問題講評【地理B】
1.総評
- 【2015年度センター試験の特徴】
-
例年通りの出題で、多様な資料を用いた地理的考察力が求められた。昨年より難化
多様な資料を扱う問題が主であったが、昨年よりも知識を要求する問題が増加したため、全体的な難易は昨年より難化した。特に、第3問「都市と村落」では、他の大問に比べて扱われた図・表の数が少なく、地理的な見方・考え方よりも正確な知識が要求された。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数6、解答数36で昨年から変更なし。第6問が地理Aとの共通問題。 |
---|---|
【出題形式】 | 地図、地形図、統計表など、例年通り多様な資料が扱われ、地理的考察力が求められた。解答形式では、組合せ問題が17個から11個に、6択問題が15個から10個に減少した。 |
【出題分野】 | 「自然環境分野」「産業分野」を中心に、例年通り「都市と村落」「地誌」「現代世界の諸課題」「地域調査」からの出題構成。産業分野は農業に特化した出題となった。 |
【問題量】 | 昨年並。 |
【難易】 | 昨年より難化。 |
3.大問構成
第1問 | |||
---|---|---|---|
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
「世界の自然環境と自然災害」 | 16点 | 標準 | 地形、気候、土壌、自然災害 |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
「世界の農業」 | 17点 | 標準 | 小麦の生産量の推移、プランテーション作物、労働生産性と土地生産性、アメリカ合衆国の農業、農産物貿易・流通、農業政策 |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
「都市と村落」 | 17点 | 標準 | 都市の立地、プライメートシティ、街路形態、建築物と都市の発達過程、日本の農山村地域、人口移動 |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
「南アメリカの地誌」 | 17点 | 標準 | 自然環境、農牧業、都市、貿易、生活・文化 |
第5問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
「現代世界の諸課題」 | 16点 | やや難 | 医療・健康、人口、都市、環境 |
第6問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
「北海道富良野市とその周辺地域の地域調査」 | 17点 | やや易 | 地域調査 |
4.大問別分析
第1問「世界の自然環境と自然災害」
●世界の自然環境と自然災害を扱った出題であり、標準的な内容が多かった。
●問2は、地図中の二本の経線に沿った観測地点の月降水量が扱われた。赤道低圧帯の移動やモンスーンによる降水量の変化をおさえておくことが解答のポイントであったため、それぞれの経線上の気候をしっかりと理解できていない受験生にとっては、判断が難しかったであろう。複数の図の情報を統合させて考える力が求められた。
●問5は、メサ・ビュートとタワーカルストを扱った問題である。それぞれの地形の語句だけでなく形成過程まで合わせて理解することができていれば難しくはなかったであろう。
●問6は、世界の自然災害の発生数が扱われた問題であり、ニュースなどで取り上げられている話題でもあったため、受験生にとっては取り組みやすかったであろう。発生した位置だけでは、地震・津波と火山噴火を読み違えるかもしれないが、災害の発生件数に着目すると、他の災害に比べ発生件数の少ないものを火山噴火と判断できる。地点情報だけではなく、地図中に示された数値情報についても注目できたかが正答を導くポイントとなった。図中の数値情報にも、解答する上でのカギが盛り込まれているため、日ごろの演習から注意しておきたい。
●問2は、地図中の二本の経線に沿った観測地点の月降水量が扱われた。赤道低圧帯の移動やモンスーンによる降水量の変化をおさえておくことが解答のポイントであったため、それぞれの経線上の気候をしっかりと理解できていない受験生にとっては、判断が難しかったであろう。複数の図の情報を統合させて考える力が求められた。
●問5は、メサ・ビュートとタワーカルストを扱った問題である。それぞれの地形の語句だけでなく形成過程まで合わせて理解することができていれば難しくはなかったであろう。
