問題講評【地理A】

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1.総評

【2015年度センター試験の特徴】 

工夫された図表が多く、情報を正確に読み取る力が問われた。昨年よりやや易化

多彩な資料が多く用いられ、必要な情報を精査して読み取る力や、示された内容や既存の知識と地図上の位置情報を結びつける力がカギとなった。特に第4問に易しい内容が多く、難易は昨年よりやや易化した。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は昨年同様5、解答数は昨年から2個減少し34個。第5問が地理Bとの共通問題であった。
【出題形式】 昨年同様、図表を用いた問題が中心であった。組合せ問題は昨年の15問から7問減少し8問となった。6択の問題は16問から8問減少し、4択の問題は18問から6問増加した。
【出題分野】 昨年から変更なし。
【問題量】 解答数は2個減少。問題量は昨年並。
【難易】 昨年よりやや易化。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
地理の基礎的事項 24点 標準 時差の計算、自然環境、生活文化、地形
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
国境を越えた様々な結びつき 21点 標準 人・物の移動、国際関係
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
東アジアの自然と生活・文化 21点 標準 自然環境、産業、生活文化、貿易
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
地球的課題と国際協力 16点 やや易 人口、食料問題、国際協力
第5問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
北海道富良野市とその周辺の地域調査 18点 標準 地域調査(地理Bとの共通問題)

4.大問別分析

第1問「地理の基礎的事項」

●時差、自然環境、生活文化などを中心に、基礎的事項が幅広く問われた。例年と異なり、図法の問題はみられなかった。また、大問を通して例年以上に設問間の関連性が色濃くみられる構成であった。
●問3は、絶滅が危惧される動物とその地域について述べた文章の正誤を選ぶ問題であった。環境問題がどの地域で起きているかについておさえておく必要があった。頻出事項であるため、地図上の位置もあわせて正確に理解しておきたい。
●問4は、雨温図を手がかりとして、地図中の東南アジアのある地点における植生についての文章選択肢の中から正しいものを選ぶ問題であった。地図や雨温図からサバナ気候に属すると判断したうえで、サバナ気候の植生を考察する必要があった。世界の気候と植生の結びつきが曖昧になっている受験生にとっては、難しかったであろう。
●問5は、乾燥地域で使用されている灌漑施設の写真から、この灌漑施設がみられる地域の組合せを選ぶ問題であった。写真よりカナートなどの地下水路であると判断し、さらにこのような地下水路が使用されている地域を地図中から考察して選ぶ必要があった。利用地域を地図上で想起できるかどうかがカギとなった。
●問7は、世界の諸地域における宗教別人口割合の表から、アフリカに該当するものを選択する問題。イスラームの割合の高い選択肢1、2がアフリカかアジアで迷うかもしれないが、旧宗主国であるヨーロッパの影響によりキリスト教の割合が高い1がアフリカである、と判断する。各地域の歴史的な背景の理解も求められた設問であった。
●問8は、例年出題されている地形図・模式図を用いた設問であり、どの地点からみた島の形状であるかが問われた。等高線の起伏をきちんと読み取ることができれば、比較的容易に解答できたであろう。

第2問「国境を越えた様々な結びつき」

●例年通り、物と人の流れを中心に、国境を越えた世界の結びつきが出題された。初見の図など工夫が目立つが、大問の難易は標準と思われる。
●問3は、インターネットの普及動向を示した図から、韓国に該当するものを選ぶ問題。日本と韓国の判断に迷った受験生もいたかもしれないが、国策により急速にインターネット普及率が発展した背景をおさえていれば、普及率が10%を超えた時点と50%を超えた時点の期間が最も短い3を韓国と判断できる。
●問4は、国際線直行便の東京からの方位と所要時間を示した図の4分割図で地域を問う問題であった。大陸が描かれていないことから、東京と関連性の高い都市・地域と分布図を結びつけて考える必要があった。多くの受験生にとっては、見慣れない図の読解であり難問であっただろう。
●問5は、国際旅行収支とヨーロッパからの国際旅行者数を示した表から、エジプト・オーストラリア・日本の組合せを選ぶ問題であった。判断に迷うかもしれないが、注釈をよく読むことが重要であった。国際旅行収支が高いカが、外国へ旅行する人が少なくヨーロッパとの距離が近いエジプト、国際旅行収支が大きくマイナスとなっているクが、物価の高さなどを背景に外国からの旅行客が少なく、ヨーロッパとの距離が遠い日本、残るキがオーストラリアであると判断したい。
●問6は、インド洋・大西洋・太平洋における主な海底ケーブル網を経度幅60度で切り取って示した図の組合せを選択する問題。見慣れない図ではあるが、海底ケーブル網の線から想起できる大陸の形を手がかりとして正答を導くことができる。

