。
●問3は、面心立方格子をとるアルミニウムの結晶構造を題材とし、単位格子に含まれるアルミニウム原子の数を問う非常に基本的な出題であった。
●問4は、コロイドに関する記述について、下線部の正誤を問う問題であった。基本的な用語を理解していれば容易に解くことができたと思われる。
●問5は、コックのついた二つの容器内の気体について、コックを開いて混合したときの混合気体の全圧を求める計算問題であり、ボイルの法則を正しく扱えたかがポイントであった。
●問6は、14族、16族、17族元素の水素化合物の沸点に関する記述について、下線部の正誤を問う問題であった。水素結合やファンデルワールス力、極性の有無などについて正しく理解できているかが問われた。
第2問「物質の変化と平衡」
●熱化学、化学平衡、電気分解、酸化と還元から出題された。
●問1は、塩化水素HClの生成熱とH-HおよびCl-Clの結合エネルギーから、H-Clの結合エネルギーを求める計算問題であった。計算式を正確に立てられたかがポイントである。
●問2は、窒素と水素からアンモニアを生成する反応について、ルシャトリエの原理を用いて平衡の移動を考える文章正誤問題であった。
●問3は、2種類の塩の水溶液を混合したときに、三つの実験でそれぞれ沈殿が生成するかどうかを、溶解度積の計算によって求める問題であった。混合により、それぞれの溶液の濃度が半分になることに注意する必要がある。
●問4aは、直列で電気分解を行ったときに、硫酸銅(II)水溶液の入った電解槽の陰極に析出した銅の質量と、電流を流した時間およびファラデー定数を用いて、流した電流を求める計算問題であった。「旧化学I」第2問の問4aと共通問題であった。
●問4bは、直列で電気分解を行ったとき、二つの電解槽のそれぞれの陽極で起きた現象の組合せを考える問題であった。「旧化学I」第2問の問4bと共通問題であった。
●問5は、過マンガン酸カリウム水溶液の滴下によって、過酸化水素水の濃度を決定する典型的な計算問題であり、「化学基礎」の知識のみで解答できた。「旧化学I」第2問の問5と共通問題であった。
●問1は、塩化水素HClの生成熱とH-HおよびCl-Clの結合エネルギーから、H-Clの結合エネルギーを求める計算問題であった。計算式を正確に立てられたかがポイントである。
●問2は、窒素と水素からアンモニアを生成する反応について、ルシャトリエの原理を用いて平衡の移動を考える文章正誤問題であった。
●問3は、2種類の塩の水溶液を混合したときに、三つの実験でそれぞれ沈殿が生成するかどうかを、溶解度積の計算によって求める問題であった。混合により、それぞれの溶液の濃度が半分になることに注意する必要がある。
●問4aは、直列で電気分解を行ったときに、硫酸銅(II)水溶液の入った電解槽の陰極に析出した銅の質量と、電流を流した時間およびファラデー定数を用いて、流した電流を求める計算問題であった。「旧化学I」第2問の問4aと共通問題であった。
●問4bは、直列で電気分解を行ったとき、二つの電解槽のそれぞれの陽極で起きた現象の組合せを考える問題であった。「旧化学I」第2問の問4bと共通問題であった。
●問5は、過マンガン酸カリウム水溶液の滴下によって、過酸化水素水の濃度を決定する典型的な計算問題であり、「化学基礎」の知識のみで解答できた。「旧化学I」第2問の問5と共通問題であった。
第3問「無機物質」
●問1〜4は、無機物質の性質や反応に関する問題で、従来の「旧化学I」で出題されていたような問題であった。
●問1は、身のまわりの物質を題材とした14族元素の単体および化合物の性質、反応、用途に関する問題であった。一酸化炭素が水に溶けないことを知っていれば易しい。「旧化学I」第3問の問1と共通問題であった。
●問2は、硫黄の化合物に関する文章正誤問題であり、鉛蓄電池の放電時に生成する硫酸鉛(II)についての記述がみられ、電池・電気分解の分野の理解も問われた。「旧化学I」第3問の問2と共通問題であった。
●問3は、銅の単体と化合物および合金の性質に関する記述について、下線部の正誤を問う問題であった。合金の成分や緑青について、知識が曖昧であれば、難しく感じたかもしれない。
●問4は、二つの元素に共通する性質に関する問題であった。炎色反応におけるSrの色の変化や、Snが+2の酸化数をとりうる点に注意したい。「旧化学I」第3問の問4と共通問題であった。
●問5は、銅とアルミニウムの混合物に、希塩酸と濃硝酸を順番に加えて反応させたときに発生する水素および二酸化窒素の体積のグラフから、混合物中の銅およびアルミニウムの物質量の比を問う問題であった。比の順番と、各実験で反応する物質の順番が逆であり、銅とアルミニウムを逆に考えた受験生がいたかもしれない。「旧化学I」第3問の問5と共通問題であった。
