データネット2020 2020年度 大学入試センター試験 自己採点集計

問題講評【倫理】

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1.総評

【2020年度センター試験の特徴】 

クワインやノージックなどの現代の新しい思想が扱われた。難易は昨年並

大問構成や出題分野は変更なし。形式に大きな変化はないが、AIなど今日の社会が直面している問題が取り上げられた。クワインやノージックなどの現代の新しい思想が扱われた。難易は昨年並。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数4は昨年から変更なし。解答数は37個で昨年から1個増加した。すべての大問で「倫理、政治・経済」との共通の設問が出題された。
【出題形式】 昨年から大きな変化はないが、昨年1問あった正誤組合せ問題が2問に増えた。
【出題分野】 昨年同様、現代の諸課題分野が青年期分野と合わせて第1問で出題された。特定の分野に偏ることなく幅広く出題され、現代の思想では、クワインやノージックの思想が問われた。
【問題量】 昨年並。
【難易】 昨年並。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
「現代社会における人間関係のあり方」 28点 やや易 青年期、現代の諸課題、思想
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
「源流思想にみる旅」 24点 標準 源流思想
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
「武士道から伝統とは何かを考える」 24点 標準 日本思想
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
「身体的欲求と理性的欲求の併存」 24点 標準 西洋思想

4.大問別分析

第1問「現代社会における人間関係のあり方」(青年期・現代の諸課題・思想)

  • ●以下【共通】とあるものは、「倫理、政治・経済」との共通問題であることを示す。
  • ●AIロボットの出現、人間同士の関係や個人の自立についての二人の高校生の会話文から、現代の諸課題分野を中心に思想や統計資料を扱った問題もみられた。現代の諸課題分野では、地域社会、情報社会、国際平和と人類の福祉などについて問われた。
  • ●【共通】問1はクワインの文章の空欄補充問題。彼のホーリズムについての知識の理解と、説明文の内容を正確に読み取れたかがポイントであった。
  • ●【共通】問2は、人工知能(AI)の普及に伴い、人間の働き方がどうなるかに関する二つのグラフの読み取り問題。丁寧に図を読み取っていけば正答を判断できる。
  • ●問3は、現代の思想家であるノージックのリバタリアニズム(自由至上主義)の主張の理解が問われた。「最小国家」というキーワードだけでは判断できず、現代の思想について十分に学習が及んでいない受験生にとっては判断が難しかっただろう。
  • ●【共通】問4は、ネル・ノディングズの「ケアリングの倫理」に関する資料の読解問題。「ケア」の論理について資料を丁寧に読み取っていけば難しくはない。
  • ●問6は、現代の諸課題のうち「ノーマライゼーション」「バリアフリー」などの考え方について問われた。基本的な用語の意味が正確に理解できていれば正答は選べる。
  • ●問7は情報社会に関する3文の正誤組合せ問題。それぞれ「知る権利」「知的財産権」「個人情報保護法」について問うているが、誤りのポイントがわかりやすかったため判断は難しくなかった。
  • ●問10はリード文の内容に合致する記述を問う問題。二人の主張を丁寧に読み取っていけば解答できるが、解答に時間がかかったと思われる。

第2問「源流思想にみる旅」(源流思想)

  • ●「旅」をテーマに、人生において進むべき道について、源流思想の基本事項を中心に網羅的に出題された。
  • ●【共通】問1は、人間の生のあり方についてアリストテレス、エピクロス、イスラーム教、荀子の考え方が問われた。正答のアリストテレスの「勇気の徳」を使った中庸の説明は、学習を丁寧に進めていた受験生には取り組みやすかっただろう。
  • ●問2はプラトンの思想についての問題。イデアについて正確に理解できているかがポイントであった。
  • ●【共通】問3は大乗仏教について問う問題。菩薩や『般若経』についてやや細かい知識が問われており、踏み込んだ理解が求められた。
  • ●問5は朱熹(朱子)とブッダについて問う問題。朱熹(朱子)の修身・斉家・治国・平天下について理解できていたかがポイントであった。
  • ●【共通】問6は、人間の罪についてのイエスとパウロの思想を問う問題。イエスの律法についての姿勢は学習しているであろうが、正答のパウロの原罪の考え方については、判断に迷った受験生もいたかもしれない。
  • ●問7ではイスラーム教の五行のハッジや断食についての正しい知識が求められた。
  • ●問8はトマス・アクィナスの『神学大全』の資料読解問題。資料文の内容について、「至福にある者」「断罪された者」と「希望」の関係をとらえる必要があり、積極的に正答を判断することが難しかったと考えられる。

第3問「武士道から伝統とは何かを考える」(日本思想)

