問題講評【政治・経済】
1.総評
- 【2015年度センター試験の特徴】
-
政治・経済の両分野から、グローバル化などを背景に幅広く問われた。難易は昨年並
基礎的かつ重要な事項が定着しているかどうかを問う出題のなかで、考察力を試す出題がみられた。空欄補充の形式が新設されたが、問われている事項は基礎的知識が中心であるため、きちんと学習を積み上げてきた受験生にとっては高得点が期待できる出題といえよう。難易は昨年並。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数5、解答数36は昨年から変更なし。第1問・第5問の一部と第3問・第4問は「倫理、政治・経済」との共通問題。 |
---|---|
【出題形式】 | 文章選択問題中心の傾向は昨年から変更なし。1行の文章選択問題が増加(6→10)し、2行の文章選択問題が減少(21→12)した。また、昨年に引き続き、統計資料や図表を用いた問題が6問出題された。 |
【出題分野】 | 今年も政治分野、経済分野、国際政治分野、国際経済分野から幅広く出題された。 |
【問題量】 | 昨年並。 |
【難易】 | 昨年並。 |
3.大問構成
第1問 | |||
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出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
国家の役割と租税負担のあり方 | 28点 | 標準 | 政治分野・経済分野 |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
経済的リスクとセーフティネット | 17点 | 標準 | 経済分野 |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
日本国憲法と人権 | 19点 | 標準 | 政治分野 |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
スポーツ・イベントと経済 | 19点 | 標準 | 国際政治分野・国際経済分野 |
第5問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
人の国際移動の多様性 | 17点 | 標準 | 政治分野・国際政治分野・国際経済分野 |
4.大問別分析
第1問「国家の役割と租税負担のあり方」
●以下【共通】とあるものは、「倫理、政治・経済」との共通問題であることを示す。
●政治分野・経済分野からの出題。社会保障における租税負担のあり方について、税制改革の視点から政治・経済ともに広く問われた。
●問1は、ホッブズが主張した「自然状態」について問われた。社会契約説の代表的な思想家であるホッブズについての基礎的な問題。迷わず正答を選べた受験生も多かったであろう。
●問2は、日本の裁判所について問われた。日本国憲法の条文を正確に理解しておくことが求められた。
●【共通】問3は、寡占市場の特徴について問われた。カルテルについて理解できていれば、平易であった。
●問4は、日本の教育に関する制度について問われた。義務教育の無償について定めた日本国憲法の条文を理解している受験生であれば、正答を選べる問題であった。
●問5は、日本の財政をめぐる出来事について古い順に並べたとき、3番目にくる選択肢を選ぶ問題。「消費税導入」「地方分権一括法」「シャウプ勧告」「赤字国債(特例国債)」という手がかりとなる語句から、それぞれの選択肢がどの時期であるかを想起することがポイントであった。
●【共通】問6は、日本の国家予算について問われた。特別会計の予算作成について理解していれば積極的に判断できた。
●【共通】問7は、社会保障給付の対GDP比と社会保障の財源構成の資料から、日本、イギリス、ドイツの判断が問われた。ドイツは高福祉国で保険料中心の財源構成であるため判断しやすい。BとCのうち財源構成が三等分に最も近いのが日本と判断できるかどうかがポイントであった。
●問8は、消費税が5%から10%に引き上げられたときの、負担者とその負担額について問われた。問われている内容は難しくはないが、増税が実施される前後の状況を示した図を理解するまでに、時間を要した受験生が多かったかもしれない。
●問9は、所得を把握するための諸指標について問われた。国民所得の諸指標の内訳をきちんと理解しておくことが求められた。
