問題講評【倫理】
1.総評
- 【2015年度センター試験の特徴】
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文章資料の読解が今年も重視され、思想の深い理解を求める出題もみられた。昨年より難化
基本事項が中心であったが、思想のより深い理解が問われた出題もみられた。また、読解力が今年も重視された。組合せ問題は昨年よりさらに増加し、うち2問は3つの選択肢から正しい組合せを選ぶ7択の問題であった。昨年より難化。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数4、解答数37は昨年から変更なし。すべての大問で「倫理、政治・経済」との共通の小問が出題された。 |
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【出題形式】 | 昨年から大きな変化はないが、組合せ問題は昨年よりさらに増加(11→12)、うち2問は3つの選択肢から正しい組合せを選ぶ7択であった。また、8択の問題が7問出題された。 |
【出題分野】 | 昨年同様、現代の諸課題分野が青年期分野と合わせて第1問で出題された。特定の分野に偏ることなく、幅広く出題され、現代の思想家では、ロールズ、レヴィ=ストロース、ホルクハイマー、アドルノなどが出題された。 |
【問題量】 | ほぼ昨年並。 |
【難易】 | 昨年より難化。 |
3.大問構成
第1問 | |||
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出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
正義と理想 | 28点 | やや難 | 青年期・現代の諸課題・西洋思想 |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
言葉の限界について | 24点 | 標準 | 源流思想 |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
困難を乗り越える学び | 24点 | 標準 | 日本思想 |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
理性に対する評価の変遷 | 24点 | やや難 | 西洋思想 |
4.大問別分析
第1問「正義と理想」(青年期・現代の諸課題・西洋思想)
●以下【共通】とあるものは、「倫理、政治・経済」との共通問題であることを示す。
●小学校卒業時のタイムカプセルを10年後に開ける友人の会話文から、青年期分野が1問、現代の諸課題分野が2問、西洋思想が4問、分野融合問題が1問、統計資料問題が1問、リード文の趣旨問題が1問出題された。現代の諸課題分野では、環境問題や異文化理解、人類の福祉や現代日本の社会問題について幅広く問われた。
●【共通】問1は、現代社会における環境・平和・文化についての基本的な知識が問われた。地球サミットに関する基本的な知識があれば、積極的に判断できる。
●【共通】問2は、レヴィンの「マージナル・マン」についての基本的な理解が問われており、平易であった。
●問3は、思想と心理学の分野が融合した組合せ問題。アのジェームズ、イのユングはキーワードで判断できるが、ウのエリクソンの「役割実験」はあまりなじみがなく、学習が及んでいない受験生も多かったのではないかと思われる。難しい問題であった。
●問4は、ショーペンハウアー、スペンサー、ヴォルテールの思想を問う組合せ問題。アは「世界史を『自由の意識の進歩』と捉え」からヘーゲル、ウの「階級闘争」「革命」からマルクスと判断できたかどうかがポイント。
●【共通】問5は、大問テーマに沿った「正義」の捉え方についての文章空欄補充の組合せ問題。古代ギリシアの四元徳、近代ヨーロッパのミル、現代のロールズと幅広い時代の思想家について問われた。ロールズが功利主義を批判し社会契約説を現代に復活させたことをおさえているかどうかがポイントであった。
●問6は、現代日本の社会問題について、生命倫理、環境倫理、家族・地域社会の分野から幅広く問われた基本問題。正答の選択肢の「拡大家族が増加」に気づけたかどうかがポイントで、選択肢を最後まで確実に読むことが求められた。
●【共通】問7は、「幸せ」および「不安や悩み」についての統計を読解して述べた意見が選択肢となった問題。受験生にとって目新しい形式であった。Aは集団の統計であるにもかかわらず小学校5年生の子どもの動きを想定すること自体が誤りであったため、Aの判断に迷った受験生もいたであろう。
