問題講評【国語】
1.総評
- 【2015年度センター試験の特徴】
-
評論で要約的な理解が求められた。全体として標準的な出題で昨年より易化。
問題文の分量は全体として昨年並で、現代文では3行選択肢も多く、読み取りに一定の時間を要したものの、問題文・設問の全体としての難易度は標準的であり、昨年より易化した。また、現代文・古典ともに、文章全体の主旨や主題を把握する力が求められた。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数4、各大問の配点50は昨年から変更なし。設問数は変更なし。解答数は漢文で1個増え、全体として解答数が1個増。 |
---|---|
【出題形式】 | 評論では、最終設問で文章の表現について「適当でないもの」を8つの選択肢から2つ選ぶ出題がなされた。また、問題文の分量がやや増加し、3行選択肢が3問出題された。小説は、今年も短編全文の出題であった。古文では、本文中の2つの手紙について問う設問、敬語の種類と敬意の方向を問う設問が出題された。漢文では、書き下しの出題が1問のみで、返り点付きであった。また、問1だけでなく、問2・3でも語句に関する設問が出題された。 |
【出題分野】 | 近代以降の文章2題(評論・小説)、古文1題、漢文1題という構成に変更なし。 |
【問題量】 | 問題文の分量は、評論で500字程度増加(3700→4200)、小説で500字程度減少(5200→4700)、古文は昨年並(1200→1200)、漢文で23字増加(184→207)し、全体として昨年並。 |
【難易】 | 昨年より易化。 |
3.大問構成
第1問 | |||
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出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
現代文・評論 | 50点 | 易 | 佐々木敦『未知との遭遇』 |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
現代文・小説 | 50点 | 標準 | 小池昌代「石を愛でる人」 |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
古文 | 50点 | やや難 | 『夢の通ひ路物語』 |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
漢文 | 50点 | 標準 | 程敏政『篁■(とん)文集』(※「とん」は「土」に「敦」) |
4.大問別分析
第1問「現代文・評論」(約4200字)
・問題文は、佐々木敦『未知との遭遇』からの出題。問題文の分量は、昨年から500字程度増加した(約3700字→約4200字)が、昨年同様〈です・ます調〉の平易な語り口の文章であり、またネット社会における文化状況を論じる現代社会論であった点で、近代以前の文化・社会を論じた2013・2014年度に比べれば読み取りやすかった。一方で、〈インターネット時代の言説〉という身近なテーマであったとはいえ、筆者の視点や切り口は新鮮なものであり、過去2年から話題が一新されたこととあわせて考えると、出題のパターン化を避け、初見の文章を筆者の論述をたどって的確に理解する読解力を試そうとする意図が認められる。
・設問構成は、問1が漢字設問。問2から5までが内容読解に関する設問である点は例年通りだが、問2から4までが傍線部に関する設問で、問5は傍線を設定せず本文全体の内容を踏まえた要約的理解を問う形式をとった点が目新しい。問6は表現と構成を問う枝問2つの形式から、部分の表現の働きを8つの選択肢のうちから2つ選ぶ形式に変わり、また2010年度以来5年ぶりに「適当でないもの」を選ぶ形で出題された。
・問1は、漢字設問。例年通り5題の出題で、2013年度には出題無し、2014年度には1つだった訓読みの漢字が2つ出題された。(ア)「教えを垂れる」と(オ)の正答選択肢4「奏上」が受験生には馴染みがない言葉であるため、やや難しかったであろう。単なる〈漢字練習〉にとどまらず、語彙力を高める学習が求められていると思われる。