●問10は、直接民主制の理念に基づくものについて、実際の事例から考察する問題。直接民主制がどのようなものであるのかを想起したうえで、それぞれの事例が該当するかを確認していけば、難しくはない。
●政治分野・経済分野からの出題。社会保障における租税負担のあり方について、税制改革の視点から政治・経済ともに広く問われた。
●問1は、ホッブズが主張した「自然状態」について問われた。社会契約説の代表的な思想家であるホッブズについての基礎的な問題。迷わず正答を選べた受験生も多かったであろう。
●問2は、日本の裁判所について問われた。日本国憲法の条文を正確に理解しておくことが求められた。
●【共通】問3は、寡占市場の特徴について問われた。カルテルについて理解できていれば、平易であった。
●問4は、日本の教育に関する制度について問われた。義務教育の無償について定めた日本国憲法の条文を理解している受験生であれば、正答を選べる問題であった。
●問5は、日本の財政をめぐる出来事について古い順に並べたとき、3番目にくる選択肢を選ぶ問題。「消費税導入」「地方分権一括法」「シャウプ勧告」「赤字国債(特例国債)」という手がかりとなる語句から、それぞれの選択肢がどの時期であるかを想起することがポイントであった。
●【共通】問6は、日本の国家予算について問われた。特別会計の予算作成について理解していれば積極的に判断できた。
●【共通】問7は、社会保障給付の対GDP比と社会保障の財源構成の資料から、日本、イギリス、ドイツの判断が問われた。ドイツは高福祉国で保険料中心の財源構成であるため判断しやすい。BとCのうち財源構成が三等分に最も近いのが日本と判断できるかどうかがポイントであった。
●問8は、消費税が5%から10%に引き上げられたときの、負担者とその負担額について問われた。問われている内容は難しくはないが、増税が実施される前後の状況を示した図を理解するまでに、時間を要した受験生が多かったかもしれない。
●問9は、所得を把握するための諸指標について問われた。国民所得の諸指標の内訳をきちんと理解しておくことが求められた。
●問10は、直接民主制の理念に基づくものについて、実際の事例から考察する問題。直接民主制がどのようなものであるのかを想起したうえで、それぞれの事例が該当するかを確認していけば、難しくはない。
第2問「経済的リスクとセーフティネット」
●経済分野からの出題。セーフティネットをめぐる市場の問題や労働問題などの社会問題について問われた。
●問1は、経済のグローバル化について問われた。「間接投資」「コングロマリット」などの用語の内容を正確に理解できていない受験生は判断に迷ったかもしれない。
●問2は、セーフティネットの日本における事例について問われた。ペイオフ制度では「1000万円とその利息を限度に保証される」ということが理解できていれば、正答を判断することは難しくはない。
●問3は、市場の動向や景気の変動について問われた。クズネッツの波やコンドラチェフの波の定義について、それぞれの違いを整理しておくことが求められた。
●問4は、労働に関する法律について問われた。労働組合法、労働基準法、労働関係調整法の内容は基礎的事項であり、法律の内容を正確に理解できていれば、正答を導くことができた。
●問5は、日本における正規雇用者と非正規雇用者の数の推移を示したグラフから、男女の正規雇用・非正規雇用に該当するグラフを選ぶ問題。男性の正規雇用・非正規雇用については迷わず判断できたと考えられるが、女性の正規雇用・非正規雇用については迷った受験生もいたかもしれない。派遣労働に関する法律などと関連づけて、日本の労働市場の現状を理解しておく力が求められた。
●問6は、1980年代半ばと2000年代半ばにおける各国の貧困率と所得再分配の効果について問われた。表に示された数値を、選択肢と照らし合わせながら確認していくことで正答にたどり着ける。1の選択肢はどの項目を比較すればよいのか戸惑った受験生もいたであろう。
●問1は、経済のグローバル化について問われた。「間接投資」「コングロマリット」などの用語の内容を正確に理解できていない受験生は判断に迷ったかもしれない。
●問2は、セーフティネットの日本における事例について問われた。ペイオフ制度では「1000万円とその利息を限度に保証される」ということが理解できていれば、正答を判断することは難しくはない。
●問3は、市場の動向や景気の変動について問われた。クズネッツの波やコンドラチェフの波の定義について、それぞれの違いを整理しておくことが求められた。
●問4は、労働に関する法律について問われた。労働組合法、労働基準法、労働関係調整法の内容は基礎的事項であり、法律の内容を正確に理解できていれば、正答を導くことができた。
