問題講評【英語(筆記)】
1.総評
- 【2015年度センター試験の特徴】
-
新傾向の問題が出題され、実践的な英語力を測定する傾向が顕著に。難易は昨年並
英文の量が多く、目的に応じた読み方をし、要点を素早く捉える力が求められた。いくつかの形式変更により、論理的な英文を構築する力や英文の論理展開を把握する力など、相手と意見を交わすような場面を想定した実践的な英語力を測定する傾向が顕著になった。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数は6で昨年と変更なし。解答数は昨年と同様、55個であった。 |
---|---|
【出題形式】 | いくつか形式に変更があった。昨年は第2問Cで出題された語句整序問題が第2問Bで出題され、第2問Cでは、対話文中の英文を作成する問題が新たに出題された。また、昨年は第2問Bで出題された対話文中の空所補充問題が今年は第3問Aで出題された。昨年は第3問Aで出題されていた語句類推問題は、第5問と第6問で1問ずつ出題された。第5問では、昨年出題されたイラストを選ぶ問題が出題されなかった。 |
【出題分野】 | 発音・アクセントから、読解、視覚情報を含む英文理解までの幅広い領域が問われており、多岐にわたるジャンル・形式の出題であった。 |
【問題量】 | 昨年並(昨年:約2820語→今年:約2940語)。 |
【難易】 | 昨年並。 |
3.大問構成
第1問 | |||
---|---|---|---|
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
発音・アクセント | 14点 | 標準 | |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
文法・語彙語法・語句整序・対話文中の英文完成 | 44点 | 標準 | |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
対話文中の空所補充・不要文指摘・発言要約 | 41点 | 標準 | C「迷信に関する公開講座」 |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
データ読み取り(図表・広告) | 35点 | 標準 | A「子どものSNS利用にともなう危険性」B「キャンプ場に関するウェブサイト」 |
第5問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
陳述読解 | 30点 | やや易 | 「保護者から先生に宛てて送ったメールと、それに対する先生からの返信」 |
第6問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
長文読解 | 36点 | 標準 | 「市民科学」 |
4.大問別分析
第1問「発音・アクセント」
・Aの発音問題は、合計3問(母音2問、子音1問)の出題であった。
・Bのアクセント問題は、合計4問(2音節の単語1問、3音節の単語2問、4音節の単語1問)の出題で、昨年と同様、4つの単語のうち第一アクセントの位置が他の3つと異なる語を選択する形式であった。
・A・Bともに昨年と同様、高校生になじみの薄い単語の出題はなかった。また、Aではflood、Bではadmire、success、sufficientなど、発音・アクセント問題でよく問われる語が出題され、取り組みやすかった。
・Bのアクセント問題は、合計4問(2音節の単語1問、3音節の単語2問、4音節の単語1問)の出題で、昨年と同様、4つの単語のうち第一アクセントの位置が他の3つと異なる語を選択する形式であった。
・A・Bともに昨年と同様、高校生になじみの薄い単語の出題はなかった。また、Aではflood、Bではadmire、success、sufficientなど、発音・アクセント問題でよく問われる語が出題され、取り組みやすかった。
第2問「文法・語彙語法・語句整序・対話文中の英文完成」