・問2は、傍線部の理由説明の設問。第1段落の論旨を問うもので、近年の傾向通り、正答が〈本文の内容を同趣旨の別の表現に書き換えたもの〉となっており、やや読み取りづらかった。しかし、誤答選択肢の誤答要素は明確であることから、比較的正答を選びやすかったものと思われる。
・問3は、傍線部の理由説明の設問。第4・5段落の論旨をおさえれば正答の方向性は明確につかめ、誤答選択肢の誤答要素も明確であることから、正答を選びやすかった。
・問4は、傍線部の趣旨説明の設問。「歴史」についての考え方の変化を問うもので、第7段落以降のやや広い範囲の読解が求められる点で、近年の出題傾向に沿ったものだといえる。誤答選択肢の誤答要素は明確であるが、正答選択肢4の「権威を失ってしまった」が本文の内容を同趣旨の別の表現に書き換えたものであるため、単に選択肢の文言と本文の表現との照合で解こうとした受験生は、正答を選びそこねたかもしれない。その点で、2014年度の問3・4と共通する方向性をもった設問であったといえる。
・問5は、本文全体を踏まえた要約的理解を問う設問。最終段落の論旨から正答2の末尾に着目することは容易だろうが、「新たな表現を生み出す」といった文言は、第11段落の趣旨と本文中盤の趣旨を踏まえて書き換えられた記述であったことから、問4で述べた点と同様の迷い方をした受験生もいたかもしれない。また、傍線を設定せず「文章全体を踏まえ」という形で問う設問形式は、2014年度の〈問題作成部会の見解〉で述べられていた〈部分の読解のみならず文章全体の把握を求める〉という出題の意図を反映したものだとも考えられる。また、問6と合わせ目新しい設問形式が試みられたことは、〈出題のパターン化〉を避けようとする意図の表れであるとも考えられる。
・問6は、文中の表現の働きに関する設問。本文に段落番号を付した形は2014年度を踏襲している。また、2013・2014年度の4択の枝問2つの形が、8肢2択の形に変わった。2013・2014年度に出題された全体の構成を問う設問が姿を消し、段落を指定する形で表現についての説明を問う設問となったが、代わりに問5で〈全体を踏まえた要約的理解〉の設問が出題されたとも考えられ、本文全体の把握を求める傾向は続いているといえる。
・設問構成は、問1が漢字設問。問2から5までが内容読解に関する設問である点は例年通りだが、問2から4までが傍線部に関する設問で、問5は傍線を設定せず本文全体の内容を踏まえた要約的理解を問う形式をとった点が目新しい。問6は表現と構成を問う枝問2つの形式から、部分の表現の働きを8つの選択肢のうちから2つ選ぶ形式に変わり、また2010年度以来5年ぶりに「適当でないもの」を選ぶ形で出題された。
・問1は、漢字設問。例年通り5題の出題で、2013年度には出題無し、2014年度には1つだった訓読みの漢字が2つ出題された。(ア)「教えを垂れる」と(オ)の正答選択肢4「奏上」が受験生には馴染みがない言葉であるため、やや難しかったであろう。単なる〈漢字練習〉にとどまらず、語彙力を高める学習が求められていると思われる。
・問2は、傍線部の理由説明の設問。第1段落の論旨を問うもので、近年の傾向通り、正答が〈本文の内容を同趣旨の別の表現に書き換えたもの〉となっており、やや読み取りづらかった。しかし、誤答選択肢の誤答要素は明確であることから、比較的正答を選びやすかったものと思われる。
・問3は、傍線部の理由説明の設問。第4・5段落の論旨をおさえれば正答の方向性は明確につかめ、誤答選択肢の誤答要素も明確であることから、正答を選びやすかった。
・問4は、傍線部の趣旨説明の設問。「歴史」についての考え方の変化を問うもので、第7段落以降のやや広い範囲の読解が求められる点で、近年の出題傾向に沿ったものだといえる。誤答選択肢の誤答要素は明確であるが、正答選択肢4の「権威を失ってしまった」が本文の内容を同趣旨の別の表現に書き換えたものであるため、単に選択肢の文言と本文の表現との照合で解こうとした受験生は、正答を選びそこねたかもしれない。その点で、2014年度の問3・4と共通する方向性をもった設問であったといえる。