  • ●「武士道から伝統とは何かを考える」ということをテーマに、日本思想の基本事項が網羅的に出題された。
  • ●問2は無常観に関連する日本の美意識について、西行、吉田兼好、雪舟、九鬼周造について問われた。内容は細かいが、正答の『風姿花伝』が世阿弥の著作であることをおさえていれば、正答を選びやすかったであろう。
  • ●【共通】問3は神道や日本神話など古代の日本思想についての知識を問う問題。「神々の系譜が天皇につながる神話として統合された」という判断に苦戦した受験生もいたと思われる。
  • ●【共通】問4は山鹿素行についての問題。古学が朱子学を批判する立場であることや、垂加神道を唱えたのが山崎闇斎であることを理解できているかがポイントであった。
  • ●問5は、江戸時代に民衆の生き方を説いた思想家についての問題。「ア」は鈴木正三や西川如見などの馴染みのない思想家まで学習が及んでおらず、戸惑った受験生がいたかもしれない。「イ」の二宮尊徳は判断が容易であった。
  • ●【共通】問6は、徳富蘇峰について問う問題。平民主義についての正確な理解が求められた。
  • ●【共通】問7は近代日本における「市民」の道徳の文章の空欄補充問題。中江兆民の思想が西洋思想(社会契約論・共和主義)との関連で問われ、思想の背景を考えることが求められたが、説明文の内容を丁寧に読み取ることで判断できる。
  • ●問8は、哲学者の久松真一の茶道における一期一会についての資料読解問題。誤りポイントが明確だったため、判断は難しくなかっただろう。

第4問「身体的欲求と理性的欲求の併存」(西洋思想)

  • ●「人間の身体的欲求と理性的要求」をテーマとしたリード文から、ルネサンス期の思想家、社会契約論者、経験論・合理論の思想家やモラリスト、カントやヘーゲル、J.S.ミル、ニーチェなどについて問われた。
  • ●問1はルネサンスや宗教改革の思想について問う問題。ヒューマニズムやプロテスタンティズムなどの用語の正しい理解が問われた。人間の自由意志に関するルターの立場にまで学習が及んでいない受験生がいたかもしれない。
  • ●【共通】問2では社会契約論者の考え方について問われた。自然状態や一般意志などのキーワードが抽象的に表現されており、正答の「自らの権利を共同体に譲渡する」という表現で判断に迷った受験生もいたかもしれないが、誤答の選択肢を丁寧に読み取ることで判断できた。
  • ●【共通】問3は、理性をテーマにデカルト、スピノザ、モンテーニュ、パスカルの思想が問われた。それぞれの選択肢に入っている思想家のキーワードについて、誤って使われているものを判断する正確な知識が求められた。
  • ●【共通】問4はカントとヘーゲルの文章の空欄補充問題。カントの「意志の自律」「意志の格率」やヘーゲルの「人倫」についての知識と、文章の読解力が求められた。Bの「自立性」と「共同性」については判断が難しいが、「人倫」の三段階の最終段階が「国家」であることを想起することができれば正答を導き出せただろう。
  • ●問6はベーコン、ヒューム、コントの思想についての正誤組合せ問題。ヒュームの「知覚の束」、コントの「実証主義」についての踏み込んだ理解が求められた。
  • ●問8はホネットの社会的な連帯のあり方についての資料読解問題。設問文に「人間同士の『承認』関係の重要性を主題化した」とあり、この内容を中心に読み取ることができれば、正答を導き出すことができただろう。ホネットは授業では扱わないが、フランクフルト学派の思想家である。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度20192018201720162015
平均点 62.25 67.78 54.66 51.84 53.39

6.大学入学共通テストへの展望

  • ●思想家・思想内容についての理解を深める。
  •  思想家や思想内容については、教科書や資料集などでしっかり学習することがポイントである。重要な語句や用語を単に覚えるだけではなく、その意味内容まで正確に理解することが必要である。また、思想史的な流れを踏まえて、同時代の思想家との共通点や相違点、ほかの思想家や思想への影響や批判なども含めて理解を深めておきたい。さらに、思想の抽象的な概念などもかみくだいて理解し、自分のことばで正確に説明できるようになっておくことで、より深く理解でき、高得点につながるだろう。
  • ●文章の読解力、理解力が鍵になる。
  •  原典資料や思想についての説明文を正しく理解し、読解する力は、共通テストにおいても必要である。資料文や、説明文の趣旨を論理的につかみ、考えることができるかが大きな鍵となるので、日ごろから原典資料などに親しんでいってほしい。
  • ●現代の諸課題に対して問題意識を持つ。
  •  「倫理」の授業で学習した内容を、単に知識として理解し記憶するだけでなく、それらの思想の視点から現代の諸課題やテーマについて考える習慣をつけておきたい。生命や環境、国際関係、情報や地域社会など、現代社会が抱える問題は多岐にわたる。それらの問題に対して、何が問題で、どのように解決していくことができるのか、先哲の思想を思い出しながら考えてみてほしい。そのためには、新聞やニュースに注目し、現代の諸課題について述べられた文章を読み、制度面の動きや課題のポイントなどを把握しておくことが必要である。

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