●問6は、世界の自然災害の発生数が扱われた問題であり、ニュースなどで取り上げられている話題でもあったため、受験生にとっては取り組みやすかったであろう。発生した位置だけでは、地震・津波と火山噴火を読み違えるかもしれないが、災害の発生件数に着目すると、他の災害に比べ発生件数の少ないものを火山噴火と判断できる。地点情報だけではなく、地図中に示された数値情報についても注目できたかが正答を導くポイントとなった。図中の数値情報にも、解答する上でのカギが盛り込まれているため、日ごろの演習から注意しておきたい。
第2問「世界の農業」
●産業の中でも世界の農業に特化した出題であった。全体的に標準的な内容で、基本的な知識を習得しておけば正答を導くことができるであろう。
●問2は、茶、天然ゴム、パーム油の生産量上位5か国と、各国の生産量が世界に占める割合を扱った問題であった。順位だけに着目すると天然ゴムとパーム油の判断に迷うが、マレーシアは天然ゴムからアブラヤシへの植え替えが進んでいるため、指標中に占めるマレーシアの割合が大きいアがパーム油と判断できる。
●問4は、鉄道ルートに沿ったアメリカ合衆国の農業の地域的特徴を判別する問題であった。地図中の鉄道ルートと学習したアメリカ合衆国の農業地域区分を重ね合わせることができるかどうかが、解答のポイントであった。出題方法は目新しいが、要求されている内容は標準的であったため、受験生にとっては解答しやすい問題であったのではないだろうか。地図情報と既習の知識を複合的に考える力が求められる工夫された問題であった。
●問5は、いくつかの国の農産物の輸出額と輸入額からタイを判断する問題であった。1と2は中国とドイツで判断に迷うが、3が選択肢の中で唯一輸出額が上回っていることから、米の輸出が盛んなタイと判断したい。
●問2は、茶、天然ゴム、パーム油の生産量上位5か国と、各国の生産量が世界に占める割合を扱った問題であった。順位だけに着目すると天然ゴムとパーム油の判断に迷うが、マレーシアは天然ゴムからアブラヤシへの植え替えが進んでいるため、指標中に占めるマレーシアの割合が大きいアがパーム油と判断できる。
●問4は、鉄道ルートに沿ったアメリカ合衆国の農業の地域的特徴を判別する問題であった。地図中の鉄道ルートと学習したアメリカ合衆国の農業地域区分を重ね合わせることができるかどうかが、解答のポイントであった。出題方法は目新しいが、要求されている内容は標準的であったため、受験生にとっては解答しやすい問題であったのではないだろうか。地図情報と既習の知識を複合的に考える力が求められる工夫された問題であった。
●問5は、いくつかの国の農産物の輸出額と輸入額からタイを判断する問題であった。1と2は中国とドイツで判断に迷うが、3が選択肢の中で唯一輸出額が上回っていることから、米の輸出が盛んなタイと判断したい。
第3問「都市と村落」
●都市と村落を扱った出題であり、踏み込んだ知識を問うものが多かった。図・表が少なく、地理的な見方や考え方よりも、正確な知識が要求された。
●問3は、ドイツ、モロッコ、イギリスの都市の街路形態を扱った問題であった。図中の計画的に建設された新興住宅地はイスラームの迷路型都市と囲郭都市との類似点があり判断が難しい。図1中のAは、Cよりも広い範囲が示されている。ロータリーなどがあり車の乗り入れが考えられていることに気づくことができれば、計画都市であることが判断できたであろう。
●問5は、日本の農山村地域の変化について扱った問題であり、民間企業の農業参入など今日的な話題が扱われたが、正答の選択肢が明確であったため、受験生にとっては判断しやすい問題であっただろう。
●問6は、東北、甲信越、北陸、中国の三大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)とそれ以外への転出人口の内訳を示したグラフから、北陸を判断する問題であった。それぞれの地方ともに、全体に占める三大都市圏への移動割合が6割を超えているため、判断においては三大都市圏と各地方の地理的なつながりがポイントとなった。北陸は、名古屋圏や大阪圏の割合が高いため1と判断できる。
●問3は、ドイツ、モロッコ、イギリスの都市の街路形態を扱った問題であった。図中の計画的に建設された新興住宅地はイスラームの迷路型都市と囲郭都市との類似点があり判断が難しい。図1中のAは、Cよりも広い範囲が示されている。ロータリーなどがあり車の乗り入れが考えられていることに気づくことができれば、計画都市であることが判断できたであろう。
●問5は、日本の農山村地域の変化について扱った問題であり、民間企業の農業参入など今日的な話題が扱われたが、正答の選択肢が明確であったため、受験生にとっては判断しやすい問題であっただろう。
●問6は、東北、甲信越、北陸、中国の三大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)とそれ以外への転出人口の内訳を示したグラフから、北陸を判断する問題であった。それぞれの地方ともに、全体に占める三大都市圏への移動割合が6割を超えているため、判断においては三大都市圏と各地方の地理的なつながりがポイントとなった。北陸は、名古屋圏や大阪圏の割合が高いため1と判断できる。