・問5は、本文全体を踏まえた要約的理解を問う設問。最終段落の論旨から正答2の末尾に着目することは容易だろうが、「新たな表現を生み出す」といった文言は、第11段落の趣旨と本文中盤の趣旨を踏まえて書き換えられた記述であったことから、問4で述べた点と同様の迷い方をした受験生もいたかもしれない。また、傍線を設定せず「文章全体を踏まえ」という形で問う設問形式は、2014年度の〈問題作成部会の見解〉で述べられていた〈部分の読解のみならず文章全体の把握を求める〉という出題の意図を反映したものだとも考えられる。また、問6と合わせ目新しい設問形式が試みられたことは、〈出題のパターン化〉を避けようとする意図の表れであるとも考えられる。
・問6は、文中の表現の働きに関する設問。本文に段落番号を付した形は2014年度を踏襲している。また、2013・2014年度の4択の枝問2つの形が、8肢2択の形に変わった。2013・2014年度に出題された全体の構成を問う設問が姿を消し、段落を指定する形で表現についての説明を問う設問となったが、代わりに問5で〈全体を踏まえた要約的理解〉の設問が出題されたとも考えられ、本文全体の把握を求める傾向は続いているといえる。
第2問「現代文・小説」(約4700字)
・問題文は、小池昌代「石を愛でる人」の全文。4年ぶりに現代作家からの出題。随筆風の小説で、「石」を媒介に織りなす人間関係がつづられていた。表面的には読みやすい文章に見えるが、「石」や「傘」に託されている象徴的な意味合いを読み取る読解力が問われる文章であり、象徴的・暗示的な表現を含む文章内容の読み解きが求められた。
・問1は、語句の意味に関する設問。(ア)「透明な」は比喩的な表現の読み解きであり、辞書的な語義を踏まえつつ、文脈から〈純粋〉という意味合いを読み取らなければならなかった。(イ)「とくとくと」と(ウ)「追い討ちをかけて」は辞書的な意味に即した出題であったが、読書などを通じて普段から慣用的な表現に馴染んでいないと意外に答えづらかったかもしれない。
・問2は、語り手の内面に関する設問。傍線部Aの前の、「無機質で冷たい関係が、かえってわたしに、不思議な安らぎ」をもたらすという叙述と「人間関係の疲労とは、行き交う言葉をめぐる疲労である」という叙述とが対比されていることに着目し、傍線部の表現「言葉を持たない石の……冷たいあたたかさ」という逆説的表現の内実をおさえる必要があった。
・問3は、傍線部が無く、指定された行数の範囲の中で人物像を問う設問。形式上は2014年度の問4に近い。テレビ出演によって傷つき落ち込んでいる「わたし」に「山形さん」がどう接したかについて読み取り、「わたし」が「山形さん」をどのような人物であると見ているのかを把握することが求められた。「石のように表情のない顔で、のんびりとなぐさめてくれた」および「そう、自信を持って決めつける」、「その、動かぬ大山のような山形さんの言い方」、「うむ、と満足げにうなずいて日取りを決め」といった叙述に着目する必要があった。
・問4は、状況と心理の展開に関する設問。問2でつかんだ「石」についての理解を、傍線部B「雨」=「傘」と関連させて捉える必要があった。「わたし」が、「ひとりひとりの頭のうえに開き、ひとりひとりを囲んでいる傘」「寂しい、独りきりの傘」を「好き」であることを、「石」に興味を惹かれることとの関連でおさえる。全文を視野に入れないと、正答選択肢1「様々な状況によって魅力を増す石」を選びにくかったであろう。
・問5は、人物の関係性の変化と心理の関連に関する設問。全文を通しての「わたし」の心理の移りゆきが問われた。「石」との「無機質で冷たい関係」に「安らぎ」を覚えていた「わたし」が、「アイセキカ」の「山形さん」と出会い、「石」を媒介にして心が通じ合うような人間関係を築いていくという、全文を通してのストーリーの流れおよびテーマをおさえる。
・問6は、文章表現に関する設問。正答選択肢5の、カッコとカギカッコの使い分けは本文を確認すれば明らかであるが、正答選択肢1「漢字表記の『愛石家』の意味に限定されないことを表している」については、「限定されない」ならばそれ以外に何を表しているのかが選択肢の中で説明されていない。そのため積極的には選びにくかったと思われる。