・Aの空所補充問題では、know better than+O(問1)、使役動詞have+O+過去分詞(問2)、in that(問3)、hopeとwishの使い分けと時制(問4)、時制の一致(問5)、分詞構文(問6)、「…を背景にして」を表すagainst(問7)が出題された。問4でhopeとwishの使用場面の違いを理解しているかが問われていることからも分かるように、日ごろから語の意味を機械的に覚えるのではなく、文脈の中で覚えているかどうかが問われた。問8〜問10は、昨年と同様、空所2ヵ所に入る語の組合せを問う形式で、howとwhatの使い分けと間接疑問文の語順(問8)、soとsuchに続く語の語順の区別とso〜that...(問9)、時制の一致とnextの語法(問10)が問われた。空所2ヵ所とも正解する必要があることから、文法や語法に関するより正確な知識とその運用力が問われた。
・Bでは語句整序問題が出題された。3問とも対話形式の出題で、選択肢の数が6個である点も昨年から変更がなかった。問1では仮定法過去完了とfor sure、問2はcharge+人+金額、問3はtoo〜to...が問われた。いずれも文法やイディオムの知識に加えて、前後の内容から空所に入る内容を推測して適切な英文を組み立てる力が問われた。
・Cでは、昨年の追試験で出題された、二人目の発言について、文法的に正しく、対話の場面にも合う応答となるように語句を組み合わせる問題が出題された。問3ではdreamの語法が問われただけでなく、ソフィーが「蝶をつかまえよう」と提案したことに対し、ヒデキがそれを否定的に受け止めているという場面に合う英文を作れるかが問われた。この出題形式の変更によって、第2問全体で、文法や語法の知識を知っているかだけではなく、それらの知識を用いて、文脈や対話の場面に応じた適切な英文を構築することができるかを問う傾向が顕著になったといえる。
・Bでは語句整序問題が出題された。3問とも対話形式の出題で、選択肢の数が6個である点も昨年から変更がなかった。問1では仮定法過去完了とfor sure、問2はcharge+人+金額、問3はtoo〜to...が問われた。いずれも文法やイディオムの知識に加えて、前後の内容から空所に入る内容を推測して適切な英文を組み立てる力が問われた。
・Cでは、昨年の追試験で出題された、二人目の発言について、文法的に正しく、対話の場面にも合う応答となるように語句を組み合わせる問題が出題された。問3ではdreamの語法が問われただけでなく、ソフィーが「蝶をつかまえよう」と提案したことに対し、ヒデキがそれを否定的に受け止めているという場面に合う英文を作れるかが問われた。この出題形式の変更によって、第2問全体で、文法や語法の知識を知っているかだけではなく、それらの知識を用いて、文脈や対話の場面に応じた適切な英文を構築することができるかを問う傾向が顕著になったといえる。
第3問「対話文中の空所補充・不要文指摘・発言要約」
・Aでは、語句類推の出題がなくなり、昨年まで第2問Bで出題されていた、会話文中の空所に当てはまる内容を選ぶ問題が出題された。いずれも話の流れをつかみ、それに沿った発言を選ばせる問題で、身近な話題で読みやすく、取り組みやすかった。
・Bでは、昨年と同様、まとまりをよくするために取り除いた方がよい一文を選ばせる問題が出題された。それぞれのテーマは「切手収集の利点」(問1)、「塩がお金として使われた理由」(問2)、「テレビ番組の開始と終了時間」(問3)であった。昨年と同様、英文の主旨をつかみ、前後の文との関連性に注意しながら読解する力が求められた点は変わりない。しかし、いずれの英文も昨年よりもやや難しく、主旨をつかんだり、選択肢一つ一つが主旨に沿っているかを吟味したりするのに時間を要したかもしれない。
・Cは、ディスカッション形式での発言を要約する問題で、「迷信」について、日本のある大学において行われた公開講座に関する内容であった。昨年と比較すると各発話者の発言量が増え、「迷信とは何か、人はなぜ迷信を信じるのか」という、やや抽象的なテーマに関して議論が深まっていくという展開で、内容の読み取りがやや難しかった。
・Bでは、昨年と同様、まとまりをよくするために取り除いた方がよい一文を選ばせる問題が出題された。それぞれのテーマは「切手収集の利点」(問1)、「塩がお金として使われた理由」(問2)、「テレビ番組の開始と終了時間」(問3)であった。昨年と同様、英文の主旨をつかみ、前後の文との関連性に注意しながら読解する力が求められた点は変わりない。しかし、いずれの英文も昨年よりもやや難しく、主旨をつかんだり、選択肢一つ一つが主旨に沿っているかを吟味したりするのに時間を要したかもしれない。