第4問「南アメリカの地誌」
●南アメリカの自然環境、産業、生活・文化などがバランスよく出題され、標準的な内容であった。
●問1は、景観写真が扱われており、地点B、Cの判断が難しい。写真ウに森林が発達していること、地点Cがアンデス山脈の山裾であることに気づくことが正答を導くポイントであった。
●問3は、南アメリカのいくつかの地域の農牧業の特徴を述べた文から、Mのブラジル内部を判断する問題であった。カンポセラードの開発をおさえることができていれば正答を判断することができたが、2のコーヒーからブラジルを想起した受験生も多かっただろう。
●問4は、ブラジルにおける人口100万人以上の三つの都市の位置とその特徴を述べた文章の組合せ問題であった。カは天然ゴムの集散地であることから原産地の近いPと判断する。キとクの判断に迷うが、計画都市であるブラジリアの位置をおさえていれば正答を導くことができた。
●問5は、南アメリカ諸国の輸出相手国・地域への輸出額割合を示した階級区分図から、MERCOSUR(南米南部共同市場)を判断する問題であった。MERCOSURの加盟国は設問文からその名の通り、南アメリカの南部に集中していることをおさえることができていれば正答を判断できたであろう。
●問1は、景観写真が扱われており、地点B、Cの判断が難しい。写真ウに森林が発達していること、地点Cがアンデス山脈の山裾であることに気づくことが正答を導くポイントであった。
●問3は、南アメリカのいくつかの地域の農牧業の特徴を述べた文から、Mのブラジル内部を判断する問題であった。カンポセラードの開発をおさえることができていれば正答を判断することができたが、2のコーヒーからブラジルを想起した受験生も多かっただろう。
●問4は、ブラジルにおける人口100万人以上の三つの都市の位置とその特徴を述べた文章の組合せ問題であった。カは天然ゴムの集散地であることから原産地の近いPと判断する。キとクの判断に迷うが、計画都市であるブラジリアの位置をおさえていれば正答を導くことができた。
●問5は、南アメリカ諸国の輸出相手国・地域への輸出額割合を示した階級区分図から、MERCOSUR(南米南部共同市場)を判断する問題であった。MERCOSURの加盟国は設問文からその名の通り、南アメリカの南部に集中していることをおさえることができていれば正答を判断できたであろう。
第5問「現代世界の諸課題」
●現代世界の諸課題分野から幅広く出題され、やや詳細な統計資料が用いられた。
●問1は、20歳以上の人口に占める肥満の人の割合、医療費に占める公的支出の割合、人口1000人当たりの病床数から各国の判別を求める問題であった。正答の判断に迷うが、アメリカは肥満が社会問題になっており医療費に占める公的支出の割合が低いこと、アラブ首長国連邦は地下資源の充実により富裕層が増えていること、デンマークは福祉国家であること、フィリピンは発展途上であるため肥満の割合が小さく医療施設・サービスが充実しきれていないことなど、解答にはそれぞれの国の社会的背景を把握しておく必要があった。
●問2は、アフリカを5地域に区分して、50年間の人口増加指数と北部アフリカ、中部アフリカ、南部アフリカの出生率・死亡率を扱った問題である。対象の3地域の中では、1960年を100とした場合の2010年の人口が中部アフリカ、北部アフリカ、南部アフリカの順に大きいことに着目しながら、図2を読むことがポイントであった。図1は1960年を100とした値であるため、図2の出生率と死亡率の差が大きい順に中部アフリカ、北部アフリカ、南部アフリカと判断できる。
●問4は、表土の流出や土壌の汚染など、過放牧、森林破壊、農業などを原因とする土壌劣化の原因別面積率を題材に、アフリカ、北・中央アメリカ、南アメリカを判断する問題であった。過放牧の割合が高いカがアフリカ、熱帯雨林の減少から森林破壊の割合が高いキが南アメリカ、センターピボットなどの塩害など農業の数値が高いクが北・中央アメリカと判断したい。
●問1は、20歳以上の人口に占める肥満の人の割合、医療費に占める公的支出の割合、人口1000人当たりの病床数から各国の判別を求める問題であった。正答の判断に迷うが、アメリカは肥満が社会問題になっており医療費に占める公的支出の割合が低いこと、アラブ首長国連邦は地下資源の充実により富裕層が増えていること、デンマークは福祉国家であること、フィリピンは発展途上であるため肥満の割合が小さく医療施設・サービスが充実しきれていないことなど、解答にはそれぞれの国の社会的背景を把握しておく必要があった。
