問題講評【現代社会】

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1.総評

【2015年度センター試験の特徴】 

生活者視点での今日的課題から国際分野の時事的知識まで幅広い出題。難易は昨年並

 大問内や設問内で政治・経済融合の出題がみられた。分野はほぼまんべんなく出題されたが、国際分野の出題が増加した。時事的な知識や理論の正確な理解を要求する出題もみられたが、基本事項の知識を求める問題が中心であり、難易は昨年並であった。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数6、解答数36は昨年から変更なし。
【出題形式】 組合せ問題が減少(5→2)し、それ以外はすべて文章選択問題であった。6択が減少(4→1)し、8択が1問出題された以外は、4択問題の出題であった。資料の読み取り問題が昨年と同様に2問出題されたのに加えて、図を用いた問題が2問出題された。
【出題分野】 国際分野の出題が増加した。大問の中で政治・経済の融合問題が出題された。また、例年通り課題追究(調べ学習)の問題も出題された。
【問題量】 昨年並。
【難易】 昨年並。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
身近な生活における法制度 22点 標準 政治、経済
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
市場メカニズムと企業・政府 14点 標準 経済
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
地域的経済統合と政治制度 22点 標準 国際経済、政治、経済
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
公害・環境問題 14点 標準 政治、経済、諸課題
第5問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
情報化社会と青年期 14点 やや易 青年期、諸課題
第6問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
国際社会と国際機構の役割 14点 やや難 国際政治、国際経済

4.大問別分析

第1問「身近な生活における法制度」

●政治分野、経済分野からの融合的な出題。大学教員と大学生の会話文をもとに、人権、消費者、思想、課題追究(調べ学習)など幅広く出題された。
●問1は、ニートやインターンシップという用語の意味に加えて、自由権や障害者雇用促進法についての知識が求められる、分野融合的な問題であった。
●問2では、ソクラテスやアリストテレスなどの思想について問われた。基本的な知識ではあるが、思想分野の学習量で差がつく問題であった。
●問5では、日本の裁判制度について問われた。再審を想起できれば、正答を積極的に選ぶことができただろう。
●問6は、契約や企業の責任についての出題であった。PL法やクーリングオフ、コンプライアンスという基本事項の知識が問われたが、クレジットカードで支払いをすることが資金を借りることであるという表現に迷った受験生もいただろう。
●問7では、日本の法制度における男女平等や男女共同参画について問われた。男女雇用機会均等法において、昇進について差別的取扱いをしないことが、努力義務から禁止規定へと改正されたことを理解できているかがポイントであった。
●問8では、ディベートやアンケートなど課題追究(調べ学習)について出題された。頻出かつ基本的事項であり、取り組みやすい問題であった。

第2問「市場メカニズムと企業・政府」

●経済分野からの出題。身近な生活の中の市場メカニズムについてのリード文をもとに、市場や企業、政府の役割について問われた。
●問1は、企業をめぐる制度や状況についての出題であった。正答は所有(資本)と経営の分離についての基本的な知識であるが、「実権を握る」という表現や、誤答の「ベンチャー企業向けの資金調達を主な目的とする株式市場」はあまりなじみがないため、迷った受験生もいただろう。
●問2では、需要供給曲線の問題が出題された。購買意欲の高まりが需要曲線の移動を引き起こすという基本的な理論の理解が求められた。しっかりと対策をしていれば難しくない。
●問3では、日本の金融市場や労働市場に関して時事的な内容を含めて出題された。証券取引所の合併という時事的知識に加えて、労働三法の内容や金融ビッグバンについての知識も求められたため、苦戦した受験生も多かったと思われる。
●問4では、技術の進歩がもたらす影響について時事的な内容を含めて出題された。リニア中央新幹線についての知識は時事的な内容であるが、ダイオキシン汚染についての知識は基本事項であり、正答を積極的に選べただろう。
●問5では、政府の経済的役割についてのオーソドックスな内容が問われたが、理論の正確な理解が求められたため、判断に迷った受験生もいただろう。