・Cは、ディスカッション形式での発言を要約する問題で、「迷信」について、日本のある大学において行われた公開講座に関する内容であった。昨年と比較すると各発話者の発言量が増え、「迷信とは何か、人はなぜ迷信を信じるのか」という、やや抽象的なテーマに関して議論が深まっていくという展開で、内容の読み取りがやや難しかった。
第4問「データ読み取り(図表・広告)」
・Aの図表読み取り問題では、「子どものSNS利用にともなう危険性」について出題され、昨年と同様、2つの図と英文を組み合わせて読解する問題が出題された。問1は、図1の3つの指標を特定する問題で、第2パラグラフから4分の1以上の生徒がSNS利用について「安全」と答えていること、また、SNS利用について「非常に危険」だと答えている先生の割合は保護者の割合よりもやや高いことが読み取れれば正解できた。問4では、昨年、新傾向の問題として出題された最終パラグラフに続く内容を予想する問題が引き続き出題された。昨年は、2つの事柄が二項対立的に説明されているということを踏まえて続く内容を予測しなければならなかったが、今年は最終パラグラフで述べられている「SNS利用にともなう危険性について議論をしているか」という調査に関連する内容を述べた選択肢は1つのみであることから、これが正答であると判断できた。
・Bでは、「キャンプ場に関するウェブサイト」に関して出題され、必要な情報を取捨選択しながら時間内に読み取ることが求められた。語彙や内容自体はそれほど難しくはないが、各問の設問文の語数が昨年よりも増加し、資料中の情報量も多かったため、条件の読み取りと情報の特定に時間を要したかもしれない。問3は設問文で複数の条件が示されているが、そのうち「バーベキューがしたい」、「自転車に乗りたい」という鍵となる条件に着目できれば、効率的に正答を導くことができた。
・Bでは、「キャンプ場に関するウェブサイト」に関して出題され、必要な情報を取捨選択しながら時間内に読み取ることが求められた。語彙や内容自体はそれほど難しくはないが、各問の設問文の語数が昨年よりも増加し、資料中の情報量も多かったため、条件の読み取りと情報の特定に時間を要したかもしれない。問3は設問文で複数の条件が示されているが、そのうち「バーベキューがしたい」、「自転車に乗りたい」という鍵となる条件に着目できれば、効率的に正答を導くことができた。
第5問「陳述読解」
・「保護者から先生に宛てて送ったメールと、それに対する先生からの返信」について出題され、2人の間でどのようなやり取りがなされたかを読み取る力が求められた。英文の分量はほぼ昨年並で(約660語→約620語)、娘が学校で孤立しているのではないかと心配する父親に対して、父親とは異なる意見をもった先生が父親にアドバイスをしているという内容・展開であった。設問については、昨年まで出題されていたイラスト問題がなくなり、問2において、前後の文脈から慣用表現の意味を類推する問題が新たに出題された。昨年よりも英文は読みやすく、紛らわしい選択肢もなかったため、取り組みやすかっただろう。
・問3は父親からのメールと先生からの返信の両方を踏まえて解答する必要があるが、前述の通り英文が読みやすい内容であったため、正答を選ぶのにさほど時間はかからなかったであろう。
・問3は父親からのメールと先生からの返信の両方を踏まえて解答する必要があるが、前述の通り英文が読みやすい内容であったため、正答を選ぶのにさほど時間はかからなかったであろう。
第6問「長文読解」
・「市民科学」についての英文が出題された。英文の分量はほぼ昨年並で(約660語→約630語)で、Aでは内容把握問題、Bでは、段落構成と段落の要旨として適切なものを選ばせる問題が、表を完成させる形式で出題された。
・Aの問2では、前後の文脈から、語の意味を類推する問題が新たに出題された。また、問3・4は筆者が科学的な調査に市民が参加することに対し肯定的な立場であることを踏まえ、正答に当たる内容を推測して答えられるかが問われた。
・Bでは今年から新たに、各段落の要旨だけではなく、段落構成も合わせて考えさせる形式となった。昨年までの形式と比較すると、英文の内容だけではなく、英文全体の構成や展開を把握できているかが問われる出題になったといえる。
