問題講評【物理】

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1.総評

【2015年度センター試験の特徴】 

選択問題は熱力学と原子からの出題であった。目新しい題材が多い。難易は標準

選択問題は「熱力学」と「原子」からの出題であった。物理の全分野から幅広く出題され、物理基礎の範囲で解くことができる中問も出題された。見慣れない題材を用いた出題が多いが、問われている内容は基本的なものが多かった。難易は標準であった。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は6。第1問〜第4問が必答で、第5問・第6問から1問選択。解答数は21個。(選択問題をすべてあわせると24個)。
【出題形式】 文字式選択問題を中心に出題された。
【出題分野】 特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
【問題量】 20〜21ページ(選択する問題によって異なる)。
【難易】 標準。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
小問集合 20点 標準
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
電磁気 20点 標準 A 交流とダイオード
B サイクロトロン
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
波動 20点 やや難 A 平面波の屈折
B 水面波の干渉
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
力学 25点 標準 A 水平投射、壁との非弾性衝突
B ばねを題材にした力のつり合いと仕事
第5問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
熱力学 15点 やや易 気体の状態変化
第6問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
原子 15点 やや易 α粒子の散乱実験、ボーアの理論

4.大問別分析

第1問「小問集合」

●原子を除く物理の各分野からバランスよく出題された。
●問1は、「旧物理I」第1問の問1との共通問題であった。身近な波の現象を題材として、回折の理解を問う問題であった。波の回折を日常生活の中での現象と結び付けて理解できているかがポイントとなる。
●問2は、三つの点電荷から受ける力がつり合うときの電荷量を求める問題であった。正方形の辺の長さやクーロンの法則の比例定数を自ら設定し、立式できるかがポイントとなる。
●問3は、単振動するあらい台上に置かれた物体の運動を題材として、物体にはたらく慣性力の大きさの最大値と最大摩擦力を求める問題であった。単振動、慣性力、摩擦力といった力学の様々な力を正しく理解しているかがポイントとなる。
●問4は、理想気体の状態方程式を用いて、圧力を求める問題であった。
●問5は、「旧物理I」第1問の問6との共通問題であった。棒の一端を鉛直な壁にちょうつがいでとめ、他端と壁の一点を糸で結び、棒を固定したときの糸の張力を問う問題であった。力のモーメントのつり合いに関するオーソドックスな問題である。

第2問「電磁気」

●Aは、交流電源にダイオードと抵抗を直列に接続した回路を題材にした出題であった。
●問1は、回路中の二点の電位差と時間との関係を表すグラフを選ぶ問題であった。ダイオードの整流作用および向きに注意する必要がある。
●問2は、ダイオードによって整流された電流の消費電力の時間平均を問う問題であった。実効値の考え方を正しく理解できているかがポイントとなる。
●Bは、磁場中に置かれた二つの半円型の電極間で、荷電粒子を加速するサイクロトロンの運動を題材とした出題であった。サイクロトロンは一部の教科書では参考扱いのため、見慣れない題材に一部の受験生は戸惑ったであろう。
●問3は、サイクロトロンで加速された粒子の運動エネルギーを問う問題であった。
●問4は、磁場中の円運動を題材として、速さと円運動の半径を問う問題であった。ローレンツ力に関する運動方程式を考えればよい。この設問は、力学と電磁気の融合問題である。

第3問「波動」

●「旧物理I」第3問との共通問題であった。
●Aは、波の屈折に関する出題であった。解答に至るまでのプロセスが問題文中に示されている点が目新しい。
●問1は、異なる媒質の境界での振動数の関係を問う問題であった。問題文から振動数の関係が問われていることを読みとる必要がある。
●問2は、屈折の法則に関する出題であった。θ1は入射角、θ2は屈折角であることを読みとる必要がある。
●Bは、水面波の干渉に関する問題であった。
●問3は、逆位相の水面波が干渉によって強め合う条件を問う問題であった。
●問4は、仕切り板をずらしたときの干渉条件の変化に関する問題であった。dだけ仕切り板がずれると、経路差が2dとなり、強め合う場所が弱め合う場所となったことから、経路差2dが半波長と等しいと考えることができる。このことに気づけるかどうかがポイントであった。

第4問「力学」

●Aは、水平投射と衝突に関する出題であった。
●問1は、水平投射された小球が鉛直な壁と衝突するまでの時間を計算する問題であった。水平方向の運動にのみ着目すればよい。
●問2は、水平投射された小球が床に落下するまでの時間を計算する問題であった。壁がなめらかなので、壁との衝突前後で小球の速度の鉛直成分が変化しないことを見抜く必要がある。
●問3は、壁との衝突による力学的エネルギーの減少について問う問題であった。壁との衝突で、鉛直成分の速さは変わらないが、水平成分の速さが減少することを見極めることができるかがポイントとなる。
●Bは、「旧物理I」第4問Bとの共通問題で、二つのばねを小球の上下に取り付けたときの、小球の力のつり合いに関する問題であった。物理基礎の範囲であった。
●問4は、二つのばねの長さの和が、二つのばねの自然の長さの和と同じになるようにばねを手で固定したとき、小球の床からの高さを求める問題であった。
●問5は、小球の床からの高さがばねの自然の長さと同じになるまで小球を引き上げたとき、手がした仕事を問う問題であった。手がした仕事Wを二つのばねの長さの和yを使って表してよいことに注意する必要がある。

第5問「熱力学」

●気体の状態変化に関する出題で、断熱変化、等温変化、定圧変化に関する基礎的な知識が問われた。
●問1は、断熱変化、等温変化、定圧変化の各過程より、熱の出入りがない過程と内部エネルギーが変化しない過程をそれぞれ選ぶ問題であった。各過程の特徴を理解していれば、即答できる。
●問2は、各過程で気体が外部からされた仕事の大小関係を問う問題であった。気体が外部からされる仕事は圧力-体積グラフと横軸によって囲まれる面積を比較すればよい。
●問3は、各過程に対応した体積-温度グラフを選ぶ問題であった。体積-温度グラフは目新しく、思考力を要する問題であるため、差がつきやすい。

第6問「原子」

●原子核の発見と原子の構造の解明に関する小問集合であった。
●問1は、金箔に照射したα粒子の散乱実験の図を選ぶ問題であった。原子核に近いほどα粒子が強く散乱されることを知っていれば容易に正答できる。
●問2は、ボーアの理論の振動数条件に関する問題であった。ラザフォードの原子核の考え方とボーアの理論の違いを理解しておけば、即答できる問題である。
●問3は、ボーアの理論の量子条件に関する問題であった。プランク定数を用いた公式を理解しているかどうかがポイントとなる。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度20142013201220112010
平均点

6.センター試験攻略のポイント

●2015年度のセンター試験は、物理の幅広い範囲からバランスよく出題された。今後もこの傾向は続くと予想されるので、苦手分野をつくらないようにまんべんなく学習しておく必要がある。
●ダイオードやサイクロトロンのように見慣れない素材を用いた出題が多かった。今後も様々な素材を題材にした出題が予想される。物理現象の本質的な理解を心がけ、素材が見慣れない場合でも対応できる力を身につけておきたい。
●物理基礎の範囲で解くことができる中問が出題された。今後も物理だけでなく、物理基礎の範囲から出題されると予想されるので、物理基礎の範囲の演習もしっかり積んでおきたい。

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