●問6aは、銅線を巻きつけた鉄くぎに、ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウムとフェノールフタレイン溶液を溶かした寒天水溶液を注いだ後に起こった変化から、生じたイオンを考える実験に関する問題であった。「旧化学I」第3問の問6aと共通問題であった。
●問6bは、細い亜鉛板を巻きつけた鉄くぎに、問6aと同様の寒天水溶液を注いだ後に起こる色の変化に関する問題であった。亜鉛のイオン化傾向が、鉄よりも大きいため、鉄がイオンにならないことに気づけるかがポイントであった。「旧化学I」第3問の問6bと共通問題であった。
●問1は、身のまわりの物質を題材とした14族元素の単体および化合物の性質、反応、用途に関する問題であった。一酸化炭素が水に溶けないことを知っていれば易しい。「旧化学I」第3問の問1と共通問題であった。
●問2は、硫黄の化合物に関する文章正誤問題であり、鉛蓄電池の放電時に生成する硫酸鉛(II)についての記述がみられ、電池・電気分解の分野の理解も問われた。「旧化学I」第3問の問2と共通問題であった。
●問3は、銅の単体と化合物および合金の性質に関する記述について、下線部の正誤を問う問題であった。合金の成分や緑青について、知識が曖昧であれば、難しく感じたかもしれない。
●問4は、二つの元素に共通する性質に関する問題であった。炎色反応におけるSrの色の変化や、Snが+2の酸化数をとりうる点に注意したい。「旧化学I」第3問の問4と共通問題であった。
●問5は、銅とアルミニウムの混合物に、希塩酸と濃硝酸を順番に加えて反応させたときに発生する水素および二酸化窒素の体積のグラフから、混合物中の銅およびアルミニウムの物質量の比を問う問題であった。比の順番と、各実験で反応する物質の順番が逆であり、銅とアルミニウムを逆に考えた受験生がいたかもしれない。「旧化学I」第3問の問5と共通問題であった。
●問6aは、銅線を巻きつけた鉄くぎに、ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウムとフェノールフタレイン溶液を溶かした寒天水溶液を注いだ後に起こった変化から、生じたイオンを考える実験に関する問題であった。「旧化学I」第3問の問6aと共通問題であった。
●問6bは、細い亜鉛板を巻きつけた鉄くぎに、問6aと同様の寒天水溶液を注いだ後に起こる色の変化に関する問題であった。亜鉛のイオン化傾向が、鉄よりも大きいため、鉄がイオンにならないことに気づけるかがポイントであった。「旧化学I」第3問の問6bと共通問題であった。
第4問「有機化合物」
●異性体、有機化合物の性質や合成実験、芳香族化合物の分離、エステルの加水分解と量的関係が出題された。
●問1は、鏡像異性体、構造異性体、幾何異性体(シス-トランス異性体)など、異性体に関する記述のうちから、正しいものを二つ選択する文章正誤問題であった。有機化合物の分子構造をしっかりと理解しておく必要があった。
●問2は、有機化合物に含まれる成分元素としての塩素の検出方法と、フェノール類の塩化鉄(III)水溶液による検出反応から、両方の記述に当てはまる有機化合物の分子構造を特定する問題であった。
●問3は、アルデヒドの性質および反応に関する記述について、下線部の正誤を問う基本的な問題であった。
●問4は、酢酸カルシウムからアセトンを合成する実験の問題で、加熱の方法および生成したアセトンを集める方法について問われた。
●問5は、芳香族化合物の分離に関する実験の問題で、実験手順が不適切な場合、物質がどのように分離されるかが問われた。不適切な場合を問う点が目新しく、探究的な取り組みを意識した、思考力が問われる問題であった。「旧化学I」第4問の問6と共通問題であった。
●問6は、エステルの加水分解に関する計算問題であった。見慣れない問題であるが、問われた内容は基本的であり、エステルの加水分解によって、カルボン酸とアルコールが生成することがわかれば、簡単な分子量の計算で正解を導くことができる。「旧化学I」第4問の問7と共通問題であった。
●問1は、鏡像異性体、構造異性体、幾何異性体(シス-トランス異性体)など、異性体に関する記述のうちから、正しいものを二つ選択する文章正誤問題であった。有機化合物の分子構造をしっかりと理解しておく必要があった。
●問2は、有機化合物に含まれる成分元素としての塩素の検出方法と、フェノール類の塩化鉄(III)水溶液による検出反応から、両方の記述に当てはまる有機化合物の分子構造を特定する問題であった。
●問3は、アルデヒドの性質および反応に関する記述について、下線部の正誤を問う基本的な問題であった。
●問4は、酢酸カルシウムからアセトンを合成する実験の問題で、加熱の方法および生成したアセトンを集める方法について問われた。