・問1は、語句の意味に関する設問。(ア)「透明な」は比喩的な表現の読み解きであり、辞書的な語義を踏まえつつ、文脈から〈純粋〉という意味合いを読み取らなければならなかった。(イ)「とくとくと」と(ウ)「追い討ちをかけて」は辞書的な意味に即した出題であったが、読書などを通じて普段から慣用的な表現に馴染んでいないと意外に答えづらかったかもしれない。
・問2は、語り手の内面に関する設問。傍線部Aの前の、「無機質で冷たい関係が、かえってわたしに、不思議な安らぎ」をもたらすという叙述と「人間関係の疲労とは、行き交う言葉をめぐる疲労である」という叙述とが対比されていることに着目し、傍線部の表現「言葉を持たない石の……冷たいあたたかさ」という逆説的表現の内実をおさえる必要があった。
・問3は、傍線部が無く、指定された行数の範囲の中で人物像を問う設問。形式上は2014年度の問4に近い。テレビ出演によって傷つき落ち込んでいる「わたし」に「山形さん」がどう接したかについて読み取り、「わたし」が「山形さん」をどのような人物であると見ているのかを把握することが求められた。「石のように表情のない顔で、のんびりとなぐさめてくれた」および「そう、自信を持って決めつける」、「その、動かぬ大山のような山形さんの言い方」、「うむ、と満足げにうなずいて日取りを決め」といった叙述に着目する必要があった。
・問4は、状況と心理の展開に関する設問。問2でつかんだ「石」についての理解を、傍線部B「雨」=「傘」と関連させて捉える必要があった。「わたし」が、「ひとりひとりの頭のうえに開き、ひとりひとりを囲んでいる傘」「寂しい、独りきりの傘」を「好き」であることを、「石」に興味を惹かれることとの関連でおさえる。全文を視野に入れないと、正答選択肢1「様々な状況によって魅力を増す石」を選びにくかったであろう。
・問5は、人物の関係性の変化と心理の関連に関する設問。全文を通しての「わたし」の心理の移りゆきが問われた。「石」との「無機質で冷たい関係」に「安らぎ」を覚えていた「わたし」が、「アイセキカ」の「山形さん」と出会い、「石」を媒介にして心が通じ合うような人間関係を築いていくという、全文を通してのストーリーの流れおよびテーマをおさえる。
・問6は、文章表現に関する設問。正答選択肢5の、カッコとカギカッコの使い分けは本文を確認すれば明らかであるが、正答選択肢1「漢字表記の『愛石家』の意味に限定されないことを表している」については、「限定されない」ならばそれ以外に何を表しているのかが選択肢の中で説明されていない。そのため積極的には選びにくかったと思われる。
第3問「古文」(約1200字)
・問題文は、中世(鎌倉時代から室町時代初期)の擬古物語『夢の通ひ路物語』からの出題。出典は馴染みのないものであったが、恋人と離ればなれとなった境遇を嘆くという話の内容は、古文ではオーソドックスなものであったと言えるだろう。また、人物関係図を含めてリード文・注が丁寧に付けられており、内容読解の手助けとなったと考えられる。各設問では、リード文・注・他の設問をヒントとしながら読み進め、人物関係や心情を正しく捉える力や、敬語・助動詞といった古文の知識を活用して文章を読解する力が求められた。
・問1は、古語の意味に関する設問。全枝問とも、昨年に比べて選択肢を検討する要素が少なく、易しかった。(ア)の「あぢきなし」、(イ)の「あきらむ」、(ウ)の「になし(二無し)」といった基本単語の意味がわかっていれば解けるものであり、誤答選択肢にも紛らわしいものがなかった。基本単語、重要古語を確実に身につけることが大切である。
・問2は、敬語に関する設問。敬語の種類と敬意の方向が問われたのは本試験では6年ぶり。aは、「侍り」が丁寧語であるのか謙譲語であるのかを問うている。bは「昨日文おこせし」の主体が「清さだ」だと理解する必要がある。「おこせし」に敬語が使われていないことから、主体が「清さだ」であると判断する。aとbができれば、正答選択肢5を選べる。
