問題講評【数学I・A】

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1.総評

【2015年度センター試験の特徴】 

「データの分析」が大問で出題され、箱ひげ図の選択や相関係数の計算が問われた。難易は昨年並

新課程の「データの分析」は大問で出題され、箱ひげ図の選択や相関係数の計算が問われた。「整数の性質」は、素因数分解、約数の個数、平方数、1次不定方程式について幅広く問われた。また、「場合の数と確率」ではセンター試験本試験で初めて確率の出題がなく、「数と式」では集合と命題のみが出題された。全体の難易は昨年並。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は6。数学Iの分野の第1問〜第3問が必答で、数学Aの分野の第4問〜第6問から2問選択。第2問〔1〕は数学Iと共通、第1問と第3問は数学Iと一部共通。
【出題形式】 第2問、第3問は中問形式で出題された。第3問のデータの分析では箱ひげ図を選ぶ問題が出題された。
【出題分野】 数学Iの分野が60点分、数学Aの分野が40点分の出題。数と式のうち集合と命題のみが出題された。
【問題量】 昨年並。
【難易】 昨年並。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
2次関数 20点 標準 2次関数のグラフの平行移動、最大・最小、2次不等式
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
集合と命題、図形と計量 25点 標準 〔1〕命題の対偶、自然数に関する命題の反例
〔2〕正弦定理、余弦定理、外接円の半径のとり得る範囲
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
データの分析 15点 標準 ヒストグラムと箱ひげ図の形状、相関係数の計算
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
場合の数 20点 標準 5枚の正方形の板を塗り分ける場合の数
第5問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
整数の性質 20点 標準 素因数分解、約数の個数、平方数、1次不定方程式
第6問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
図形の性質 20点 標準 三角形とその外接円に関する円と直線

4.大問別分析

第1問「2次関数」

●2次関数のグラフを平行移動させた後の関数をf(x)とし、f(x)の最大値・最小値などを考える問題。
●f(x)がp、qという文字を含んだ式となるため、計算が煩雑になる。ミスをしないように丁寧に整理しながら、計算を行うとよい。
●(1)はf(x)が定義域の左端で最大値や最小値をとるような、pのとり得る値の範囲を求める問題。f(x)の軸と定義域との位置関係を正しく考えられるかどうかがポイントであった。
●(2)は2次不等式の解が与えられた形になるようにpとqの値を決定する問題。与えられた条件から2次不等式を立式し、係数比較をするとよい。
●問題量、計算量は配点の減少を加味してもやや少ない。
●数学I、旧数学I・A、旧数学Iと一部共通であった。

第2問〔1〕「集合と命題」

●命題の対偶を考える問題と、命題の反例を具体的に考える問題。
●(1)は対偶の定義を知っているかどうかが問われた。「p1かつp2」という条件の否定の形がどうなるかを知っているかどうかがポイントであった。
●(2)は命題の反例を具体的に考える目新しい問題。候補となる自然数nの数は多くないので、1つずつ書き出して考えていくとよい。
●問題量、計算量はともに昨年並。
●数学I、旧数学I・Aと共通問題であった。

第2問〔2〕「図形と計量」

●正弦定理と余弦定理の理解を問う問題。
●前半は余弦定理、正弦定理を用いた辺と三角比を計算する基本的な問題。後半は三角形の1つの頂点が動くときに外接円の半径のとり得る値の範囲を求める問題。外接円の半径を正弦定理を用いて、APまたはsin∠APCの値におきかえて考えることができたかどうかがポイントとなった。
●変化する図形において三角比を利用してとり得る値の範囲を求める形式の問題は目新しく、戸惑った受験生もいただろう。
●問題量、計算量は標準的であった。

第3問「データの分析」

●40人のハンドボール投げの飛距離のデータに関する問題で、ヒストグラムと箱ひげ図の関係、データの変更による箱ひげ図の変化、相関係数の計算が出題された。
●計算が必要な問いは1問しかなく、データを正確に読み取ったり、用語や公式をきちんと理解し運用できるかどうかが問われた。
●〔1〕の前半は、ヒストグラムで表されたデータを箱ひげ図にまとめたとき、矛盾するものを選ぶ問題。後半は、記録を取り直したときのデータの変更と箱ひげ図の変化が矛盾するものを選ぶ問題で、いずれも計算は必要なく、箱ひげ図の正確な理解と、データの変更の説明を箱ひげ図にまとめなおす力が求められた。
●〔2〕は、2つのデータの分散と標準偏差から相関係数を求める問題で、相関係数の定義を理解しているかどうかが問われた。
●数学Iと一部共通であった。

