問題講評【数学I】
1.総評
- 【2015年度センター試験の特徴】
-
「データの分析」では、箱ひげ図の選択や相関係数の計算が問われた。難易は昨年並。
旧課程と共通の分野では、大問数や配点、難易に大きな変化は見られなかった。新課程の「データの分析」は、計算が必要な問題は1問のみで、用語や公式を正確に理解しているかどうかを問う内容が主だった。全体の難易は昨年並。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 昨年同様、大問数は4ですべて必答。第1問〔2〕は数学I・Aと共通問題、第2問と第4問は数学I・Aと一部共通。 |
---|---|
【出題形式】 | 昨年同様、第1問と第2問が25点、第3問が30点、第4問が20点の配点であった。 |
【出題分野】 | 数学Iの全分野から出題。 |
【問題量】 | 昨年並。 |
【難易】 | 昨年並。 |
3.大問構成
第1問 | |||
---|---|---|---|
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
数と式 | 25点 | 標準 | 〔1〕2つの2次式の積で表された4次式の計算 〔2〕命題の対偶、自然数に関する命題の反例 |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
2次関数 | 25点 | 標準 | 2次関数のグラフの平行移動、最大・最小、2次不等式 |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
図形と計量 | 30点 | 標準 | 複数の相似な三角形 |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
データの分析 | 20点 | 標準 | ヒストグラムと箱ひげ図の形状、データの追加による共分散と相関係数の変化 |
4.大問別分析
第1問〔1〕「数と式」
●2つの2次式の積で表された4次式に関する問題。
●(1)、(2)は与えられた2次式の積を展開し、元の4次式と係数を比較すればよい。文字を多く含んだ計算を正確に行えるかどうかがポイントであった。
●(3)は2次方程式の解を求める問題である。2つの2次方程式のうち1つは判別式により実数解を持たないことに気づくと計算が省略できる。
●問題量、計算量はともに昨年並であった。
●(1)、(2)のみ旧数学I・A、旧数学Iと共通問題であった。
●(1)、(2)は与えられた2次式の積を展開し、元の4次式と係数を比較すればよい。文字を多く含んだ計算を正確に行えるかどうかがポイントであった。
●(3)は2次方程式の解を求める問題である。2つの2次方程式のうち1つは判別式により実数解を持たないことに気づくと計算が省略できる。
●問題量、計算量はともに昨年並であった。
●(1)、(2)のみ旧数学I・A、旧数学Iと共通問題であった。
第1問〔2〕「集合と命題」
●命題の対偶を考える問題と、命題の反例を具体的に考える問題。
●(1)は対偶の定義を知っているかどうかが問われた。「p1かつp2」という条件の否定の形がどうなるかを知っているかどうかがポイントであった。
●(2)は命題の反例を具体的に考える目新しい問題。候補となる自然数nの数は多くないので、1つずつ書き出して考えていくとよい。
●問題量、計算量はともに昨年並。
●数学I・A、旧数学I・Aと共通問題であった。
●(1)は対偶の定義を知っているかどうかが問われた。「p1かつp2」という条件の否定の形がどうなるかを知っているかどうかがポイントであった。
●(2)は命題の反例を具体的に考える目新しい問題。候補となる自然数nの数は多くないので、1つずつ書き出して考えていくとよい。
●問題量、計算量はともに昨年並。
●数学I・A、旧数学I・Aと共通問題であった。
第2問「2次関数」
●2次関数のグラフを平行移動させた後の関数をf(x)とし、f(x)の最大値・最小値などを考える問題。
●f(x)がp、qという文字を含んだ式となるため、計算が煩雑になる。ミスをしないように丁寧に整理しながら、計算を行うとよい。
●(1)はf(x)が定義域の左端で最大値や最小値をとるような、pのとり得る値の範囲を求める問題。f(x)の軸と定義域との位置関係を正しく考えられるかどうかがポイントであった。
●(2)はf(x)が定点を通るときのqをpで表し、そのときのf(x)を因数分解する問題。後半はf(x)を平方完成した形の式のqをpで表すと平方の差になることに着目すると、因数分解できることがわかり、計算量が少なくて済む。
●(3)は2次不等式の解が与えられた形になるようにpとqの値を決定する問題。(2)の条件が点(-2、0)を通るグラフであることに着目すると、求めた因数分解の形を利用することができるので、計算を容易に行うことができる。
●問題量は昨年並で、計算量は例年よりやや少ない。
●旧数学I、旧数学I・Aと共通問題、数学I・Aとは(1)、(3)のみ共通問題であった。
●f(x)がp、qという文字を含んだ式となるため、計算が煩雑になる。ミスをしないように丁寧に整理しながら、計算を行うとよい。
●(1)はf(x)が定義域の左端で最大値や最小値をとるような、pのとり得る値の範囲を求める問題。f(x)の軸と定義域との位置関係を正しく考えられるかどうかがポイントであった。
●(2)はf(x)が定点を通るときのqをpで表し、そのときのf(x)を因数分解する問題。後半はf(x)を平方完成した形の式のqをpで表すと平方の差になることに着目すると、因数分解できることがわかり、計算量が少なくて済む。
●(3)は2次不等式の解が与えられた形になるようにpとqの値を決定する問題。(2)の条件が点(-2、0)を通るグラフであることに着目すると、求めた因数分解の形を利用することができるので、計算を容易に行うことができる。
●問題量は昨年並で、計算量は例年よりやや少ない。