・問3は、登場人物の心情に関する設問。傍線部Xの前にある右近の2つの発言の内容に着目する。「御覧ぜざらむは、罪深きことにこそ思ほさめ」は、「女君が手紙を読まないのは罪深い」、「昔ながらの御ありさまならましかば、かくひき違ひ、いづこにも苦しき御心の添ふべきや」とは、「昔のような関係だったならば、このように行き違いになって苦しい気持ちが増さなかったのに」という意であり、この内容に対応するのは選択肢3。また、誤答選択肢の誤答要素は明確であり、丁寧に読み取れば、比較的答えやすかったと言える。
・問4は、和歌を含む手紙の解釈に関する設問。配点が9点と高い。3行選択肢の出題であり、正誤を判断する要素が多いので、どこに着眼するかが難しく差がつきやすい設問であったと言えるだろう。解答にあたっては、まず、女君の手紙から考えるとわかりやすい。Bの和歌は「思はずも隔てしほど」を嘆いて、「もろともに死んでしまいたい」と嘆いている。「隔てしほど」にあたる状況を嘆いている選択肢は1と3。そこで、男君の手紙について検討し、選択肢1と3のうちでAの和歌「さりともと頼めし甲斐もなきあとに」に対応しているのが選択肢3の「私は逢瀬の期待もむなしく」であるという点に気付けばよい。また、男君の手紙の本文の「ほどなく魂の憂き身を捨てて、君があたり迷ひ出でなば、結びとめ給へかし」に対応しているのも選択肢3である。選択肢1は「身にとどまって死にきれない」という点が誤りであるが、男君の手紙の最後の「惜しけくあらぬ命も、まだ絶えはてねば」を「身にとどまって死にきれない」と考えた受験生も多かったかもしれない。ここの意味は、「まだわが命が絶え果てていないので(最後の手紙を送りました)」の意である。和歌については、それぞれの古語の意味を正しく理解した上で、全体として相手に何を伝えたいのか登場人物の心情をつかむ力が求められる。
・問5は、登場人物の心情を考える設問。解答にあたっては、まず、傍線部が、女君の手紙が簡潔であったことに対する感想であるとわかれば、選択肢3・4に絞ることができる。次に、傍線部Yの前の「かやうにこと少なく、節なきものから、いとどあはれにもいとほしうも御覧ぜむ」の内容から考えていき、「御覧ぜむ」の主語が男君であること、「いとどあはれにもいとほしうも」とは、女君への思慕がますます増すという意味であることがわかればよい。選択肢3は「二人の別れを予感して」が明らかな間違いである。
・問6は、文章全体に関する内容把握の設問。問3〜問5の内容の再確認の問題であると言えるだろう。設問を解きながら内容が確認できていれば、正答選択肢5を選ぶことができる。ただ、選択肢の中に「当惑」「絶望的」など本文との対応箇所が明確ではない心情が書かれているので、選びにくい点もあったかもしれない。本文全体の主旨を正しく理解することが大切である。
・問1は、古語の意味に関する設問。全枝問とも、昨年に比べて選択肢を検討する要素が少なく、易しかった。(ア)の「あぢきなし」、(イ)の「あきらむ」、(ウ)の「になし(二無し)」といった基本単語の意味がわかっていれば解けるものであり、誤答選択肢にも紛らわしいものがなかった。基本単語、重要古語を確実に身につけることが大切である。
・問2は、敬語に関する設問。敬語の種類と敬意の方向が問われたのは本試験では6年ぶり。aは、「侍り」が丁寧語であるのか謙譲語であるのかを問うている。bは「昨日文おこせし」の主体が「清さだ」だと理解する必要がある。「おこせし」に敬語が使われていないことから、主体が「清さだ」であると判断する。aとbができれば、正答選択肢5を選べる。
・問3は、登場人物の心情に関する設問。傍線部Xの前にある右近の2つの発言の内容に着目する。「御覧ぜざらむは、罪深きことにこそ思ほさめ」は、「女君が手紙を読まないのは罪深い」、「昔ながらの御ありさまならましかば、かくひき違ひ、いづこにも苦しき御心の添ふべきや」とは、「昔のような関係だったならば、このように行き違いになって苦しい気持ちが増さなかったのに」という意であり、この内容に対応するのは選択肢3。また、誤答選択肢の誤答要素は明確であり、丁寧に読み取れば、比較的答えやすかったと言える。