・Aの問2では、前後の文脈から、語の意味を類推する問題が新たに出題された。また、問3・4は筆者が科学的な調査に市民が参加することに対し肯定的な立場であることを踏まえ、正答に当たる内容を推測して答えられるかが問われた。
・Bでは今年から新たに、各段落の要旨だけではなく、段落構成も合わせて考えさせる形式となった。昨年までの形式と比較すると、英文の内容だけではなく、英文全体の構成や展開を把握できているかが問われる出題になったといえる。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 118.87 | 119.15 | 124.15 | 122.78 | 118.14 |
6.センター試験攻略のポイント
・昨今の形式変更により、論理的な英文を構築できるか、英文全体の論理展開を把握できるかなど、より実践的な英語力を測る出題構成・問題内容になったといえる。今後も相手と意見を交わすような場面を想定した実践的な英語力を測る問題が、様々な形式で出題されると考えられる。引き続き、どのような形式で出題されても対応できるように、論理的に読む練習、聴く練習、書く練習、話す練習を重ね、幅広い英語力を身につけさせておきたい。・第1問では、頻出単語の発音・アクセントに絞って演習を行うのではなく、通常の授業や英語学習の中で、教科書や問題集の音読などを通して常に正確な発音で英文を読む習慣を身につけさせたい。今年は日本語と英語での発音の仕方が異なるカタカナ語の出題は減ったが、例年は頻出であるので、今後も注意が必要である。
・第2問では、日常的な場面で使用する語彙・語法の出題が散見された。教科書の学習にとどまらず、広く英語に触れる機会を持ち、多様な語彙・イディオムの習得に努めたい。語彙学習の際には、英和辞典で複数の意味や例文を確認したり、英英辞典を使って、その語の持つイメージを思い浮かべたりしながら習得する習慣をつけさせたい。また、日常的な場面でよく使われるイディオムや語と語のつながりについても、文法の基本事項とともに低学年からの定着を徹底させたい。
・第3問Bでは、英文の主旨をつかみ、前後の文との関連性に注意しながら、不要な一文を選ぶ問題が出題された。英文を書かせる際にも、主旨に沿った論理的な英文を書かせることが、本問を解く力の養成になるだろう。Cでは、発話者ごとの発言内容の要旨を把握しながら読むことが求められており、日ごろから内容をおおまかに理解しながら読む練習をさせたい。
・第4問Aのデータ読み取り問題では、今年はグラフが出題された。今後も多様な形式の図表が出題されると考えられるので、英文から数値に関する情報を読み取ったり、項目の傾向を把握したりする力を身につけさせておきたい。また、最終パラグラフに続く内容を選ばせる問題がここ2年出題されているので、日ごろから各パラグラフの要旨だけでなく、英文全体の構成や展開を把握させるようにしたい。Bの広告問題では、必要な情報を複数見つけて正答を導くスキャニング力の養成につながる演習をさせたい。
・第5問の陳述読解問題では、複数の英文を与えて、分散した情報の中から求められている内容を引き出す練習を行っておくとよいだろう。今年は学校生活に関する読みやすい英文が出題されたが、昨年のように人物の心情の読み取りが必要な英文が出題される可能性もある。日ごろの学習では論説文だけではなく、小説やエッセイなど様々なジャンルの英文にふれ、登場人物の関係性や心情に関する読み取りができるようにさせたい。
・第6問の長文読解では、段落構成と段落の要旨として適切なものを選ばせる問題に対応できるように、英文を読む際には、段落ごとに要旨をまとめながら読み進めると同時に、各段落が全体の中でどのような位置づけであるかを考えさせるとよいだろう。
・日頃から様々なジャンル・テーマ・形式の英文に触れ、必要に応じて時間を計って英文を読み、その内容をまとめる演習などを積ませておきたい。また、今年も本文中の表現が設問の選択肢では別の表現に言いかえられている問題がみられた。正確な読解に加えて、英文の言いかえに対応する力も身につけさせたい。
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