●【共通】問8は、カミュの資料読み取り問題。資料文を正確に読み取っていけば難しくない。
●問9は、責任や責務について、マキァヴェリ、ウェーバー、エラスムス、ガリレイの思想を問う問題。それぞれの人物の思想や事績がおさえられていれば正答を導くことができる。
●問10は、リード文の内容に合致する記述を判断する問題。各選択肢が5行と長いが、リード文中の登場人物AとBのそれぞれの発言を丁寧に読み取っていけば正答できる。
●小学校卒業時のタイムカプセルを10年後に開ける友人の会話文から、青年期分野が1問、現代の諸課題分野が2問、西洋思想が4問、分野融合問題が1問、統計資料問題が1問、リード文の趣旨問題が1問出題された。現代の諸課題分野では、環境問題や異文化理解、人類の福祉や現代日本の社会問題について幅広く問われた。
●【共通】問1は、現代社会における環境・平和・文化についての基本的な知識が問われた。地球サミットに関する基本的な知識があれば、積極的に判断できる。
●【共通】問2は、レヴィンの「マージナル・マン」についての基本的な理解が問われており、平易であった。
●問3は、思想と心理学の分野が融合した組合せ問題。アのジェームズ、イのユングはキーワードで判断できるが、ウのエリクソンの「役割実験」はあまりなじみがなく、学習が及んでいない受験生も多かったのではないかと思われる。難しい問題であった。
●問4は、ショーペンハウアー、スペンサー、ヴォルテールの思想を問う組合せ問題。アは「世界史を『自由の意識の進歩』と捉え」からヘーゲル、ウの「階級闘争」「革命」からマルクスと判断できたかどうかがポイント。
●【共通】問5は、大問テーマに沿った「正義」の捉え方についての文章空欄補充の組合せ問題。古代ギリシアの四元徳、近代ヨーロッパのミル、現代のロールズと幅広い時代の思想家について問われた。ロールズが功利主義を批判し社会契約説を現代に復活させたことをおさえているかどうかがポイントであった。
●問6は、現代日本の社会問題について、生命倫理、環境倫理、家族・地域社会の分野から幅広く問われた基本問題。正答の選択肢の「拡大家族が増加」に気づけたかどうかがポイントで、選択肢を最後まで確実に読むことが求められた。
●【共通】問7は、「幸せ」および「不安や悩み」についての統計を読解して述べた意見が選択肢となった問題。受験生にとって目新しい形式であった。Aは集団の統計であるにもかかわらず小学校5年生の子どもの動きを想定すること自体が誤りであったため、Aの判断に迷った受験生もいたであろう。
●【共通】問8は、カミュの資料読み取り問題。資料文を正確に読み取っていけば難しくない。
●問9は、責任や責務について、マキァヴェリ、ウェーバー、エラスムス、ガリレイの思想を問う問題。それぞれの人物の思想や事績がおさえられていれば正答を導くことができる。
●問10は、リード文の内容に合致する記述を判断する問題。各選択肢が5行と長いが、リード文中の登場人物AとBのそれぞれの発言を丁寧に読み取っていけば正答できる。
第2問「言葉の限界について」(源流思想)
●「言葉の限界」をテーマとしたリード文から、源流思想について基本的な事項を中心に網羅的に出題された。
●【共通】問1は、『論語』にあることばを問う問題。「智慧出でて大偽あり。」は老子であるが、他が判断しやすく消去法で解答できる。
●問2は、荘子の「道」についての基本的な問題。迷わず正答を選びたい。
●問3は、イスラーム教についての問題。イスラーム教が偶像崇拝を禁止していることや、ムハンマドが「最後で最大の預言者」であると理解できていれば、正答が選べる。
●問4は、キリスト教についての文章空欄補充の組合せ問題。「出エジプト記」から十戒、『告白』からアウグスティヌスが判断できる。
●【共通】問5は、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教の聖典とその内容についての問題。「その掟を全うすることによって罪を贖う者は救われる」「それぞれに実践すべき規律」の判断に迷った受験生もいただろう。各宗教について正確な理解が求められた。
●問6は、イデア論を批判したアリストテレスについての問題。正答の選択肢の「個々の具体的な事物こそ探究の対象とすべき」の判断に迷った受験生もいただろう。アリストテレスの思想の正確な理解が求められた。
●【共通】問7は、プラトン『パイドロス』の資料読み取り問題。資料を丁寧に読んでいけば難しくない。
●【共通】問8は、ブッダの四諦についての正確な理解が求められた。
●問9は、リード文の趣旨を問う問題。リード文の内容から判断は容易であった。
●【共通】問1は、『論語』にあることばを問う問題。「智慧出でて大偽あり。」は老子であるが、他が判断しやすく消去法で解答できる。