・問4は、和歌を含む手紙の解釈に関する設問。配点が9点と高い。3行選択肢の出題であり、正誤を判断する要素が多いので、どこに着眼するかが難しく差がつきやすい設問であったと言えるだろう。解答にあたっては、まず、女君の手紙から考えるとわかりやすい。Bの和歌は「思はずも隔てしほど」を嘆いて、「もろともに死んでしまいたい」と嘆いている。「隔てしほど」にあたる状況を嘆いている選択肢は1と3。そこで、男君の手紙について検討し、選択肢1と3のうちでAの和歌「さりともと頼めし甲斐もなきあとに」に対応しているのが選択肢3の「私は逢瀬の期待もむなしく」であるという点に気付けばよい。また、男君の手紙の本文の「ほどなく魂の憂き身を捨てて、君があたり迷ひ出でなば、結びとめ給へかし」に対応しているのも選択肢3である。選択肢1は「身にとどまって死にきれない」という点が誤りであるが、男君の手紙の最後の「惜しけくあらぬ命も、まだ絶えはてねば」を「身にとどまって死にきれない」と考えた受験生も多かったかもしれない。ここの意味は、「まだわが命が絶え果てていないので(最後の手紙を送りました)」の意である。和歌については、それぞれの古語の意味を正しく理解した上で、全体として相手に何を伝えたいのか登場人物の心情をつかむ力が求められる。
・問5は、登場人物の心情を考える設問。解答にあたっては、まず、傍線部が、女君の手紙が簡潔であったことに対する感想であるとわかれば、選択肢3・4に絞ることができる。次に、傍線部Yの前の「かやうにこと少なく、節なきものから、いとどあはれにもいとほしうも御覧ぜむ」の内容から考えていき、「御覧ぜむ」の主語が男君であること、「いとどあはれにもいとほしうも」とは、女君への思慕がますます増すという意味であることがわかればよい。選択肢3は「二人の別れを予感して」が明らかな間違いである。
・問6は、文章全体に関する内容把握の設問。問3〜問5の内容の再確認の問題であると言えるだろう。設問を解きながら内容が確認できていれば、正答選択肢5を選ぶことができる。ただ、選択肢の中に「当惑」「絶望的」など本文との対応箇所が明確ではない心情が書かれているので、選びにくい点もあったかもしれない。本文全体の主旨を正しく理解することが大切である。
第4問「漢文」(207字)
・問題文は、明の程敏政『篁■(とん)文集』(※「とん」は「土」に「敦」)からの出題。第一段落では筆者の体験、第二段落ではそれに関する漢代の逸話および筆者の感慨を記した随筆の文章である。随筆は3年連続の出題となった。字数は207字で、昨年よりも20字ほど増加したが、体験・逸話ともに具体性の強い内容なので、抽象度の高かった昨年の問題文よりも読解しやすかったと思われる。文章はまず、子を亡くした猫が他の猫が生んだ子を慈しみ、子猫もその猫を親として慕ったという筆者の見聞を述べ、明徳馬后が他の妃の子を引き取って慈しみ、その子も孝を尽くしたという逸話を紹介する。いずれも、血縁のない母子が深い情愛で結ばれたという同じ内容であることを把握する必要があった。二つの逸話の関係を考えれば、親子でありながら情愛がないのでは、古人はおろか動物に対しても恥ずかしいという筆者の感慨も読み取ることができただろう。また設問内容としては、例年よりも句形や重要語に重点を置いた出題であった。
・問1は、文字の意味に関する設問。文脈の中で適切に意味を把握することが求められた。「承」は「うく」という読みがわかれば解答できた。「適」は副詞として「たまたま」と読むが、「偶然に」ではなく、多くの場合は「ちょうどよく」の意を表す。副詞については読みだけでなく、意味もきちんと覚えることが必要である。
・問2は、重要語に関する設問。「将」は傍線部では「まさに〜んとす」と読む再読文字。同じ読みをするのは「且」である。「自」は以下に名詞を伴う場合は返読して「〜より」と読み、「〜から」の意を表す。同じ読みをするのは「従」である。基本的な再読文字や重要語句についての確実な習得が求められている。
・問3は、重要語に関する設問。複数の文末の文字の読みと意味を問うているが、これは極めて珍しい形式の出題であった。「矣」は通常、置き字とし、断定・推量・詠嘆などの意を表す。「也」は「なり」と読んで断定を強調することが多いが、疑問・反語などの強調に用いられることもある。「耳」「已」は「のみ」と読み、断定・限定の意を表す。「焉」は通常、置き字とし、断定や強調の意を表したり、語調を整えたりする働きをする。助字に関しても、読みだけではなく意味まで含めて理解しておきたい。