●問5は、日本における正規雇用者と非正規雇用者の数の推移を示したグラフから、男女の正規雇用・非正規雇用に該当するグラフを選ぶ問題。男性の正規雇用・非正規雇用については迷わず判断できたと考えられるが、女性の正規雇用・非正規雇用については迷った受験生もいたかもしれない。派遣労働に関する法律などと関連づけて、日本の労働市場の現状を理解しておく力が求められた。
●問6は、1980年代半ばと2000年代半ばにおける各国の貧困率と所得再分配の効果について問われた。表に示された数値を、選択肢と照らし合わせながら確認していくことで正答にたどり着ける。1の選択肢はどの項目を比較すればよいのか戸惑った受験生もいたであろう。
第3問「日本国憲法と人権」
●経済分野からの出題。日本国憲法の解釈と人権についての会話文から、民法、人権の拡大など、法を中心に政治に関する知識が幅広く問われた。
●【共通】問1は、会話文のなかの空欄補充の形式で、民法の規定について問われた。非嫡出子の相続に関する2013年の違憲判決を理解していれば判断できた。
●【共通】問2は、権利の拡大および救済のための制度をめぐって日本で取り組まれたことについて問われた。児童福祉法、公害健康被害補償法、アイヌ文化振興法、2013年の障害者の権利に関する条約への批准と、時事的な事項の理解も求められた。
●【共通】問4は、社会権について問われた。「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」から、判断は容易であった。
●【共通】問5は、統治機構に対する日本での監督や抑制のための制度について問われた。検察審査会は国会議員ではなく国民から選出されていることを理解していれば判断できた。
●【共通】問6は、ポジティブアクション(アファーマティブアクション)として適当な事例が問われた。設問文では「ポジティブアクション(アファーマティブアクション)」のことばが使用されていないため、題意の把握が難しかった受験生もいたと思われるが、内容は確実に理解しておきたい。
●【共通】問7は、日本の国家公務員や地方公務員について問われた。副知事や副市長の解職など、直接請求権について理解していれば判断できた。
●【共通】問1は、会話文のなかの空欄補充の形式で、民法の規定について問われた。非嫡出子の相続に関する2013年の違憲判決を理解していれば判断できた。
●【共通】問2は、権利の拡大および救済のための制度をめぐって日本で取り組まれたことについて問われた。児童福祉法、公害健康被害補償法、アイヌ文化振興法、2013年の障害者の権利に関する条約への批准と、時事的な事項の理解も求められた。
●【共通】問4は、社会権について問われた。「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」から、判断は容易であった。
●【共通】問5は、統治機構に対する日本での監督や抑制のための制度について問われた。検察審査会は国会議員ではなく国民から選出されていることを理解していれば判断できた。
●【共通】問6は、ポジティブアクション(アファーマティブアクション)として適当な事例が問われた。設問文では「ポジティブアクション(アファーマティブアクション)」のことばが使用されていないため、題意の把握が難しかった受験生もいたと思われるが、内容は確実に理解しておきたい。
●【共通】問7は、日本の国家公務員や地方公務員について問われた。副知事や副市長の解職など、直接請求権について理解していれば判断できた。
第4問「スポーツ・イベントと経済」
●国際経済・国際政治分野からの出題。オリンピックの開催と経済の関係をテーマに、経常収支、BRICSなどが問われた。
●【共通】問1は、2008年の出来事が問われた。サブプライムローンの時期の判断に迷った受験生がいただろう。日本がTPPの交渉に参加したことなど時事的な知識も求められた。
●【共通】問2は、経常収支について問われた。国際収支の内容が問われたため、戸惑った受験生がいたかもしれない。
●【共通】問4は、日本、韓国、中国、ブラジルのGDPの実質成長率のグラフからブラジルを判断する問題。Aは高い成長率が続く中国、Cは1998年の大きな落ち込みからアジア通貨危機の影響を受けた韓国、Dはバブル経済崩壊後低成長が続く日本で、消去法で判断できる。
●【共通】問6は、企業活動のグローバル化について問われた。多国籍企業の売上高と日本のGDPの規模を把握していれば判断できる。