●問2は、荘子の「道」についての基本的な問題。迷わず正答を選びたい。
●問3は、イスラーム教についての問題。イスラーム教が偶像崇拝を禁止していることや、ムハンマドが「最後で最大の預言者」であると理解できていれば、正答が選べる。
●問4は、キリスト教についての文章空欄補充の組合せ問題。「出エジプト記」から十戒、『告白』からアウグスティヌスが判断できる。
●【共通】問5は、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教の聖典とその内容についての問題。「その掟を全うすることによって罪を贖う者は救われる」「それぞれに実践すべき規律」の判断に迷った受験生もいただろう。各宗教について正確な理解が求められた。
●問6は、イデア論を批判したアリストテレスについての問題。正答の選択肢の「個々の具体的な事物こそ探究の対象とすべき」の判断に迷った受験生もいただろう。アリストテレスの思想の正確な理解が求められた。
●【共通】問7は、プラトン『パイドロス』の資料読み取り問題。資料を丁寧に読んでいけば難しくない。
●【共通】問8は、ブッダの四諦についての正確な理解が求められた。
●問9は、リード文の趣旨を問う問題。リード文の内容から判断は容易であった。
第3問「困難を乗り越える学び」(日本思想)
●「学び」をテーマに、日本思想が網羅的に出題された。
●【共通】問1は、古代人の信仰と国学について問われた。本居宣長の「真心」と迷った受験生がいたかもしれない。
●【共通】問2は、最澄について問う問題。奈良時代の仏教および平安時代の仏教について正確に理解できていれば判断は難しくない。
●問3は、親鸞、道元、日蓮の思想の組合せ問題。開祖である彼らの思想について、それぞれの選択肢にはキーワードが入っているが、その正確な理解が問われた。
●問4は、荻生徂徠の著作を選ぶ問題。『聖教要録』や『論語古義』で迷った受験生もいたのではないか。
●問5は、近世の文芸や思想についての出題。近松門左衛門、井原西鶴、山本常朝、契沖についてのより深い知識が求められた。
●【共通】問6は、江戸時代の思想とその思想家の組合せ問題。各文に「上下定分の理」「自然世」「天道と人道」などの基本的な用語が含まれているため、林羅山、安藤昌益、二宮尊徳の判断は平易であった。
●問7は、福沢諭吉の『学問のすゝめ』の資料読み取り問題。諭吉の「懐疑の精神」についての理解が求められた。資料文を読み取ることが受験生には難しかったかもしれないが、丁寧に読んでいけば正答が判断できる。
●【共通】問8は、自己や社会について、西田幾多郎、柳宗悦、柳田国男、丸山真男の思想を問う問題。それぞれの人物について正確な理解が求められた。
●【共通】問9は、本文の趣旨を問う問題。本文の論旨が明確で、平易であった。
●【共通】問1は、古代人の信仰と国学について問われた。本居宣長の「真心」と迷った受験生がいたかもしれない。
●【共通】問2は、最澄について問う問題。奈良時代の仏教および平安時代の仏教について正確に理解できていれば判断は難しくない。
●問3は、親鸞、道元、日蓮の思想の組合せ問題。開祖である彼らの思想について、それぞれの選択肢にはキーワードが入っているが、その正確な理解が問われた。
●問4は、荻生徂徠の著作を選ぶ問題。『聖教要録』や『論語古義』で迷った受験生もいたのではないか。
●問5は、近世の文芸や思想についての出題。近松門左衛門、井原西鶴、山本常朝、契沖についてのより深い知識が求められた。
●【共通】問6は、江戸時代の思想とその思想家の組合せ問題。各文に「上下定分の理」「自然世」「天道と人道」などの基本的な用語が含まれているため、林羅山、安藤昌益、二宮尊徳の判断は平易であった。
●問7は、福沢諭吉の『学問のすゝめ』の資料読み取り問題。諭吉の「懐疑の精神」についての理解が求められた。資料文を読み取ることが受験生には難しかったかもしれないが、丁寧に読んでいけば正答が判断できる。
●【共通】問8は、自己や社会について、西田幾多郎、柳宗悦、柳田国男、丸山真男の思想を問う問題。それぞれの人物について正確な理解が求められた。
●【共通】問9は、本文の趣旨を問う問題。本文の論旨が明確で、平易であった。
第4問「理性に対する評価の変遷」(西洋思想)
●西洋近代思想における理性に対する評価の変遷をテーマに、西洋思想のルネサンス、ベーコン、社会主義、コント、ルソー、カント、レヴィ=ストロース、ホルクハイマーとアドルノなどについて出題された。
●問1は、ルネサンス期についての基本問題。迷わず正答を選びたい。
●【共通】問2は、ベーコンの著作と思想についての問題。誤答選択肢がニュートン、モンテーニュの内容であり、平易であった。