●旧数学I、旧数学I・Aと共通問題、数学I・Aとは(1)、(3)のみ共通問題であった。
第3問「図形と計量」
●鈍角三角形を題材に、余弦定理・正弦定理や三角比の定義を用いて相似な三角形や三角形の面積比を考える問題。
●前半は、余弦定理や三角比の定義を用いて角の大きさや辺の長さを求める問題である。直角三角形において、三角比がどの辺と辺の比で表されるかという定義をきちんと理解しているかどうかがポイントであった。また、cos∠DAEを求める部分では、補角の三角比を用いることができるかどうかが問われた。
●後半は、複数の相似な三角形の相似比から、三角形の辺の長さや面積比を求める問題。補角や対頂角をうまく用いて、相似な三角形を見つけられるかどうかがポイントであった。
●△ABCが鈍角三角形であることをふまえて図をかき、様々な角の大きさをきちんと把握できたかどうかで差がついたと思われる。
●問題量、計算量はともに昨年並であった。
●旧数学Iと共通問題であった。
●前半は、余弦定理や三角比の定義を用いて角の大きさや辺の長さを求める問題である。直角三角形において、三角比がどの辺と辺の比で表されるかという定義をきちんと理解しているかどうかがポイントであった。また、cos∠DAEを求める部分では、補角の三角比を用いることができるかどうかが問われた。
●後半は、複数の相似な三角形の相似比から、三角形の辺の長さや面積比を求める問題。補角や対頂角をうまく用いて、相似な三角形を見つけられるかどうかがポイントであった。
●△ABCが鈍角三角形であることをふまえて図をかき、様々な角の大きさをきちんと把握できたかどうかで差がついたと思われる。
●問題量、計算量はともに昨年並であった。
●旧数学Iと共通問題であった。
第4問「データの分析」
●ヒストグラムと矛盾する箱ひげ図を選んだり、データの追加による共分散と標準偏差の変化を考えたりする問題。
●計算が必要な問いは1問しかなく、データを正確に読み取ったり、用語や公式をきちんと理解し運用できるかどうかが問われた。
●〔1〕の前半は、ヒストグラムで表されたデータを箱ひげ図にまとめたとき、矛盾するものを選ぶ問題。後半は、記録を取り直したときのデータの変更と箱ひげ図の変化が矛盾するものを選ぶ問題で、いずれも計算は必要なく、箱ひげ図の正確な理解と、データの変更の説明を箱ひげ図にまとめなおす力が求められた。
●〔2〕の前半は、2つのデータの分散と標準偏差から相関係数を求める問題で、相関係数の定義を理解しているかどうかが問われた。後半はデータを追加したときの共分散と相関係数の変化を考える問題で、追加されたデータが平均値と一致することに気づけるかどうかと、共分散と相関係数の定義を正確に理解しているかどうかがポイントであった。
●計算量は少ないが、考察を要する問題が多く、問題量は標準的であった。
●数学I・Aと一部共通であった。
●計算が必要な問いは1問しかなく、データを正確に読み取ったり、用語や公式をきちんと理解し運用できるかどうかが問われた。
●〔1〕の前半は、ヒストグラムで表されたデータを箱ひげ図にまとめたとき、矛盾するものを選ぶ問題。後半は、記録を取り直したときのデータの変更と箱ひげ図の変化が矛盾するものを選ぶ問題で、いずれも計算は必要なく、箱ひげ図の正確な理解と、データの変更の説明を箱ひげ図にまとめなおす力が求められた。
●〔2〕の前半は、2つのデータの分散と標準偏差から相関係数を求める問題で、相関係数の定義を理解しているかどうかが問われた。後半はデータを追加したときの共分散と相関係数の変化を考える問題で、追加されたデータが平均値と一致することに気づけるかどうかと、共分散と相関係数の定義を正確に理解しているかどうかがポイントであった。
●計算量は少ないが、考察を要する問題が多く、問題量は標準的であった。
●数学I・Aと一部共通であった。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 39.65 | 40.83 | 40.18 | 44.14 | 40.87 |
6.センター試験攻略のポイント
●今回のセンター試験では、数学Iの各分野から基本的な問題が幅広く出題された。新課程になり、「データの分析」など数学Iで学習する内容は増加したが、今後もセンター試験においては基本的な問題が網羅的に出題されると考えられる。そのため、今まで以上に教科書を用いて各分野の基礎事項を定着させ、基本的な問題で確実に得点できるようにするとともに、用語、公式の定義をきちんと理解し利用できるようにしたい。●今回は絶対値や無理数を含む式の計算は出題されなかったが、今後のセンター試験で出題される可能性は十分にある。正確に計算できるよう、日ごろから十分演習を重ねておきたい。
●図形の問題は、日ごろから図を丁寧にかき、どこでどの知識を用いればよいかを図をかいて考える習慣をつけておきたい。また、今年は出題されなかったが立体の問題が出題される可能性もあるので、教科書や問題集を用いて、立体をイメージする力も身につけておくとよいと思われる。さらに、余弦定理や正弦定理といった公式に加え、三角比の定義もきちんと理解し、問題を解く際に用いることができるようになっている必要があるだろう。
●新課程で追加された分野である「データの分析」は、今年は計算が必要な問題は1問しかなく、全体として用語や公式をきちんと理解しているかどうかが問われた。今後もこの傾向は続くと思われるので、まずは用語や公式を正確に用いることができるようになったうえで、データを修正したり追加したりした場合に、統計値がどのように変化するかなども理解できるようにしておきたい。
●来年のセンター試験は新課程2年目となり、今回とは大問構成や出題内容が大きく変更する可能性もある。これまで解いたことがないような問題が出題されたとしても、落ち着いて題意を正しく読み取り、与えられた誘導の意図を考えながら、正確な立式や計算ができるように日ごろから練習を積んでおきたい。
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