●【共通】問7は、人件費が上昇したときの需給曲線の動きが問われた。設問文から人件費が上昇したときという場合を判断し、コストの上昇によって供給曲線が需要曲線に沿って左上に移動することの理解が求められた。
●【共通】問1は、2008年の出来事が問われた。サブプライムローンの時期の判断に迷った受験生がいただろう。日本がTPPの交渉に参加したことなど時事的な知識も求められた。
●【共通】問2は、経常収支について問われた。国際収支の内容が問われたため、戸惑った受験生がいたかもしれない。
●【共通】問4は、日本、韓国、中国、ブラジルのGDPの実質成長率のグラフからブラジルを判断する問題。Aは高い成長率が続く中国、Cは1998年の大きな落ち込みからアジア通貨危機の影響を受けた韓国、Dはバブル経済崩壊後低成長が続く日本で、消去法で判断できる。
●【共通】問6は、企業活動のグローバル化について問われた。多国籍企業の売上高と日本のGDPの規模を把握していれば判断できる。
●【共通】問7は、人件費が上昇したときの需給曲線の動きが問われた。設問文から人件費が上昇したときという場合を判断し、コストの上昇によって供給曲線が需要曲線に沿って左上に移動することの理解が求められた。
第5問「人の国際移動の多様性」
●政治分野・国際政治分野・国際経済分野からの出題。人の移動の多様性を切り口として、国際政治や日本国憲法、環境問題など幅広く問われた。
●問1は、本文の趣旨を踏まえた空欄補充問題。本文の趣旨から正答を導くという形式に戸惑った受験生がいたかもしれないが、空欄周辺の文章を注意して読むことで正答を選べた。
●問2は、地球環境に関する国際会議について問われた。環境に関する国際会議について正確に理解しておく力が求められた。
●問3は、国籍について日本国憲法が明文で定めている内容について問われた。日頃から日本国憲法の条文を確認しているかどうかで差がついたと思われる。
●問4は、日本が加入している人権条約について問われた。日本において死刑制度が廃止されていないことから、日本は1の死刑廃止条約を批准していないと判断できる。
●問5は、国際慣習法について問われた。国際慣習法で輸入品に関税を課すことが禁じられているかどうかの判断に迷ったかもしれないが、貿易において関税が課されていることが想起できれば、正答を選ぶことができた。
●問1は、本文の趣旨を踏まえた空欄補充問題。本文の趣旨から正答を導くという形式に戸惑った受験生がいたかもしれないが、空欄周辺の文章を注意して読むことで正答を選べた。
●問2は、地球環境に関する国際会議について問われた。環境に関する国際会議について正確に理解しておく力が求められた。
●問3は、国籍について日本国憲法が明文で定めている内容について問われた。日頃から日本国憲法の条文を確認しているかどうかで差がついたと思われる。
●問4は、日本が加入している人権条約について問われた。日本において死刑制度が廃止されていないことから、日本は1の死刑廃止条約を批准していないと判断できる。
●問5は、国際慣習法について問われた。国際慣習法で輸入品に関税を課すことが禁じられているかどうかの判断に迷ったかもしれないが、貿易において関税が課されていることが想起できれば、正答を選ぶことができた。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 53.85 | 55.46 | 57.99 | 58.97 | 59.16 |
6.センター試験攻略のポイント
●問われている内容は、各分野の基本的な用語の理解と、原理・原則が中心である。まずは、基本的な知識を確実におさえたうえで、論理的に考察する力を身につけておきたい。実際の事例にあてはめて考察する力も求められるため、原理・原則を暗記するのではなく、根本的な考え方や仕組みの理解が必要である。●近年、資料問題は6〜8題出題されている。単純な読み取り問題だけではなく、背景となる知識と関連付けて考察する問題も出題されている。日頃から、多くの問題にあたり、教科書で習った知識を応用できるようにしておきたい。
●教科書だけではなく、資料集の知識や、時事的な事項についての知識も求められるので、新聞・テレビの特集記事・報道には十分な関心を持っておく必要がある。時事的な事項と教科書で習った知識を関連させて理解しておきたい。
●年代を正確に判断させる問題も多く出題されるため、政治や経済について教科書で学習する際には、出来事と年代を関連づけて理解しておきたい。
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