●問2は、アフリカを5地域に区分して、50年間の人口増加指数と北部アフリカ、中部アフリカ、南部アフリカの出生率・死亡率を扱った問題である。対象の3地域の中では、1960年を100とした場合の2010年の人口が中部アフリカ、北部アフリカ、南部アフリカの順に大きいことに着目しながら、図2を読むことがポイントであった。図1は1960年を100とした値であるため、図2の出生率と死亡率の差が大きい順に中部アフリカ、北部アフリカ、南部アフリカと判断できる。
●問4は、表土の流出や土壌の汚染など、過放牧、森林破壊、農業などを原因とする土壌劣化の原因別面積率を題材に、アフリカ、北・中央アメリカ、南アメリカを判断する問題であった。過放牧の割合が高いカがアフリカ、熱帯雨林の減少から森林破壊の割合が高いキが南アメリカ、センターピボットなどの塩害など農業の数値が高いクが北・中央アメリカと判断したい。
第6問「北海道富良野市とその周辺地域の地域調査」
●北海道富良野市とその周辺地域の土地利用・産業を中心に、地勢図・地形図・写真等の多彩な資料を用いた標準的な問題であった。
●問2は、雪の多い気候と生活に関する写真を用いた問題であり、時計、信号機、標識、消火栓などが扱われたが、雪の少ない地域の受験生にとってはイメージしにくかっただろう。
●問3は、地形図の新旧比較が扱われたが、地図記号がわかっていれば判断できたため、多くの受験生が正答することができたであろう。
●問4は、米、ジャガイモ、乳牛の集落別の農家の戸数を図形表現図で示したものであり、戸数の分布とその背景について問われた。図1の地形図から、地域別の大まかな地形の読み取りが求められたが、読み取りやすい地形図であったため、容易に解答できたと思われる。
●問5は、森林と林業動向についての会話文を題材にした問題であった。表1を正確に読み取らなければ、近年の木材自給率の傾向を誤ってしまうかもしれない。
●問2は、雪の多い気候と生活に関する写真を用いた問題であり、時計、信号機、標識、消火栓などが扱われたが、雪の少ない地域の受験生にとってはイメージしにくかっただろう。
●問3は、地形図の新旧比較が扱われたが、地図記号がわかっていれば判断できたため、多くの受験生が正答することができたであろう。
●問4は、米、ジャガイモ、乳牛の集落別の農家の戸数を図形表現図で示したものであり、戸数の分布とその背景について問われた。図1の地形図から、地域別の大まかな地形の読み取りが求められたが、読み取りやすい地形図であったため、容易に解答できたと思われる。
●問5は、森林と林業動向についての会話文を題材にした問題であった。表1を正確に読み取らなければ、近年の木材自給率の傾向を誤ってしまうかもしれない。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 69.68 | 61.88 | 62.16 | 66.40 | 65.11 |
6.センター試験攻略のポイント
●地図や統計資料の読み取りを絡めた組合せ問題や文章選択問題が出題の中心である点は大きく変わっていないので、過去のセンター試験や模擬試験を繰り返し確認しておくことは有効な対策である。また、オーソドックスで基本知識の定着を確認する出題が多いため、基本的な知識については教科書でしっかり確認しておきたい。●統計表やグラフに関しては、数値の変化や差異が見られる点に着目し、背景を考える習慣をつけておきたい。仮説を立て、既習の広範な知識を駆使して検証するプロセスが大事である。
●地域調査では例年、地形図読図が出題される。地形図読図は解答に時間を要するものの、地図記号、等高線、縮尺などの基礎事項をしっかりおさえておけば正答を導くことができる場合が多いので、日頃から地形図読図の演習を積んでおきたい。
●2014年度に引き続き、歴史的背景や経緯を問うものが散見された。判断ポイントとなる地理的な情報も図・表や選択肢中に盛り込まれているため落ち着いて取り組みたい。
●2016年度では、新学習指導要領に沿って「様々な地図と地理的技能」「防災」などのより日常生活に近い分野の出題が予想される。自治体などから出されているハザードマップやニュースで取り上げられる災害・防災情報などの地理的な事象に興味を持ち、知見を広めておきたい。
●制限時間内に解答を完了できるよう時間配分に留意した演習を重ね、各設問に落ち着いて取り組めるようにしておくことが大事である。
●各分野において軸となる重要事項、原理原則はしっかりとおさえ、たとえ知らない事項が出題されても、そこから応用して考察するスキルを習得することが大事である。多くの過去問に取り組み、どのような設問や出題形式に遭遇しても攻略の糸口を見つける対応力を培っておきたい。
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