・問4は、理由説明の設問。漢文では、「異」は「珍しい・非凡な・素晴らしい」の意を表現することが多く、どのようなことが「珍しい・非凡な・素晴らしい」と言っているのかについて、問題文中に繰り返される「〜然」という表現について丁寧に読み取ることが問われている。「嗚嗚然」は悲しんで鳴くさまで、子を失った母猫の嘆き。「漠然」はここでは無関心なさまで、母猫と会ったばかりの子猫たちの態度。「欣然」はよろこぶさまで、母猫の愛情を受け入れた子猫たちの有様。「居然」はやすらかなさまで、子猫をわが子同然に感じている母猫の様子。「嗚嗚然」と「居然」、「漠然」と「欣然」が、それぞれ母猫と子猫のどちらについての表現か、対比の関係を把握することが求められた。漢文では、こうした「対比」関係をおさえながら文章全体の内容を読み取ることがポイントである。
・問5は、白文を解釈する設問。白文の解釈は昨年に引き続いての出題。「何必」は「なんぞかならずしも〜ん(や)」と訓読し、「〜する必要はない」「〜するとはかぎらない」の意を表す。「親」は副詞「みづから(自分で)」。傍線部全体として「子供は自分で生む必要はない」の意を表現している。
・問6は、返り点付きの書き下しの設問。「A与B」は「AとBと」と読み、文字通り「AとB」の意を表す。文脈によって読みや意味が変わる語についての知識が求められた。「豈独〜」は「あにひとり〜のみならんや」と読み、「〜だけではない」の意を表す。こうした重要語句や句形についてはよく問われるので、正確な知識を身につけておくとともに、それぞれの文脈に応じて正しく把握する演習も積んでおきたい。
・問7は、文章全体から筆者の考えを問う設問。2つの逸話が終わった後の、「然則」以降が筆者の感慨を述べた部分であることをおさえる。つまり問6で問われた傍線部cとその直後の記述である。傍線部cの解釈は「世間の人の親と子になっているもので、慈愛と孝の心がない者は、古人に対して恥ずかしいだけではない」となる。直後の「亦愧此異類已」は、「その上この動物に対しても恥ずかしいのだ」ということ。これらを正しく反映している選択肢を選べばよかった。問題文の具体的内容から、筆者の考えを簡潔に捉える力が求められる。
・問1は、文字の意味に関する設問。文脈の中で適切に意味を把握することが求められた。「承」は「うく」という読みがわかれば解答できた。「適」は副詞として「たまたま」と読むが、「偶然に」ではなく、多くの場合は「ちょうどよく」の意を表す。副詞については読みだけでなく、意味もきちんと覚えることが必要である。
・問2は、重要語に関する設問。「将」は傍線部では「まさに〜んとす」と読む再読文字。同じ読みをするのは「且」である。「自」は以下に名詞を伴う場合は返読して「〜より」と読み、「〜から」の意を表す。同じ読みをするのは「従」である。基本的な再読文字や重要語句についての確実な習得が求められている。
・問3は、重要語に関する設問。複数の文末の文字の読みと意味を問うているが、これは極めて珍しい形式の出題であった。「矣」は通常、置き字とし、断定・推量・詠嘆などの意を表す。「也」は「なり」と読んで断定を強調することが多いが、疑問・反語などの強調に用いられることもある。「耳」「已」は「のみ」と読み、断定・限定の意を表す。「焉」は通常、置き字とし、断定や強調の意を表したり、語調を整えたりする働きをする。助字に関しても、読みだけではなく意味まで含めて理解しておきたい。
・問4は、理由説明の設問。漢文では、「異」は「珍しい・非凡な・素晴らしい」の意を表現することが多く、どのようなことが「珍しい・非凡な・素晴らしい」と言っているのかについて、問題文中に繰り返される「〜然」という表現について丁寧に読み取ることが問われている。「嗚嗚然」は悲しんで鳴くさまで、子を失った母猫の嘆き。「漠然」はここでは無関心なさまで、母猫と会ったばかりの子猫たちの態度。「欣然」はよろこぶさまで、母猫の愛情を受け入れた子猫たちの有様。「居然」はやすらかなさまで、子猫をわが子同然に感じている母猫の様子。「嗚嗚然」と「居然」、「漠然」と「欣然」が、それぞれ母猫と子猫のどちらについての表現か、対比の関係を把握することが求められた。漢文では、こうした「対比」関係をおさえながら文章全体の内容を読み取ることがポイントである。