●問5は、芳香族化合物の分離に関する実験の問題で、実験手順が不適切な場合、物質がどのように分離されるかが問われた。不適切な場合を問う点が目新しく、探究的な取り組みを意識した、思考力が問われる問題であった。「旧化学I」第4問の問6と共通問題であった。
●問6は、エステルの加水分解に関する計算問題であった。見慣れない問題であるが、問われた内容は基本的であり、エステルの加水分解によって、カルボン酸とアルコールが生成することがわかれば、簡単な分子量の計算で正解を導くことができる。「旧化学I」第4問の問7と共通問題であった。
第5問「合成高分子化合物」
●第6問との選択問題であり、出題形式は第6問とよく似ていた。全体的に内容は基本的といえるが、演習経験の有無で差がつくと考えられる。
●問1は、合成高分子化合物全般に関する文章正誤問題であった。さまざまな高分子化合物の構造や製法などについて覚えておく必要があった。
●問2は、ナイロン66の構造式を選ぶ基本的な問題であり、単量体の構造に関する知識が求められた。
●問3は、ポリビニルアルコールのヒドロキシ基の50%を、アセタール化したときに生成するビニロンの質量を求める計算問題であった。類似の問題について、十分に演習できていたかどうかで差がつくと考えられる。
●問1は、合成高分子化合物全般に関する文章正誤問題であった。さまざまな高分子化合物の構造や製法などについて覚えておく必要があった。
●問2は、ナイロン66の構造式を選ぶ基本的な問題であり、単量体の構造に関する知識が求められた。
●問3は、ポリビニルアルコールのヒドロキシ基の50%を、アセタール化したときに生成するビニロンの質量を求める計算問題であった。類似の問題について、十分に演習できていたかどうかで差がつくと考えられる。
第6問「天然高分子化合物」
●第5問との選択問題であり、出題形式は第5問とよく似ていた。全体的に内容は基本的といえるが、演習経験の有無で差がつくと考えられる。
●問1は、天然に存在する有機化合物や高分子化合物全般に関する文章正誤問題であった。大学入試センターから公表された「化学」の試作問題でみられたように、核酸についても触れられていた。
●問2は、不斉炭素原子をもつ中性アミノ酸を考える問題であった。不斉炭素原子、中性アミノ酸についての知識があれば易しい。
●問3は、六つのグルコース分子からなるシクロデキストリンを加水分解するのに必要な水の質量を求める計算問題であった。計算自体は容易だが、シクロデキストリンは見慣れない物質であり、戸惑った受験生がいたものと思われる。
●問1は、天然に存在する有機化合物や高分子化合物全般に関する文章正誤問題であった。大学入試センターから公表された「化学」の試作問題でみられたように、核酸についても触れられていた。
●問2は、不斉炭素原子をもつ中性アミノ酸を考える問題であった。不斉炭素原子、中性アミノ酸についての知識があれば易しい。
●問3は、六つのグルコース分子からなるシクロデキストリンを加水分解するのに必要な水の質量を求める計算問題であった。計算自体は容易だが、シクロデキストリンは見慣れない物質であり、戸惑った受験生がいたものと思われる。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | ― | ― | ― | ― | ― |
6.センター試験攻略のポイント
●幅広い分野からまんべんなく出題されており、教科書に記載されている基本的な事項は、確実に理解しておきたい。また、「化学基礎」の知識のみで解答できる問題もみられたため、「化学」だけでなく「化学基礎」の範囲についても、しっかりと理解しておくことが大切である。●実験や観察を題材とする問題や、探究活動を意識した問題が出題された。正しい器具の使い方なども含めて総合的な学力を要するため、実験においては各操作の目的を意識しながら取り組み、さらにレポート作成などを通じて思考力・考察力を養っておきたい。また、実験や操作に関する問題文について、その内容を注意深く読む習慣を身につけておくことが大切である。
●計算問題では、どのような条件で、何が求められているかを十分に確認して答える注意力が必要である。計算ミスによる取りこぼしをしないように、単位換算を含めて、確実な計算力を養っておきたい。
●身のまわりの物質を扱った問題が出題されている。普段から、物質の用途などについて関心を高めるとともに、科学的素養を磨いておくことも有効である。
●全体の出題範囲は異なるものの、従来の「旧化学I」と出題形式や内容が似ている問題も出題されたため、「旧化学I」で頻出であった問題を演習しておくことも効果的である。
データネット実行委員会 駿台予備学校/ベネッセコーポレーション