第3問「東アジアの自然と生活・文化」

●東アジアについて、自然環境、産業、生活文化、貿易など、幅広く出題された。標準的な内容で、日本と近くなじみのある地域でもあり、比較的取り組みやすかったのではないだろうか。
●問1は、中国南部を東西に横断した線で切った地形断面図をもとに、横断線上の4地域の内容に関する文章の正誤を判断する問題。選択肢3の文中の「上流域」という言葉に戸惑った受験生もいたかもしれないが、他の誤りを正確に捉えたい。各地点についての知識を詳細におさえていなくても、地形断面図から地形が想起できるため、解答は難しくはない。
●問4は、図中に示された自治区を主とする中国の少数民族について説明した文の組合せ問題であった。文中の「最も人口が多く」「羊やヤクの遊牧」「アラビア文字」などの内容と位置情報を結びつけて考察したい。
●問5は、特徴的な食べ物の配置を撮影した写真と食べ方の作法の説明から、韓国・中国・日本を判別する問題。写真をもとに各国の生活を考察する、地理Aらしい出題であった。
●問6は、韓国・中国・日本・ホンコンにおける輸出額の世界全体の輸出額に占める割合とGDPに対する比を示した表から、韓国を判断する問題であった。経済成長で輸出額に占める割合が最も大きい1が中国、内需型でありGDPに対する比が最も小さい2が日本、国の規模が小さいためGDPに対する比が半分程度になっている3が韓国である。
●問7は、東アジアの鉄道やパイプラインなど輸送にかかわる経路について述べた文章の正誤を判断する問題であった。地図上の位置情報と文章の内容を結びつけることがポイントであった。ペキンなど大都市を含む生活圏周辺を流れることから3の誤りに気付きたい。

第4問「地球的課題と国際協力」

●人口、食糧問題、国際協力などについて、基本的な内容の理解が求められた。オーソドックスに展開されていたため、基礎的事項をしっかりとおさえていれば解答が容易であったと思われる。
●問2は、栄養不足人口率・穀物自給率・人口増加率を国・地域別に示した図の組合せ問題であった。分布状況が大きく異なり、先進国を含む世界全体で高くなっているキが、アメリカやフランスの穀物メジャーなどを想起し穀物自給率であることは判断しやすい。残るカとクのうち、発展途上国の割合が多いカが栄養不足人口率、アフリカの国々が多く含まれるクを人口増加率である、と段階を踏んで類推していきたい。
●問4は、各国における合計特殊出生率、女性の労働力率、女性の国会議員の割合について問う問題。女性の社会進出に関する地域的な差異についてしっかりとした理解が求められた。判断に迷うであろう選択肢1と2のうち、イスラームの教えのもと女性の社会進出が進んでいない2がサウジアラビア、カトリックが普及しているため合計特殊出生率が最も高い1がフィリピンである。
●問5は、日本の政府や政府関係機関が実施している国際協力について述べた文についての正誤を判断する問題であった。受験生にとっては慣れない内容であったかもしれないが、日本は移民の受け入れをしていないことをおさえていれば、正答を導ける。

第5問「北海道富良野市とその周辺の地域調査」

●地理Bとの共通問題。大問全体としては、地理Aの学習内容で対応可能な内容であった。
●分析詳細は、地理B第6問参照。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度20142013201220112010
平均点 51.76 50.09 47.42 52.58 53.58

6.センター試験攻略のポイント

●地図や統計資料の読み取りを絡めた組合せ問題や文章選択問題が出題の中心である点は大きく変わっていないので、過去のセンター試験や模擬試験を繰り返し確認しておくことは有効な対策である。また、オーソドックスで基本知識の定着を確認する出題が多いため、基本的な知識については教科書でしっかり確認したい。
●統計表やグラフに関しては、数値の変化や差異がみられる点に着目し、背景を考える習慣をつけておきたい。仮説を立て、既習の広範な知識を駆使して検証するプロセスが大事である。
●地域調査では例年、地形図読図が出題される。地形図読図は解答に時間を要するものの、地図記号、等高線、縮尺などの基礎事項をしっかりおさえておけば正答を導くことができる場合が多いので、日頃から地形図読図の演習を積んでおきたい。
●2015年度は、工夫された資料が多くみられた。題意を正確にくみ取り必要な情報を精査していく練習を行いたい。初見の資料は読み取りに時間がかかることにも留意したい。
●地理Aでは、写真を用いた設問が多く出題される。地域ごとの生活文化や特色をおさえるだけでなく、その地域の位置情報も同時に把握していくよう心がけてほしい。
●次年度では、新学習指導要領に沿って「防災」などのより日常生活に近い分野の出題が予想される。自治体などから出されているハザードマップやニュースで取り上げられる災害・防災情報などの地理的な事象に興味を持ち、知見を広めておきたい。
●制限時間内に解答を完了できるよう時間配分に意識した演習を重ね、各設問に落ち着いて取り組めるようにしておくことが大事である。
●各分野において軸となる重要事項、原理原則はしっかりとおさえ、たとえ知らない事項が出題されても、そこから応用して考察するスキルを習得することが大事である。多くの過去問に取り組み、どのような設問や出題形式に遭遇しても攻略の糸口を見つける対応力を培っておきたい。

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