・問5は、白文を解釈する設問。白文の解釈は昨年に引き続いての出題。「何必」は「なんぞかならずしも〜ん(や)」と訓読し、「〜する必要はない」「〜するとはかぎらない」の意を表す。「親」は副詞「みづから(自分で)」。傍線部全体として「子供は自分で生む必要はない」の意を表現している。
・問6は、返り点付きの書き下しの設問。「A与B」は「AとBと」と読み、文字通り「AとB」の意を表す。文脈によって読みや意味が変わる語についての知識が求められた。「豈独〜」は「あにひとり〜のみならんや」と読み、「〜だけではない」の意を表す。こうした重要語句や句形についてはよく問われるので、正確な知識を身につけておくとともに、それぞれの文脈に応じて正しく把握する演習も積んでおきたい。
・問7は、文章全体から筆者の考えを問う設問。2つの逸話が終わった後の、「然則」以降が筆者の感慨を述べた部分であることをおさえる。つまり問6で問われた傍線部cとその直後の記述である。傍線部cの解釈は「世間の人の親と子になっているもので、慈愛と孝の心がない者は、古人に対して恥ずかしいだけではない」となる。直後の「亦愧此異類已」は、「その上この動物に対しても恥ずかしいのだ」ということ。これらを正しく反映している選択肢を選べばよかった。問題文の具体的内容から、筆者の考えを簡潔に捉える力が求められる。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 98.67 | 101.04 | 117.95 | 111.29 | 107.62 |
6.センター試験攻略のポイント
・今年のセンター試験では、問題文の分量は、昨年とほぼ同程度であった。3行選択肢が全体で7問出題されており、問題全体として読みとる分量は昨年同様に多い。また、本文と選択肢とを丁寧に照合することが必要とされる設問もあることから、限られた時間の中で速く読む力、ならびに手際よく情報を処理する力を鍛えることが肝要である。解いていく大問の順序や時間配分など、事前に計画をたて、その計画に沿って演習を行うのがよいであろう。また一方で、最初に取りかかろうとした大問が難しい、時間がかかると思ったら、いったん解答を中断して、別の大問に移るという柔軟さも必要である。模擬試験や演習などの機会を活用して、自分なりの解答方法を確立させておきたい。・文章構成を直接的に問うた設問は出題されなかったが、評論の問5のように傍線がなかったり、小説の問5のように傍線部前後の部分的読解では正答が選べず、文章の構成・展開に着目して、広い範囲の読み取りを要する設問があり、文章の構成に対する理解を求める傾向は続いているといえる。文章を部分的に精緻に読み取ることも重要であるが、それだけにとどまらず、文章の構成・展開に着目し、広い範囲で文章内容を読み取り、論旨・主題をつかむ力を身につけておく必要がある。
・基礎事項は必ず頭に入れておきたい。評論の漢字の設問や、小説の語句の意味に関する設問などにおいて、日常生活ではあまり使用しない言葉が出題されることもある。たとえ普段の生活ではあまり使わない漢字・語句であっても、教科書や問題演習、模擬試験などにおける文章で出会ったものについては、辞書などで意味を確認し、用法を含め頭に入れておきたい。古文は、古文単語、文法(敬語を含む)、和歌の修辞、古文常識や文学史などを、漢文は、重要語、再読文字や句法などを繰り返し復習することで、基礎事項を正確に覚えておきたい。
・近年のセンター試験では頻出となっている表現の特徴に関する出題にも、しっかりとした対策をとっておきたい。普段の学習のなかで、文章に接する際には、文章内容を理解することにくわえ、「引用や具体例がどのような働きを担っているのかを確認する」「文章中の表現技法に注意しながら丁寧に読み進める」ということを心がけたい。
・新課程となり「思考力・判断力・表現力等の育成」が重視されることから、受験技術的な対策ではなく、基礎学力の確実な定着と、それを活用して読み解く力を身につけることが重要である。
データネット実行委員会 駿台予備学校/ベネッセコーポレーション