第3問「地域的経済統合と政治制度」

●国際経済と政治・経済分野からの出題。EUにみられる地域的経済統合の特徴に関するリード文をもとに、地域的経済統合、為替、選挙・日本の政党政治など融合的に出題された。
●問1では、国家間の経済的な協力関係について出題された。地域的経済統合について、名称だけでなくその概要についてやや詳しい知識が求められた。
●問3では、為替について多角的に問われた。正答は為替に関する基本的な歴史的事項であるが、為替の理論についても扱われており、学習量で差がつく問題だろう。
●問4では、経済政策について問われた。誤答の選択肢は財政政策や金融政策の理論の理解を求めるものであったが、ポリシー・ミックスという用語の意味を理解していれば、正答を選ぶことは難しくない。
●問6では、普通選挙、平等選挙といった近代選挙の原則の意味や、比例代表制、小選挙区制といった選挙制度について問われた。基本的な知識ではあるが、選挙制度の理論を正確に理解しているかどうかがポイントであった。
●問8は、統治機構についての出題で、国会が国権の最高機関であるという平易な内容であり、確実に得点しておきたい。

第4問「公害・環境問題」

●経済分野を中心とした出題。日本の農山漁村の取り組みについてのリード文をもとに、日本の環境問題や地球環境・エネルギー問題など幅広く出題された。
●問1では、日本の地域の状況や環境問題について問われた。住民投票、環境権という政治分野の内容と、公害、一村一品運動という経済分野の内容の融合的な出題であった。
●問3は、農業就業人口の表と年齢層別の基幹的農業従事者数の図を用いた問題であった。表と図の数値を正しく読み取り、選択肢を丁寧に読んで正確に計算することが求められた。
●問4では、環境についての日本の法制度に関して問われた。正答の循環型社会形成推進基本法は基本事項であるが、誤答ではグリーン購入法などの法律の名称が表記されず、内容での判断が求められたため、迷った受験生もいただろう。
●問5では、エネルギーについて問われた。一次エネルギー、二次エネルギーというあまりなじみのない用語が扱われたが、自然エネルギー、コジェネレーション、バイオマスという用語を理解していれば、消去法で正答を選べただろう。

第5問「情報化社会と青年期」

●青年期分野・現代の諸課題からの出題。青年期、情報化社会、思想について出題された。
●問1では、マズローの欲求階層説について図を用いて出題された。欲求の名称が伏せられているが、選択肢を丁寧に読んで論理的に判断すれば、正答にたどり着けただろう。
●問2では、情報化社会をめぐる状況に関して時事的な内容を含めて出題された。一般用医薬品のインターネットを通じた販売に関する訴訟という時事的な内容が扱われたが、正答の選択肢から不正アクセス禁止法を想起できれば、積極的に正答を選べただろう。
●問3は、ソーシャルメディアサービスの利用目的について尋ねた調査結果の表の読解問題であった。単純な読み取りのため判断は容易であり、取りこぼしのできない問題であった。
●問5では、人間と社会の関係についての主張や思想に関して出題された。現代の思想家についてやや詳しい知識が求められたが、「他人指向型」という用語からリースマンを想起できれば、正答を選べただろう。

第6問「国際社会と国際機構の役割」

●国際政治分野中心の出題。国際機構の役割や人間の安全保障など幅広く出題された。
●問1では、国家に関して時事的事項を含めて出題された。パレスチナが国連総会へのオブザーバー国家としての参加資格を認められたという時事的な内容が扱われたが、正答は国家の領域に関する基本的な知識であり、正答を選ぶことは難しくない。
●問3では、NIEO樹立宣言、MDGs、OECD、ODAについて正確な知識が求められた。歴史的事項も含まれており、苦戦した受験生も多かったと思われる。
●問4では、安全保障にかかわる考え方や行動に関して出題された。いわゆる「6章半の活動」を想起できれば正答を選ぶことができるが、歴史的事項も扱われているので、判断に迷った受験生もいただろう。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度20142013201220112010
平均点 58.32 60.45 52.10 61.76 58.76

6.センター試験攻略のポイント

・教科書や資料集に記載されている事項だけでなく、時事的な内容も出題される。日頃から社会に対する関心を強く持ち、新聞記事やニュースなどを確認して社会が直面する様々な課題を理解しておくことが重要である。
・単純にキーワードだけで判断できる問題や、常識レベルで判断できる問題は少ないため、用語の内容まで正しく理解しておきたい。特に、法律や制度に関しては、内容や成立の背景まで問われることもあるので、「どのような状況で」「何を目的に」「何が定められたのか」という観点で理解し、知識を整理しておくことが必要である。
・苦手分野を残さず、まんべんなく学習しておきたい。特に、経済理論の理解を問う出題などは、用語を暗記する学習では対応できないことも多いため、仕組み・原理までおさえておくことが欠かせない。
・統計資料の問題については演習を重ねること。統計資料の問題は、高度な知識が求められているわけではないが、限られた時間のなかで素早く丁寧に情報を処理することが必要となるので、演習を行って、形式に慣れておく必要がある。

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