問題講評【化学基礎】

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1.総評

【2015年度センター試験の特徴】 

教科書の内容の定着度をはかる素直な問題が中心。難易は易しい

2大問構成であり、「旧化学I」の過去の問題を平易にしたような出題が複数みられた。物質の構成では、新課程で新たに加わった分野(電子式、分子の極性、配位結合など)からの出題があったが、物質の変化では、目新しい出題はみられなかった。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は2。全問必答。解答数は14個。
【出題形式】 語句選択問題中心に出題され、数値選択問題は3問、組合せ問題は4問であった。5〜6択の問題が中心に出題され、4択の問題が2問であった。
【出題分野】 特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
【問題量】 8ページ。
【難易】 易しい。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
物質の構成 25点 やや易
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
物質の変化 25点 やや易

4.大問別分析

第1問「物質の構成」

●問1や問3のように、「旧化学I」の過去の問題を平易にしたような出題が複数みられた。また、問4〜問6は、新課程で新たに加わった分野からの出題であった。
●問1は、単体でないものを選択する基本的な問題で、選択肢には同素体のある単体S、C、O、Pがすべて入っていた。
●問2は、さまざまな原子や単原子イオンの電子配置や価電子に関する文章正誤問題であった。各原子やイオンの電子配置が正しく理解できているかが問われた。
●問3は、物質の状態変化に関する問題で、二つの状態変化がわかれば解答できる問題であった。「旧化学I」の2010年度第1問問2の類似問題であった。
●問4は、電子式から二つの原子X、Zを求める問題であった。X、Zと異なる記号で示されているが、X、Zが同じ原子であってもよいという点が目新しい。選択肢にあるNOの電子式が書けなくて、迷う受験生がいたかもしれない。
●問5は、分子式から極性の有無を判断する問題であった。正答の二酸化炭素は典型的な無極性分子であるが、誤答のHCNは判断が難しい。
●問6は、物質を構成する化学結合に関する問題であった。選択肢に配位結合が含まれていたので、アンモニアとアンモニウムイオンを混同して迷う受験生がいたかもしれない。
●問7は、「旧化学I」と同様、日常生活に関わる物質を扱った文章正誤問題であった。典型的な物質が多いが、工業的製法に関する知識も必要で、化学基礎の全範囲の知識を網羅した出題であった。

第2問「物質の変化」

●全体的に「旧化学I」の過去の問題を平易にしたような問題が多く、新課程で新たに加わった分野からの出題はなかった。身近な物質、中和の量的関係、酸化還元の量的関係、および電池からも出題はなかった。
●問1は、同じ質量の気体について、標準状態における体積の大小関係に関する問題であった。化学式は与えられているが、段階的な思考を要するため、やや難しい。「旧化学I」の2014年度第1問問1aの類似問題であった。
●問2は、プロパンの完全燃焼の化学反応式をつくって物質量を求める問題で、化学反応式が正しく書ければ平易である。
●問3は、一定質量の水酸化ナトリウムを含む1.0Lの水溶液のモル濃度を求める計算問題であった。体積が1.0Lであるため、計算しやすい。
●問4は、酸としてはたらくものを選択する問題で、ブレンステッド・ローリーの酸・塩基の定義に関する基本的な内容であった。
●問5は、それぞれの正塩の水溶液について、pHの大小関係に関する問題であった。典型的な正塩が扱われているため考えやすい。
●問6は、酸化数が3減少した化学反応を選択する問題であった。各化学反応式中の下線を付した原子の酸化数の変化をすべて求める必要があるが、酸化数に関する基本的な内容であった。
●問7は、グラフを用いて、ある金属の原子量を求める標準的な計算問題であった。化学反応式が与えられているため取り組みやすい。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度20142013201220112010
平均点

6.センター試験攻略のポイント

●特定の分野に偏ることなく、化学基礎の全範囲から幅広く出題されるので、苦手分野をつくらない対策をしておくことが大切である。教科書に記載されている基本事項にはすみずみまで目を通し、正確に理解しておきたい。
●「旧化学I」のセンター試験でみられた内容と類似した問題も出題されるので、化学基礎の出題範囲と合致する分野について、過去問で演習をしっかり積み、確実に解く力を養っておきたい。
●今年の第1問問4のような目新しい出題もあるので、単純な知識や解き方を覚えるのではなく、問われていることの本質的な意味をよく考えながら解く習慣を身につけておきたい。
●日常生活における化学現象について、普段から物質を中心に科学的な見方をする姿勢を心がけておきたい。
●化学変化とその量的関係に関する出題がみられるため、演習を積み重ねておきたい。計算ミスによる取りこぼしもないように、単位換算を含めて、確実な計算力を養っておくことが必要である。濃度計算にも慣れておきたい。


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