第4問「場合の数」

●5枚の正方形の板を隣り合う正方形どうしが異なる色となるように、赤色、緑色、青色のペンキを用いて塗り分ける場合の数の問題。
●主に積の法則を用いて数え上げていく。単純なルールに見えるが、数え方の糸口がつかみにくく、戸惑った受験生も多かったと思われる。
●(1)〜(4)は与えられた条件に合わせて場合の数を考える基本的な問題。隣り合う正方形の塗り方に着目することがポイントであった。(5)は赤色に塗られる正方形が1つである場合の数を考える問題で、誘導にそって赤色に塗られる正方形を固定して考えていけばよい。(6)は赤色に塗られる正方形が2枚である場合の数を考える問題で、(5)までの結果を用いて余事象を考えられたかどうかがポイントであった。
●新課程で注目されていた条件付き確率は出題されず、確率自体の出題もなかった。確率が全く出題されなかったのはセンター本試験では初めてであった。
●問題量、計算量は昨年よりやや少なかった。
●旧数学I・Aと一部共通であった。

第5問「整数の性質」

●(1)は素因数分解と約数の個数、(2)は平方数に関する基本的な問題。(3)は1次不定方程式に関する典型的な問題であったが、係数が3桁とやや大きく煩雑であった。特殊解を素早く見つけることができたかで差がついたと思われる。
●(4)は条件を満たす自然数mを求める問題で、(2)、(3)の結果をうまく用いることができたかがポイントであったが、問題の意図が捉えにくく戸惑った受験生も多かったと思われる。
●問題量、計算量は標準的であった。

第6問「図形の性質」

●三角形とその外接円を題材とした円と直線に関する問題。方べきの定理、重心の性質、メネラウスの定理、三角形の相似などが幅広く問われた。
●DP/EPと問われてメネラウスの定理が思いついたか、「∠CAB=∠CEDで、∠Cは共通であるから」という記述から三角形の相似に気づけたか、など問われている知識や公式を素早く思いつけたかどうかで差がついたと考えられる。計算は比較的単純であったので図を正確にかき、誘導に従い考えれば解き進めることができただろう。
●問題量、計算量は標準的であった。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度20142013201220112010
平均点 62.08 51.20 69.97 65.95 48.96

6.センター試験攻略のポイント

●新課程となっても、各分野の基本問題を中心として出題される傾向は変わらなかった。教科書レベルの基本事項をもれなく理解し、典型的な問題を中心に演習を積むことが重要である。
●受験生の苦手とする「論理と集合」の問題では、用語を確実に理解していないと得点できないため、普段から十分な学習を積んでおきたい。また、ベン図などを用いて集合の包含関係を考えることも大切である。
●図形問題について、来年以降も引き続き数学Iの「図形と計量」と数学Aの「図形の性質」は別々の大問で問われると予想される。ただし、互いの知識を用いると問題に取り組みやすくなる場合もあるため、数学Iの内容、数学Aの内容と分けて考えるのではなく、図形問題を総合的にとらえる練習をしておくとよい。また、高校の教科書には載っていない中学の基本的な図形の性質も意識しながら取り組むことも必要である。
●新課程で追加された分野である「データの分析」は、今年は計算が必要な問題は1問しかなく、全体として用語や公式をきちんと理解しているかどうかが問われた。今後もこの傾向は続くと思われるので、まずは用語や公式を正確に用いることができるようになったうえで、データを修正したり追加したりした場合に、統計値がどのように変化するかなども理解できるようにしておきたい。
●「場合の数と確率」の問題では、PやCでの計算を正確に行うことに加えて、樹形図などを利用してもれなく重複なく数え上げることも要求されるので、両方ともしっかりとできるようにしておきたい。また、問題文の条件が難しい問題や誘導のない問題にも対応できるように、効率のよい場合分けを考える習慣をつけておくことも重要である。今年は出題されなかった「条件付き確率」についても対応できるように学習しておくこと。
●来年のセンター試験は新課程2年目となり、今回とは大問構成や出題内容が大きく変更する可能性もある。これまで解いたことがないような問題が出題されたとしても、落ち着いて題意を正しく読み取り、与えられた誘導の意図を考えながら、正確な立式や計算ができるように日ごろから練習を積んでおきたい。

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