●【共通】問3は、空想的社会主義についての問題。オーウェン、フーリエ、バーナード・ショウに関して、「ニューハーモニー村」「ファランジュ」「フェビアン協会」などから判断できる。
●【共通】問4は、コントの思想についての問題。「創造的知性」「実存が本質に先立ち」「絶対精神」などからデューイ、サルトル、ヘーゲルであることが判断でき、近代西洋思想の人物の基本的な知識・理解が求められた。
●問5は、ルソーの思想についての問題。誤答選択肢に「文明社会」「自然」などの語句が入っており、受験生は迷ったかもしれないが、正答の選択肢にはルソーのキーワードである「一般意志」があり、積極的に選べる。
●【共通】問6は、カントの批判哲学についての問題。「感性」と「悟性」の判断に迷った受験生がいたであろう。
●問7は、レヴィ=ストロースの思想を問う組合せ問題。3つの選択肢から正しい組合せを選ぶ7択で出題された。レヴィ=ストロースの思想がさまざまな側面から示されていて、より深い知識が求められており、受験生には難しかったと思われる。
●問8は、ホルクハイマーとアドルノの『啓蒙の弁証法』の資料読み取り問題。資料をまんべんなく読んで、論理展開をおさえる必要があり、表面的な理解では対処できない問題であった。
●【共通】問9は、リード文の趣旨を問う問題。リード文を丁寧に読めば、正答が判断できる。
●問1は、ルネサンス期についての基本問題。迷わず正答を選びたい。
●【共通】問2は、ベーコンの著作と思想についての問題。誤答選択肢がニュートン、モンテーニュの内容であり、平易であった。
●【共通】問3は、空想的社会主義についての問題。オーウェン、フーリエ、バーナード・ショウに関して、「ニューハーモニー村」「ファランジュ」「フェビアン協会」などから判断できる。
●【共通】問4は、コントの思想についての問題。「創造的知性」「実存が本質に先立ち」「絶対精神」などからデューイ、サルトル、ヘーゲルであることが判断でき、近代西洋思想の人物の基本的な知識・理解が求められた。
●問5は、ルソーの思想についての問題。誤答選択肢に「文明社会」「自然」などの語句が入っており、受験生は迷ったかもしれないが、正答の選択肢にはルソーのキーワードである「一般意志」があり、積極的に選べる。
●【共通】問6は、カントの批判哲学についての問題。「感性」と「悟性」の判断に迷った受験生がいたであろう。
●問7は、レヴィ=ストロースの思想を問う組合せ問題。3つの選択肢から正しい組合せを選ぶ7択で出題された。レヴィ=ストロースの思想がさまざまな側面から示されていて、より深い知識が求められており、受験生には難しかったと思われる。
●問8は、ホルクハイマーとアドルノの『啓蒙の弁証法』の資料読み取り問題。資料をまんべんなく読んで、論理展開をおさえる必要があり、表面的な理解では対処できない問題であった。
●【共通】問9は、リード文の趣旨を問う問題。リード文を丁寧に読めば、正答が判断できる。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 60.87 | 58.83 | 69.01 | 69.42 | 68.66 |
6.センター試験攻略のポイント
●例年、思想家や思想の内容理解を問う出題が中心なので、重要語句は用語だけでなく、その意味内容までおさえる学習を徹底しておきたい。その上で、相違点や共通点、思想史的な流れもおさえておくと、効果的である。●また、思想家の生きた時代背景や本人のエピソードなどをおさえておくと解答しやすい場合もあるので、思想と合わせて把握するように心がけたい。
●資料読解問題は例年出題される。読解力・論理的思考力を問う問題は慣れることが必要なので、類題演習を積んでおきたい。また、古文の読解は慣れが必要なので、資料にあたっておくなど、対策を講じておきたい。
●リード文の読解や3行以上の長い選択肢についての正誤判断も求められる。国語的な側面も含め、選択肢の正誤判断を時間をかけすぎずに、すばやくできるように演習を積んでおきたい。
●現代の思想家は、構造主義・ポストモダン・フランクフルト学派の思潮や、丸山真男など、注目度の高い人物を一通りおさえておきたい。
●現代の諸課題については、「倫理」の枠にとらわれずに学習することが必要である。教科書・資料集レベルのキーワードは一通りおさえておきたい。日ごろから新聞やニュースにふれ、生命倫理や環境問題、家族や地域社会の課題などについて、制度面の動きや課題のポイントなどを把握しておきたい。
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